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キジンガ  作者: スグル
1/7

第一話「リボルバーの叫びと、濡れ衣の少年」

………………


「無実だ!!本当だ!!冤罪だ!!オレじゃない!!オレじゃない!!!」

鉄臭い牢屋から、叫び声がした。

ドス黒い空気を醸し出す、この場は少年院。

ここは、罪を犯した未成年達が収容される。

閉鎖されきった空間、罪を犯すまでに陥れられた精神で、気が触れる者が居てもおかしくはない。

だから、このような叫び声は当たり前だ。

叫び声を上げるのは、2日前に収容された17歳のカジン・コウジョ。

収容される前から、自分は無実だと叫び続けている。

そのせいか、声がガラガラだ。

罪状は、強盗。

その事件の内容は、覆面を被った男一人が銀行にドアを破壊して押し込み、銀行員全員をライフルで脅しの金庫から大金を盗んだ。

カジンが、その実行犯としての決め手となったのは、彼の部屋から強盗の際に使用されたマスクとライフルが見つかる。

だが、銀行から強奪した大金は見つからず。

カジンは、最後まで自分の容疑を否認。

しかし、物的証拠から、彼は少年院に送られた。

そんな彼の居る鉄格子に、肥満の看守一人が近づく。

叫び続ける彼に対して、容赦なく警棒で彼の体を気絶するまで殴りつけ黙らせる。

そのせいか、彼の体はアザだらけだ。

毎日、気を失っては目を覚まし、また叫び声を上げる。

周囲からは、気触れたとしか思われなかった。


………………


彼は気絶すると、事件当日の夢を見る。あの事件の当日・・。

友人である同い年のテキ・ツゥから頼まれ、カバン2つ預かった。

カバンは絶対に開けないでくれと言われ、人のいいカジンはカバンを開けないまま、部屋に置いた。

そして、カバンを預かった翌日。

いきなり警察が部屋を捜査しに来て、カバンを押収されたときに、初めてカバンの中身を知った。

テキが、銀行を襲った。

カジンは、テキの罪を着せられた。

彼の部屋を、警察に捜査させたのもテキだ。

しかも、テキは銀行から奪った大金を持ち去り失踪。

カジンは、自分の潔白を晴らすために真実を話すものの、警察からは口から出任せの嘘として相手にされず。

テキのことすら調べようともしない。

彼は自分の家族、友人、知人から、白い目で見られ地獄を見た。

誰も信じてはくれなかった。

その事実に苦しんだ。

そして、現在に至る。

寝言でも、オレじゃない・・、オレじゃない・・、と唸るしか、カジン・コウジョには出来なかった。


………………


翌日になり、気絶した彼は目を覚ます。

目を覚ましたと同時に。

「無実だ!!オレじゃない!!オレじゃない!!!オレじゃないんだよ!!!」

また、叫び声を上げ始める。

何度も、看守にぶたれても、彼は止めなかった。

こうしないと、自分の気が狂うと思ったからだ。

そして、いつものように看守が現れる。

「オレじゃない!!!オレじゃないんだよ!!!」

まだ、カジンは叫ぶ。

だが、彼の鉄格子に近づいてくる看守は、いつも容赦なく殴りつけてくる肥満の看守ではない。

長身の制服からでも解るほどの筋肉質の男だった。

帽子を深く被っていて、顔がよく見えない。

その看守が、静かに、叫び続けるカジンの鉄格子に近づいた。

「オレじゃない!!!オレじゃないんだよ!!!」

カジンは、新顔の看守に向かって叫び散らす。

警棒で、看守に一発殴られると覚悟をした。

その時、看守が口を開く。


「今から・・、脱獄だ・・」


一瞬、耳を疑う。

その言葉に、カジンは叫び声を止めた。

彼が、呆気に取られていた瞬間。

「おい!!侵入者が居たぞ!!」

いつもの肥満の看守の声がした。

すると、多くの看守が姿を現す。

カジンの近く居るのは、看守ではない。

肥満の看守が、侵入者と叫んだ。

察するに、カジンの近くに居るのは・・。

その長身の男が、制服からリボルバーを取り出す。

慣れた手つきで、先頭にいる看守達の足に照準を定め撃つ。

リボルバーの生の銃声は、想像以上に大きい。

看守達は狭い通路を、集団で動くのだ。

先頭の者の足をくじくだけで、十分に後方の者の足止めになる。

その隙に、男はカジンの鉄格子の鍵穴も撃ち壊す。

鉄格子が開いた。

状況の飲み込めないカジンは、身動きが取れない。

そんな彼に対して、長身の男が、

「早く出ろ!!」

リボルバーに弾を込める男の示唆を受け、カジンは鉄格子から出た。

向こうからの看守達も、同じく銃を撃ち始める。

その流れ弾を避けるように。

カジンは、謎の男と一緒に逃げた。

無我夢中で。

少年院には、警報機が鳴り響く。

その警報機を尻目に、男が侵入してきた地下通路を入った。

異臭の漂う地下通路を、男と一緒にカジンは走り抜ける。


………………


地下通路を出ると、外は朝を迎えたばかりの市街地だ。

市街地なら、隠れる場所はどこにでもある。

だから、市街の適当な廃墟ビルに走りこみ、ひび割れが目立つ瓦礫に隠れた。

気づけば、もう追ってくる者は誰も居ない。

二人は、脱獄に成功した。

「はぁはぁ・・」

無我夢中で走ったせいで、カジンは吐き気に襲われる。

吐き気を抑えようと口に手を当てた。

「ぷはー」

男はリボルバーの弾装を手入れしながら、タバコを吸う。

汗一つすら、流れていない。

しかも、看守達からの銃弾の嵐をまったく被弾していない。

「大丈夫か。確か、新聞に載ってたな、カジン・コウジョ君」

男が、吐き気に耐えるカジンに声を掛ける。

その声に、カジンは口から手を離した。

とりあえず、カジンは、彼にまず何を言えばいいか解らない。

彼は、あの事件のことと、自分のことを知っているようだ。

感謝の気持ちはあっても、とりあえず、頭には疑問が走っている。

「あんた・・、誰ですか・・」

吐き気をこらえつつ、カジンは男に顔を向けて言う。

男は、制服を脱ぐ。

すると、タンクトップを着た強靭な筋肉が見えた。そして、男はリボルバーをズボンのポケットに入れて答える。

「マサイ・・、ナカヒロ・マサイだ・・」

パトカーのサイレンが唸る。

間違いなく自分達を探している。

サイレン音を耳に入れながら、マサイという男が立ち上がって口を開いた。

「なんとかして、この国から出るぞ・・。」

その言葉に、カジンは吐き気を忘れた。

「亡命・・」

そう、カジンは言う。

この男は正気なのかと思っている。

もう、カジンには驚くしか出来ない。

一体、これから、なにが・・。

不安しか、カジンにはない。


………………


アノザ・アースと呼ばれる世界にあるロクトと呼ばれる国。

四季がはっきりした温暖な17,075,200平方メートル。

人口、142,893,540人。国の法律を守る警察に、一つだけ特殊な組織がある。

その名も、ロクト・ミッショネズ。

ロクト警察の中心核。

この組織が、解決できなかった事件はない。

とある集団武装集団が起こした暴動をねじ伏せ、裏社会の暴力組織を撲滅までに追いやった。

それほどまでの脅威の戦闘力を持った組織。

そんなロクト・ミッショネズが、カジンの脱獄を許すわけがない。

更には、ロクトを脱獄させたマサイも許すわけがない。


このロクト国から、カジン、マサイは逃げ出す。

それだけが、この物語の主な内容だ。

しかし、ロクトからの亡命行為は、誰も達成されていない。


………………

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