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夜も昼も(Night and Day)

作者: 白黒西瓜
掲載日:2026/01/04

久しぶりの短編となります。よろしかったら読んで下さい<(_ _)>


登場人物:

ヘレナ…昼間はアマツバメ、夜は人間

アル(アルフレッド)…昼間は人間、夜は狼犬

ベン(ベンジャミン)…アルフレッドに助けられて、一緒に旅をする少年。

サカール…ヘレナとアルフレッドに呪いをかけた西の賢者

黒い騎士 ユスティノス…ヘレナに求婚を断られ、腹いせに呪いを掛けさせた男


 もうすぐ夜が明ける。日が昇り朝がやって来る。



「助かったよ、俺はベンジャミン、ベンって呼んでくれよ。」

 顔に残る殴られた痣が痛々しいが、元気に少年はそう言った。


「僕はアルフレッド。所で何であんなことになっていたんだい?大の大人が何人もかかって君みたいな少年に…」


「河原を歩いてたら良い匂いがしてきたんだ、ちょっと腹が減っていて、そこにあった鍋の中身をちょっとだけ頂いてたんだ。置いてあったんだよ鍋が。なのに、あいつら俺のことを泥棒だっていって、酷い奴らだよ。」


「君が泥棒したってことか…家は?ご両親は?」


「…いないよ。俺は、この辺じゃちょっと名の通った大泥棒だ。親も家も無く立って平気だよ。」


「それはたくましいね。あんまり無理はするなよ。」

 そう言って、彼と別れて先に進んだ。


 が、彼がずっとついて来る。


「何でついてくるんだ?」


「俺もこっちに用事があるんだ。」

 そう言いながらもベンはずっと後を付いて来る。まあ、行くところがないのだろう、次の町くらいまでならば問題ないか。


「ベン、年は?」


「十六だよ。」


 どう見ても十二、三才と言ったところだ。


「ねえ、その肩に乗せているのはツバメだろう?アルはツバメと旅をしてるのかい?」


「ああ、そうだよ。美人だろう?」


「メスなの?ツバメに美人もブスもないだろう。変なの。」


 そう言ってベンはツバメを見つめた。ツバメは『何見てんのさ!このクソガキが!』とでも言いたげに、頭とブルブルとさせると、急に飛び立ってどこかへ行ってしまった。


「ツバメなんて気まぐれだし、人に懐かない生き物だろう?一緒に旅なんておかしいと思ったんだ、たまたま肩に乗ってたんだな。」

 ベンは独り言のように呟きながら、ツバメが飛んで行った方向を眺めた。




 暫く歩いていると、ツバメが戻って来て肩に舞い降りた。


「まだ、町は遠いみたいだから、今日はこの辺で野宿だな。雨も降りそうだから洞窟に行こう。」


「洞窟?この辺にあるのかい?」


「ああ、あっちに丁度いい洞窟があるらしいよ。」


 そう言うと、ベンは不思議そうな表情をした。

「らしいよ?誰かに聞いたのかい?」


「ああ、ツバメが教えてくれたんだ。」


 そう答えると、ベンは益々、胡散臭いと言わんばかりの表情になった。


「俺が子どもだからって、変な冗談はいらないよ。全然面白くないし。」


「このツバメの名前はヘレナだ、彼女を怒らせると怖いよ。」


「何だいそれ?もうそう言う変な冗談は要らないって言ってるだろう。俺は子どもじゃないんだ。」

 ベンはそんなことを口の中でもにょもにょと言いながら、後に付いて来た。


「ほら、あそこに洞窟がある。今日はあそこに泊まろう。」


「知ってたんだろう?ここに洞窟があるってことを、それをツバメが教えてくれたとか、馬鹿じゃないの?」


「ははは、日が沈む前に薪を集めよう。」




 もうすぐ日が沈み、夜がやって来る。


「ベン、僕はちょっと外を見回って来るよ。君はここに居てくれ。」


「俺も行くよ。」


「君は火の番をしていてくれ、消えないように注意してくれよ。」


「えー、わかったよ。」

 そう言いながら、ベンは火に集めた木の枝をくべた。




「腹減ったな~、昼間食った鍋なんかもう腹の中に残ってないよ。今日は沢山歩いたし。」

 そう言いながら辺りを見回すと、アルの荷物が目に入った。何か食い物をもってないかな?そう思い、彼の荷物を漁ろうと手を伸ばした。


「馬鹿ベン、何やってるの。」

 背後から女の声がした。


「誰だよ。」


「誰だよじゃないでしょう。手癖が悪いわね。」

 そう言うと彼女は火の側にしゃがみ込んで、薪をくべた。


「だから、誰だよ。勝手に入って来て。」


「いいから、座って、昼間会ったでしょう?」


「会ってねーよ。」


「あなた、ツバメに美人もブスもないって言ってたじゃない。」


「どこかで俺たちの話を聞いてたんのかよ?そっちの方がたち悪いよ。」


「私はヘレナよ。宜しくね、ベン。」

 そう言って、その女は白くてきれいな手を差し出した。だけど握手をすると手の皮が厚いのが分かる。それに握力も強い。


「何で俺の名前を知ってるんだよ。」


「だから、昼間会ったでしょう。」


 変な女だな、早くアルが帰って来ればいいのに。そう思った。




 生臭い匂いを感じて、洞窟の入口の方に目をやると、そこには狼がいた。

「…おおかみ」


 こんな狭い空間で襲われたら、こっちが不利だ。尻餅をついたまま後ずさりをし、手に触れた薪を握り締めた。相手が襲ってきたら思いっきり叩きのめして、外に逃げる。


 あ、ヘレナは大丈夫だろうか?彼女を守りながら逃げる何て出来るだろうか?そんなことを考えていると、ヘレナが立ち上がり喜びの声を上げた。

「すご~い!うさぎとキジも。今日はご馳走ね。」


「ヘレナ、危ない、離れて!」

 大声で叫んだ、だけど彼女は狼から離れるどころか、狼が地面に置いた獲物たちに手を伸ばそうとした。


「ダメだよ、やられるよ。」


 立ち上がり、薪を振り上げて、狼を目掛けてやみくもに薪を振りかざし、振り落とした。次の瞬間、誰かに薪を強く掴まれて動けなくなった。訳が分からなくなり目を閉じたまま大声で叫んだ

「うわーわーわーわーわー」


「うるさい!」

 ヘレナの怒鳴り声が聞こえた。


「え?」


 目を開くと、ヘレナが薪を片手で掴み、こちらを睨みつけている。

「静かにしてよ。」


 何がどうなっているんだ?あの狼はどこだ?

 狼はヘレナの足元にしゃがんでこちらを見ている。襲ってはこなそうだ。


「ヘレナの狼なの?」


「違うわよ、彼はアルフレッドよ。アル、どうしてこんな子連れて来ちゃったの?」


 狼は何も答えず、ヘレナの顔を見上げた。


「わかったわ、次の町までね。仕方ないわね。ベン、そこにあるうさぎを捌いて、私はキジの方を処理するから。」



 結局ヘレナがどちらも捌いて、今、二人と一匹で食事にありついている。


「この狼がアルなのかい? じゃあ、あのツバメがヘレナだったのかい?」


「そうよ。」


 そう言いながら彼女はむしゃむしゃと肉を頬張った。よくわからないが、何かトリックがあるならば、そのうち尻尾を出すだろう。そう思って自分も肉をむしゃむしゃと頬張った。


 食事を終えると、ヘレナと狼は寄り添うように火の側で眠った。自分も二人と火を挟んだ反対側で眠った。




 翌朝、目が覚めると、ヘレナの姿はなく、代わりにアルがお湯を沸かしていた。


「目が覚めたかい。」


「ああ、ヘレナは?」


「彼女は先に行ったよ。次の町まで行って様子を見て来るって。一緒に行けばいいのに、気が早いんだよ。」


「昨日の夜の狼は本当にアルだったのかい?」

 お湯をすすりながら尋ねた。


「そうだよ。僕は昼間は人間、夜は狼犬になる。ヘレナは逆で、昼間はアマツバメ、夜は人間になるんだ。」


「元々そうなの?」


「そんな訳ないだろう。呪いを掛けられたんだよ。」


「誰に?」


「西の賢者だよ。」


「西の賢者?賢者が呪いをかけるのかい?そんな話聞いたことないよ。」


「西の賢者サカールは元々は立派な賢者だったらしいが、修行を行う内に悪の魔術に魅入られてしまい、今では悪の魔術師になってしまったらしい。以前、彼の住まいがある西の大地は緑に囲まれた穏やかで美しいな場所だったらしいが、今では、全ての木が枯れ果て、荒涼とした大地になってしまったらしい。」


「でも、どうして、サカールは二人に呪いをかけたんだい?」


「黒の騎士と呼ばれる男がいるんだが、彼がヘレナに求婚をしたんだ、だがヘレナはそれを断った。その腹いせに呪いをかけられてしまったんだ。」


「二人は付き合ってるの?」


「そうだよ。婚約している。」


「それでどうするの?」


「西の賢者に呪いを解いてもらう。」


「どうやって?」


「分からないけど、この呪いは掛けたものしか解くことが出来ないらしい。」


「そうなんだ…俺も行くよ。西の大地に」


「ダメだ、君とは次の町でお別れだ。その先は、いろいろと危険だから。」


「大丈夫だって、こう見えて俺は結構役に立つぜ!それに、昼も夜も人間のやつが一人いた方が絶対便利だって!」


「気持ちだけもらっておくよ。さあ、日が沈む前に次の町に到着したいから、そろそろ出発しよう。」


「ああ、でも俺は絶対について行くからな。西の賢者は大金持ちだって聞くから、きっと金銀財宝があるはずだ、俺の狙いはそれだよ。」


 洞窟から出ると、すっかり雨は上がっていた。遠くに虹が見える。俺何だか楽しい気分になっていた。この二人と西の大地まで旅をする。アルがエレナがそれを許さなくたって、俺はついて行く。






年末年始のお休みに1本短編を書くぞ~と意気込み、連休最終日にやっと掛けました。

感想などいただけると励みになります。

連載の方も宜しくお願いします。

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