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カンジクラフト(”水”→”刀” 漢字を分解・再構築してサバイバル)ジジイと孫編

孫にせがまれてゲームをする。


「カンジクラフト」というゲームだ。


人物からアイテム、周りの環境などがドット状の正方形で構成されており、自由度の高いゲームのようだ。

アドベンチャー要素もあれば、細かな造形までこだわる建築ができたり、“漢字”を使った謎解き要素だったりと、それぞれが好きなスタイルで楽しむことができる。

世間でも、遊びながら学べる教育ツールとして人気を博しているようだ。



コンピューターを起動し、ゲームを始める。


1人称視点で。周りの地面や木々、空の雲などが角ばった大小様々な四角形を用いて表現されている。

デフォルメされているが特徴をよく捉えており、老眼でも何を表しているのかが分かりやすい。




「じいじ、見つけた!」

呆然としていると、画面の端から人影が現れる。

隣で持ち運び用の小さい端末で操作している孫のキャラクターが画面の中で動いている。

棒状の手を上下に動かしながら、ぴょこぴょことジャンプしている。

隣からは、可愛らしい声が聞こえる。

楽しそうに遊んでいる光景が目にして、口角が緩む。

孫がキャラクターの動かし方や画面の説明を一生懸命教えてくれる。



孫 「下の“土”を触ってみて!」


言われたとおりに操作すると、“土”をゲットと画面に表示された。


画面下の持ち物欄らしき四角いマスの中に“土”という文字が表示された。

同時に、チュートリアルとして、イラストや文字で説明画面が現れた。

その他にも、実績解除という文字と一緒に、様々な1文字の「漢字」が次々と画面に流れる。


説明によれば、「漢字」は特定の条件を達成することで獲得することができて、獲得した「漢字」を素材として使って、他の文字に変換できたりするようだ。


例えば“土”では、「土に触れる」という条件を満たすことで、獲得することができる。

そして、“土”という漢字を「分解」という選択をすると、

画数:3画という点数へ変換された。この数字は画面の右下部分の「所持画数」という場所に貯まっていくようだ。


孫 「次は“水”を探すよ」


孫の素早い動きに何度も見失いそうになりつつも、森のフィールドを歩きまわって、川を見つけた。


孫  “水”を手で触ってみて!


また言われたとおりに操作すると、“水”をゲットと画面に表示された。

さっきと同じように、分解すると


画数:4画という点数と、「ハネ」×1、「ハライ」×1に変換された。


画数だけでなく、漢字を細かなパーツとして分解するようだ。

また、孫の説明では、“水”は簡単に入手できてかつ、「ハネ」「ハライ」の複数のパーツが得られるので、このゲーム内での基本の素材ということだ。

なるほど、現実でも人間が生きる上で「水」が重要となる部分を表現しているのかと、このゲームの作りこみに感嘆した。教育にも良いという前評判にも頷ける。


そんなことを考えながら、孫の言うとおりに、同じ動作を繰り返して“水”を繰り返し入手する。



孫 「これで刀が作れるようになったから“刀”作って!」


・・・年齢に似合わない、物騒な言葉が聞こえてきた。



画面の中で孫の言うとおりの場所を選んでいくと。いくつもの文字が羅列される「辞書」という所から、“刀”を見つけ出すと、

材料:画数3、ハネ×1となっている。

「作る」というボタンを押すと右手に小刀?の様な銀色の短い棒状の何かが現れた。


孫 「テキが来たら“刀”でコウゲキするんだよ」

孫 「それから次は“下”を2つ作って!」


さっきと同じ手順で“下”の文字を作る。

条件に目をやると。「下方向を3秒見る」となっている。

どうやら最初の“土”を入手する際にいつの間にか条件を達成していたようだ。



孫  「“下”を分解して!」


「せっかく作ったのに分解するのか」と思いつつも、言うとおりに操作する。

すると今度は、画数:3、テン×1と表示された。


孫 これでやっと「“火”」が作れる!


そうして、さっき入手した「テン」×2と画数:4を消費して、“火”という漢字を

作ることができた。

  

  無 無 無

  無 火 無 

  無 木 無


3×3のマス目にこのように文字を並べると、右手に松明が現れた。


ここまでやってようやく、このゲームの流れが掴めてきた。


①条件を満たして「漢字」を入手

     ↓

②「漢字」を分解して、「画数」と「トメ」「ハネ」「テン」などのパーツを入手

     ↓

③「画数」を他の漢字に一度変換して。他の漢字からパーツを入手

     ↓

④「画数」とパーツを組み合わせて、必要な漢字を生成する


漢字を細かなパーツの集合体として捉えて、分解と合体を繰り返してゲームを進めるというもののようだ。

今までは孫の言うとおりにキャラクターを動かしていただけだったが、仕組みが分かると、他にはどんな条件で「漢字」が入手できるのか、入手した「漢字」はどんなアイテムとして使用できるのかという興味をそそられた。普段から身近にある「漢字」を用いて謎解き要素と収集要素の組み合わせはよく考えついたなと感心する。



一連の流れをようやく理解したところで、気になることがあったので、ある漢字があるかを調べてみた。

何度聞いても手順を覚えられない私に、孫はうんざりした表情をしながらももう一度やり方を教えてくれた。

そうして、目当ての漢字を探し当てることができた。

「あった!」

思った通り、今の手持ちの材料で作ることができるようだ。

    ・

   (中略)

    ・

    ・

孫 「じいじ、次はこれつくってみて・・・」


  「えっ、何それ!」

  「どうやって作ったの? 初めて見た!」 



私が作った漢字は“「矛」”だ。 


“刀”よりも刀身がやや長く刀身の両側は波のような曲線が描写され、柄のような部分の造形もある。


どうやら孫は、この漢字はまだ知らなかったようで、文字の入手方法や作り方を教えてとせがんでくる。

先ほどまでの孫に介護される状態から一変して、孫へ教える側と立場が逆転した。


孫が目を輝かせながら、たくさんの意味不明な言葉を発している。

興奮と好奇心に満ちた純粋な眼差しを向けられ、私自身も孫への愛があふれ出す。


ついこの間生まれたばかりだと思っていたのに、もうこんなにもたくさんの言葉を話すようになったのか、胸がポカポカと暖かくなって、ほがらかな気分だ。

孫と一緒に過ごした光景が、走馬灯のように頭の中を駆け巡る。


「ああ、この顔が見られる内はまだ死ねない。」

「昨日、本屋で購入した『終活のすすめ』は、もう少し本棚で眠っていてもらおう」



定年後の変化のない日々を過ごす内に荒んでしまった私の心に、

まるで荒廃した大地に水がしみわたるように、活力が漲るような感覚になる。

    ・

    ・

    ・

孫に「矛」の読み方や意味を伝える。

“矛”はホコと言って、昔の・・・

「矛」という文字や意味の解説をしていると、


孫 「できた!」


子供らしい高い声が説明を遮る。


読み方が分かると、すぐさま自力で作ってしまったようだ。

「まだ早かったなと」

意味や使い方を教えるのは時期尚早だったと反省しつつも、少し物悲しくなった。


そうこうしていると、日が沈んで夜になった。


孫 「テキが来たよ!」


孫の声で、メニュー画面を戻すと、黒いクモ型らしき物体が近づいて来る。

キュイー‼ という鳴き声と共にこちらへ突撃してくる。

バンッと音と供に、後ろへ突き飛ばされる。

6個あるハートゲージの内、2つが消えた。


間髪入れずに、またクモがまた突撃してくる。咄嗟にコントローラーに指が置かれていたボタンを押すと、手に持っていた“矛”を振り回して、敵に当たった。

敵の体が一瞬、赤く点滅する。コウゲキの判定になったのだろう。


「よし!」と敵を倒す光明を見つけ出したが、訳も分からず適当にコントローラーのボタンを押しただけなので、さっきと同じ操作ボタンがどれなのか分からない。

視線を手元のボタンに移してボタンを押すが、今度は画面に視線を戻す頃には、既に動作が終わっている。

さっきまで自然にできていたことが、敵の出現で途端にできなくなる。

さっきまで、どのように動かしていたか皆目見当がつかない。

右往左往するとはまさにこの様子を差すのだろう。

アタフタしていると、自分で無意識の内に方向ボタンを触ってしまい、視線が真上に向いてしまう。

ついに、敵すらも見失ってしまった、、、、、


バンッと音が鳴り、またハートが減る。

残った2つが点滅している。プレイヤーの情報以外に画面には、砂粒をばら撒いたような小さな四角いドットで表された星空が広がる。


どうしようも無くなった状況で、何も考えずただただ同じボタンを連打し続ける。



再度、バンッと衝撃を受ける。

画面が薄暗くなり、「テキにヤラレタ」と表示された。


少ししてから、隣からも

「ヤラレタ―」と悔しそうな声が聞こえた。


孫もヤラレテしまったようだ。


リスポーンして、最初と同じような風景が広がる。

道具は全て失ったが、「画数」や「パーツ」は手元に残る仕様らしい。


孫にせがまれながら、もう一度ゲームを進める。


孫がまだ知らない漢字を作れば、また、あの孫の喜々とした表情が見られると思うと心が躍る。


気付けば、始めた当初の作業感は無くなり、私自身もこのゲームに夢中となっていた。




<あとがき>

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

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