第一話「リボルバーの叫びと、濡れ衣の少年」
………………
「無実だ!!本当だ!!冤罪だ!!オレじゃない!!オレじゃない!!!」
鉄臭い牢屋から、叫び声がした。
ドス黒い空気を醸し出す、この場は少年院。
ここは、罪を犯した未成年達が収容される。
閉鎖されきった空間、罪を犯すまでに陥れられた精神で、気が触れる者が居てもおかしくはない。
だから、このような叫び声は当たり前だ。
叫び声を上げるのは、2日前に収容された17歳のカジン・コウジョ。
収容される前から、自分は無実だと叫び続けている。
そのせいか、声がガラガラだ。
罪状は、強盗。
その事件の内容は、覆面を被った男一人が銀行にドアを破壊して押し込み、銀行員全員をライフルで脅しの金庫から大金を盗んだ。
カジンが、その実行犯としての決め手となったのは、彼の部屋から強盗の際に使用されたマスクとライフルが見つかる。
だが、銀行から強奪した大金は見つからず。
カジンは、最後まで自分の容疑を否認。
しかし、物的証拠から、彼は少年院に送られた。
そんな彼の居る鉄格子に、肥満の看守一人が近づく。
叫び続ける彼に対して、容赦なく警棒で彼の体を気絶するまで殴りつけ黙らせる。
そのせいか、彼の体はアザだらけだ。
毎日、気を失っては目を覚まし、また叫び声を上げる。
周囲からは、気触れたとしか思われなかった。
………………
彼は気絶すると、事件当日の夢を見る。あの事件の当日・・。
友人である同い年のテキ・ツゥから頼まれ、カバン2つ預かった。
カバンは絶対に開けないでくれと言われ、人のいいカジンはカバンを開けないまま、部屋に置いた。
そして、カバンを預かった翌日。
いきなり警察が部屋を捜査しに来て、カバンを押収されたときに、初めてカバンの中身を知った。
テキが、銀行を襲った。
カジンは、テキの罪を着せられた。
彼の部屋を、警察に捜査させたのもテキだ。
しかも、テキは銀行から奪った大金を持ち去り失踪。
カジンは、自分の潔白を晴らすために真実を話すものの、警察からは口から出任せの嘘として相手にされず。
テキのことすら調べようともしない。
彼は自分の家族、友人、知人から、白い目で見られ地獄を見た。
誰も信じてはくれなかった。
その事実に苦しんだ。
そして、現在に至る。
寝言でも、オレじゃない・・、オレじゃない・・、と唸るしか、カジン・コウジョには出来なかった。
………………
翌日になり、気絶した彼は目を覚ます。
目を覚ましたと同時に。
「無実だ!!オレじゃない!!オレじゃない!!!オレじゃないんだよ!!!」
また、叫び声を上げ始める。
何度も、看守にぶたれても、彼は止めなかった。
こうしないと、自分の気が狂うと思ったからだ。
そして、いつものように看守が現れる。
「オレじゃない!!!オレじゃないんだよ!!!」
まだ、カジンは叫ぶ。
だが、彼の鉄格子に近づいてくる看守は、いつも容赦なく殴りつけてくる肥満の看守ではない。
長身の制服からでも解るほどの筋肉質の男だった。
帽子を深く被っていて、顔がよく見えない。
その看守が、静かに、叫び続けるカジンの鉄格子に近づいた。
「オレじゃない!!!オレじゃないんだよ!!!」
カジンは、新顔の看守に向かって叫び散らす。
警棒で、看守に一発殴られると覚悟をした。
その時、看守が口を開く。
「今から・・、脱獄だ・・」
一瞬、耳を疑う。
その言葉に、カジンは叫び声を止めた。
彼が、呆気に取られていた瞬間。
「おい!!侵入者が居たぞ!!」
いつもの肥満の看守の声がした。
すると、多くの看守が姿を現す。
カジンの近く居るのは、看守ではない。
肥満の看守が、侵入者と叫んだ。
察するに、カジンの近くに居るのは・・。
その長身の男が、制服からリボルバーを取り出す。
慣れた手つきで、先頭にいる看守達の足に照準を定め撃つ。
リボルバーの生の銃声は、想像以上に大きい。
看守達は狭い通路を、集団で動くのだ。
先頭の者の足をくじくだけで、十分に後方の者の足止めになる。
その隙に、男はカジンの鉄格子の鍵穴も撃ち壊す。
鉄格子が開いた。
状況の飲み込めないカジンは、身動きが取れない。
そんな彼に対して、長身の男が、
「早く出ろ!!」
リボルバーに弾を込める男の示唆を受け、カジンは鉄格子から出た。
向こうからの看守達も、同じく銃を撃ち始める。
その流れ弾を避けるように。
カジンは、謎の男と一緒に逃げた。
無我夢中で。
少年院には、警報機が鳴り響く。
その警報機を尻目に、男が侵入してきた地下通路を入った。
異臭の漂う地下通路を、男と一緒にカジンは走り抜ける。
………………
地下通路を出ると、外は朝を迎えたばかりの市街地だ。
市街地なら、隠れる場所はどこにでもある。
だから、市街の適当な廃墟ビルに走りこみ、ひび割れが目立つ瓦礫に隠れた。
気づけば、もう追ってくる者は誰も居ない。
二人は、脱獄に成功した。
「はぁはぁ・・」
無我夢中で走ったせいで、カジンは吐き気に襲われる。
吐き気を抑えようと口に手を当てた。
「ぷはー」
男はリボルバーの弾装を手入れしながら、タバコを吸う。
汗一つすら、流れていない。
しかも、看守達からの銃弾の嵐をまったく被弾していない。
「大丈夫か。確か、新聞に載ってたな、カジン・コウジョ君」
男が、吐き気に耐えるカジンに声を掛ける。
その声に、カジンは口から手を離した。
とりあえず、カジンは、彼にまず何を言えばいいか解らない。
彼は、あの事件のことと、自分のことを知っているようだ。
感謝の気持ちはあっても、とりあえず、頭には疑問が走っている。
「あんた・・、誰ですか・・」
吐き気をこらえつつ、カジンは男に顔を向けて言う。
男は、制服を脱ぐ。
すると、タンクトップを着た強靭な筋肉が見えた。そして、男はリボルバーをズボンのポケットに入れて答える。
「マサイ・・、ナカヒロ・マサイだ・・」
パトカーのサイレンが唸る。
間違いなく自分達を探している。
サイレン音を耳に入れながら、マサイという男が立ち上がって口を開いた。
「なんとかして、この国から出るぞ・・。」
その言葉に、カジンは吐き気を忘れた。
「亡命・・」
そう、カジンは言う。
この男は正気なのかと思っている。
もう、カジンには驚くしか出来ない。
一体、これから、なにが・・。
不安しか、カジンにはない。
………………
アノザ・アースと呼ばれる世界にあるロクトと呼ばれる国。
四季がはっきりした温暖な17,075,200平方メートル。
人口、142,893,540人。国の法律を守る警察に、一つだけ特殊な組織がある。
その名も、ロクト・ミッショネズ。
ロクト警察の中心核。
この組織が、解決できなかった事件はない。
とある集団武装集団が起こした暴動をねじ伏せ、裏社会の暴力組織を撲滅までに追いやった。
それほどまでの脅威の戦闘力を持った組織。
そんなロクト・ミッショネズが、カジンの脱獄を許すわけがない。
更には、ロクトを脱獄させたマサイも許すわけがない。
このロクト国から、カジン、マサイは逃げ出す。
それだけが、この物語の主な内容だ。
しかし、ロクトからの亡命行為は、誰も達成されていない。
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