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キジンガ  作者: スグル
2/7

第二話「金色のネームプレート」

………………


例の少年院から、かなり遠く離れたロクト国のちょうど中心部にある首都キッカス。

その首都には、多くのビルが立ち並ぶ。

まさに、コンクリートに埋もれ、緑が見えない。

その首都キッカスに、とてつもなく高いビルがあった。

高さ、508 mのビル。

そこが、ロクト・ミッショネズ本部だ。

本部には、脱獄の情報が流れ始めている。

コンピュータに向かい合う情報員数百名が、情報処理室を埋め尽くす。

情報員の一人が、少年院から送られた情報をコンピュータから読み取っている。

「カジン・コウジョ、17歳。罪状、強盗。30分ほど前に、少年院から謎の侵入者と共に脱獄。現在、少年院から数キロ離れたガズ市街に居ると思われる」

業務的に、情報員の男が読み上げた。

その音声は、本部のアンテナから電波を通して、各地に散らばるロクト・ミッショネズのメンバー無線機に流れる。

そして、情報員がもう一言葉を言う。

「なお、カジン・コウジョの脱獄を援護した男は、看取の一人から制服を奪い、少年院に保管されていた試作のインテグラルウィルスを強奪して行った模様」

そう言い終わると、無線は切れた。


これによって、ロクト・ミッショネズは、カジンの捕獲行動を開始し始める。


………………


地下通路を出ると、外は朝を迎えたばかりのガズ市街地。

市街地なら、隠れる場所はどこにでもある。

市街の適当な廃墟ビルに走りこみ、ひび割れが目立つ瓦礫に隠れた。

そして、マサイとかいう男から、訳も解らなく助けられ、亡命すると言われた。

「まず、あんたは僕の質問に答えてもらいたい・・」

疑問だらけのカジンは、マサイに問う。

「どうぞ」

マサイは、タバコを一本吸い終ったらしくひび割れた地面に押し付ける。

「まず、なんで、僕を救った・・」

「あの少年院の中で、一番うるさかったから」

あっさり、マサイは答える。

「それだけなの・・」

「うん、それだけ」

理由はシンプル。

だから、カジンの頭は、またショートする。

「じゃあ、なぜ、看取のコスプレして少年院に侵入した」

また質問を投げつける。

マサイは懐から、またタバコを取り出す。

口に加えながら、マサイは喋る。

「俺が看取のコスプレして侵入したのは、あそこに、面白い物があると聞いて盗みに行った・・」

そう言って、男はポケットに手を入れる。

ポケットから取り出したのは、タバコに火を点けるためのライターと一緒に注射器二つ。

中には、液体状の薬品。

マサイは、タバコに火を点けおわるとライターをポケットにしまう。

注射器に目が行ったカジンは・・。

「麻薬してるのか・・」

真っ先に、その言葉を選ぶ。

「違う、ウィルスだ・・。ロクト・ミッショネズ開発のウィルス・・」

と、マサイは言いながら、自分の注射器をポケットに戻す。

ウィルスと言う言葉に反応した。

「悪性の病原体ですか・・」

真っ先に出るウィルスのイメージが、カジンの頭に浮かぶ。

「知らん・・。だが、奴らが無敵の警察部隊と呼ばれる理由が、このウィルス薬品らしい」

マサイは、カジンの顔に目を向け注射器を出す。

「貴様、打つ気あるか?」

そう言って、カジンに注射器を差し出す。

いきなり、そんな物を人に勧めるのか。

カジンは、首を横に振る。

そんな得体の知れない薬品を、体に打ち込む気持ちはない。

ビルの外のサイレン音が大きくなってきたのに、二人は気付く。

どうやら、この一帯に警察の手が伸びたようだ。

首を横に振ったカジンに、

「友達に、タバコ勧められてもやらないタイプか?お前さんは」

からかうように、マサイは言う。

そして、立ち上がる。

サイレンが大きくなってきたのだ、二人には、この場から離れるしかない。

マサイは、カジンに顔を向ける。

「これから、俺は逃げるが、ついてくるか?」

選択を迫らせるように、マサイは言う。

だが、その問いをするまでもなく、カジンの決断は決まっている。

濡れ衣を着たまま、牢屋で叫ぶくらいなら逃げると。

「逃げますよ」

そう言い返したカジンの言葉に、マサイは笑う。

笑いながら、ポケットにまた手を入れる。

そして、マサイは素早く手を出すと、なにも言わずに、注射器をカジンに投げ渡す。

「えっ!」

注射器を、カジンはなんとく受け取った。

「貴様を助けたのは、うるさかったからだ。あと、一番、あの少年院に似合わないと思ったからだ。その注射器のウィルスは、これから、俺たちの敵になるロクト・ミッショネズの秘薬だ。持ってて、損はない」

と、マサイは言う。

この注射器が、ロクト・ミッショネズの切り札ということである。

カジンは、この得体の知れない薬の効果を知らない。

だが、彼は信用できると思った。

「走るぞ!」

マサイは、大声で叫ぶ。

声に合わせ、二人は走りだす。

こうして、二人の亡命行為が始まった。


………………


彼らが走りだした廃墟の多い寂れた市街に、一人ロングコートの男が歩く。

虚しい廃墟を歩くその姿は、どこか上品な感じさえ漂う。

そのロングコートの胸元には、金色の横長のネームプレートが輝く。

金色に刻み付けられた文字は・・、

「ロクト・ミッショネズ・メンバーズ

カコイ・トリ」

と表記されている。

この男の名のようだ。

気のせいか、彼が現れてから、脱獄したカジンを追うパトカーのサイレンが止んだ。

しかし、それは脱獄を警察が許したわけではない。

この金色のネームプレートの男が現れたから、パトカーの出番がなくなったからだ。

それほどまでに、この男は信用されている。

と同時に、それほどまでに、ロクト・ミッショネズから逃げられないということだ。


………………


廃墟の市街の影になりやすい場所を、カジン、マサイは走る。

「おい、サイレンが止んだな・・」

マサイは、そう言う。

ロクト・ミッショネズが現れた。

彼の野性の感覚が、そう思わせた。


………………

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