『金色の研究』ユキモト ミコト Ⅰ
作者:紅茶と蜂蜜酒を一杯
形式:散文詩
時:不明
場所:不明
登場人物:雪本 観呼徒。14歳。天秤座。京都府→東京都。
場面:主人公が、不思議な場所で、金色の女性と出会う。
昼と、夜の間に立っていた。
そして見上げた空いっぱいに、虹龍たちが飛んでいた。
昼と夜は、国境のように分かれている。
一歩、左へ進むとそこは昼で、二歩、右に戻ると夜になった。
目には見えない境界線が、ぼくの足もとに敷かれていた。
昼の空は貼り絵のような、様々な色紙を千切って、ばら蒔いたような、
そんな色合いをしている。
夜の空は、星たちの主張が強い。
色持つ明るい星々が、ぎらんぎらんに輝いて、自己の存在を誇示してる。
隣に小さく、こぉとに光る星があったとしても、数多の星の燦きで、
眼を凝らしたって見えやしない。
どちらの空も、どの色も、互いに寄り添い、争いながら出来てるように、
ぼくには見えた。
空に浮かんだ虹龍たちは、形や大きさがみんな違っている。
その鱗のひとつひとつが、キラキラと輝いて、虹色の光を、彗星の軌跡のように下界へと振り撒いている。
そうして地上でポカンと立ってる、呆けたぼくには見向きもしないで、
昼から夜へと流れている。
『ーーーーーーーー。』
遠くの方から、金色の女性が、境界線の上を歩いてくる。
手を振りながら、ぼくに何かを言っている、
みたいに見えるけど、よく分からない。
その人は楽しそうに、今にもスキップを始めそうな、
軽やかな足で歩いてくる。
顔もよく分からない。
その人の全てが、金色の光に包まれている。
彼女が身体を揺らすたび、小さな泡と、葉叢のような細かい光が生まれ、
広がっては消えていく。
あるいは、人ではないのかもしれない。
曖昧な、人の形をした、ただの光かもしれない、
と、ぼくは思う。
でも、どうしてぼくは、あの人を女性だと思ったんだろう?
……いよいよ、ぼくの目の前まで、金色の女性がやってくる。
彼女からあふれる金色の光は、あったかくて、やわらかい。
派手とか、傲慢とか、豪華とか、そういう金色の感じは全くなくて、
ただ、優しく、心地よく、ぼくの身体に流れてくる。
惜しみない光が、ぼくの心に、染み入ってくる。
戸惑うぼくに、彼女は、両手を差し出してくる。
その手には、どこから出したのか、虹色の鱗が一つ、乗っている。
それをじっと見ていたら、もう一度、今度はやや強く、突き出してくる。
ぼくに受け取るように、促してくる。
恐る恐る手を伸ばし、受け取ると、鱗は、ぼくの手の中に、雪のように染み込んでいった。
驚きや不安はなかった。
ただそれを、当然のことのように、ぼんやりと眺めていた。