ガス抜きの国
男は、数字の並びに違和感を覚えた。
日本のエネルギー自給率は、低すぎる。
技術がないわけではない。下水からガスを生み、廃棄物から燃料を作る技術は、すでに存在している。
それでも、この国は「外から買う」ことをやめない。
不自然だった。
経済合理性では説明がつかない。
環境政策とも噛み合わない。
政治の怠慢にしては、あまりにも一貫している。
だから彼は、禁じられた資料に手を伸ばした。
——そこに書かれていたのは、政策ではなく「伝承」だった。
「地の底には、満ちすぎた力がある」
中東の地下深く。
かつて“火の山”が連鎖していた地域。
その圧力は、石油という形で封じられている。
「抜き続けよ。さもなくば、地は裂ける」
石油採掘は資源開発ではない。
それは「圧力の排出」だった。
男の喉が乾いた。
もし、世界が石油を必要としなくなったら——
採掘が止まったら——
地下に封じられた圧力は、どこへ行く?
答えは一つしかない。
噴き出す。
火山として。
地震として。
あるいは、それ以上の形で。
男は震える手でページをめくる。
「東の国に役目を与える」
そこには、日本について書かれていた。
「均衡を保つ者。過不足を調整する者」
八百万の神を信じ、万物に霊を見出す国。
その感覚ゆえに、この役割を“理解できる”と判断された。
理解し、そして——従う。
「自ら満たすことを禁ず」
男は息を呑んだ。
それが、すべての答えだった。
なぜこの国は、自給を完成させないのか。
なぜ無駄とも思える輸入を続けるのか。
それは無能ではない。
禁忌だった。
「近き地より力を得れば、遠き地が裂ける」
国内でエネルギーを完結させることは、
中東からの“ガス抜き”を止めることと同義。
それは、均衡の破壊。
つまり——
世界のどこかを、壊す行為。
男は椅子に崩れ落ちた。
では、あの戦争は何だ。
あの価格は何だ。
あの理不尽は、すべて——
必要悪?
資料の最後に、短い一文があった。
「儀式は続けられねばならない」
男は窓の外を見る。
静かな街。
何も知らない人々。
そして、自分だけが知ってしまった事実。
選択は二つ。
この国を解放し、
世界のどこかを壊すか。
それとも——
このまま、知らぬふりをして、
“地球を救う側”に残るか。
そのとき、スマートフォンが震えた。
ニュース速報。
中東で、小規模な衝突。
男は目を閉じた。
「……まだ、足りないのか」
その呟きは、誰にも聞かれなかった。
だが確かに、地の底で何かが軋む音がした。
あとがき
もし仮に——石油を輸入し続けることが、地球内部の圧力をわずかに逃がし、火山活動や大規模な噴火を防いでいるのだとしたら。
そのとき、自分が思い描いた「エネルギーの自給自足」という理想は、単なる技術的進歩ではなく、どこかで世界の均衡を崩す“ほころび”になってしまうのではないか、という考えに至る。
さらに想像は広がる。
もし、その均衡が崩れた結果として、火山活動が活発化し、巨大な噴煙や火山灰が地球全体を覆ったとしたら。
それは太陽光を遮り、気温を大きく低下させ、現在の人類社会にとって致命的な環境変化を引き起こす可能性すらあるのではないか。
極端な話だが、そうした変化が積み重なれば、山はさらに隆起し、大地の形さえ変わってしまうのかもしれない。
もちろん、これは科学的な裏付けのある話ではなく、あくまで空想の連なりにすぎない。
だが、その仮定をあえて受け入れてみると、これまで不自然に見えていた現実に、別の意味が浮かび上がってくる。
なぜ特定の地域から資源を取り続けるのか。
なぜ完もし仮に、石油が輸入することで地球の圧力を調整して、火山噴火を防いでいるいるなら、自分が考えた、エネルギーの自給自足はほころびでなく、自分の生命さえ危ぶむ事態になると思います・・・、それはエベレストがその影響で高くなったとしたら、火山灰は地球の温度を低下させるのに十分に思えます、それは今の人類を死滅させる力があるのではとも思い至ります・・・、それがあてはまるとしたら、日本が中東の石油に固執する理由が自分たちが生き残るために必要な手段だとした・・、と考えると背筋が冷たくなります・・・、ただの空想でとりとめのない話です・・・全な自給へと踏み切らないのか。
それが単なる経済や政治の問題ではなく、「生き残るための選択」だったとしたら——。
そう考えた瞬間、日常の風景がわずかに異なる色を帯びて見えてくる。
もっとも、この文章もまた、ひとつの空想にすぎない。
答えはどこにもなく、ただ想像だけが静かに広がっていく。
そしてその想像が、ほんの少しだけ背筋を冷たくする。
同時に、トランプ大統領がいった「イランを石器時代に戻す」という行為は、そのまま「地球の自爆スイッチを押す」ことと同じことにならないと誰が言えるのだろうか・・・?
此の推測が外れていることを願う・・・




