第四十一話 とあるスライムの話
魔力の量ですべて決まる国があった。そんな世界に、ある妖精の少女は生まれる。
霊峰は連なり、大地は黄金の穂がなる自然豊かな地域。
「今日も水汲み大変」
少女の日課は、世話をしている羊のために水をくむことだった。
「手伝ってくれるの?」
そんな少女と仲が良かったのは、隣に住むスライム。スライムは頷く。
「ありがとう。スーちゃん」
少女は穏やかで静かな日々を送っていた。そんな日々を少女は納得していたし、続くと信じていた。
———少女が次の魔王とわかるまでは。
「……豪華」
少女の世界は一遍する。見たこともない煌びやかな宝石や衣服。屈強な男性たちは、皆少女に頭を下げた。
「これが玉座」
椅子に座る。それは少女が魔王になった瞬間んであった。そして、その玉座は細工が施されていた、魔王として座る者に様々な知識を授けると言う。
少女が大人の女性になった頃。友達のスライムと話をしていた。
「スーちゃん。今日ね。勇者が生まれたみたいなの」
「勇者ですか?」
スライムは、魔王となった少女と共にいるために頑張り、幹部にまで登り詰めていた。
「ワタシは勇者には勝てない」
「は……?」
人間と魔族は、何千年も戦争を繰り広げている。
「邪神トリア様はワタシたちを、この世界を見捨てたわ。そして、ワタシは初代魔王パール様のように強くない」
「そ、そんな……」
スライムは震える。魔王以外の誰かが言ったら失笑で終わっただろう。
「レイナ様は、少ない魔族が多い人類に対応できるように、世界を数字で満たした。十二女神はそれすら利用したけど。えーと、スーちゃんは、上限レベル100で、今はレベル80くらいだっけ?」
「はい。ですので、今の内に勇者を殺せば……」
「無理だよ。パール様の時と同じ。女神が中に入ってる。女神は人間が好きだもの」
スライムからでもわかるほど、どこか達観した姿。
「……そ、そんな、魔王様は……、」
「仕方ないよ。ワタシで魔族は終わり。魔王国は、滅亡するの」
「…………………納得できない。わたしは、必ず勇者を、」
「…………?」
ふと、魔王が顔を上げ、玉座がバルコニーに移動する。スライムも後を付いて行った。
「どうしました?」
「…………なにか、くる」
音もなく、空に顕れたのは直方体の型をしたナニか。赤い霧を噴出しながら浮いている。
「…………」
魔王は気付く、その直方体が何であるかを、そして。
「スーちゃん」
魔王は、スライムを抱き寄せた。
「?」
「ワタシが玉座から得たレイナ様の知識をあげる。……ワタシのために頑張れる貴女。どうか、生きてください」
魔王は、スライムを直方体へと投げつけた
「魔王様っっっっっ!」
直方体は、世界を時間を移動する箱舟だった。箱舟の壁にへばりついたスライムは、渡された記憶に混乱しながら、様々な世界を識る。
「!」
「?」
廻り廻る。そしてスライムをくっ付けた平面移動型時空航行移民船ボンドは、トリアがまだ女神だった世界に流れついた。
「ここは……?」
ここには、魔王がいなかった。魔力もなかった。魔族も存在しない。
「…………」
人間や色んな種族はいるが魔法を使わない。
「…………」
赤い霧は、世界を守護している神族たちを消している。魔族が不幸になる前の世界。
「……………ここ、だ。」
友達の魔王。魔王になっても、歳をとって美しくなっても、何も変わらない純朴な少女を救い出せる土地は。
スライムは暗躍する。
「……世界を護る勇者が生まれるなら、それすら支配する存在になればいい。全部わたしの中で完結する」
スライムは蠢く。
「魔王様を呼ぶ方法はわからない。でも神族を喰らいばわかるかもしれない。わからなければ、あの箱舟を喰らえばいい」
妖精を、精霊を、竜族を、巨人を、人間を、獣人を、亜人を、動物を、細菌を、そして、巨神を、神族を。
すべて取り込み—————。
「———————」
わたしが、世界を運営する。




