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8. 化け猫おちる
この世の地獄か石つぶて
哀れな男に情けはなしや
刀ぎらりと光れども
真昼に月が降ってきて
あいや妖しの化け猫さまが
おいらを天にのぼらせた
あーこりゃ、あーこりゃいい匂い
「恥ずかしいから匂いのくだり変えようよ。なんで入れたの? 絶対そんなはずないんだけど」
(そこは同感であるな。あの時は、何日も着の身着のままで過ごしておったのだし)
「右目殿もそう思うってよ?」
「いや、ユエさん、本当にいい匂いしたんですって。幻の紅沈香もかくや。そこは譲らない」
「もう」
「お腹のすき具合はどうです?」
「わたしの? 居候の?」
「ユエさんの」
「まだ平気。お腹すいたの?」
「はは、実は」
「いいよ。いったん止まって、お昼にしよう」
「あ、そうだユエさん」
「なに?」
「愛してますよ」
「また、急に、そういうこと言う……」
「どうです?」
「……もう」
<化け猫おちる 完>
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それでは、次話「化け猫をまつ」でお会いしましょう。