第二十七話 対面、そして始まる
天幕を出て、廃墟の出入り口に向かう。すでに参加者たちが集まっていた。挨拶をしているのだろうか。
「やあ、トーラス、ブーフ。今日はよろしくね」
参加者の中にトマスがいた。トマスは両手を大きく広げ、俺達の傍にやってくる。
「トマスも参加していたのか。チームは……」
「両親が所属する商会のチームなんだ」
トマスを含め統一された衣装を着ている者たちは、少し派手な目な恰好だ。廃墟で汚れることを考慮に入れてないのだろうか。
各々、話す相手がいるらしい。レイナとライトさん、イーリスお嬢様は、貴族の人だろう。
「……あの顔のテカテカには見覚えあるなぁ」
「チェイン様」
「よぉ。すっかり変わったな。いつも下ばかり見てたやつが」
「わたしは、前を向くって決めたから」
「そうか。まぁ、せいぜい頑張るんだな。今回は色々ありそうだ」
「?」
イーリスお嬢様とテカテカは会話しているがテカテカの意識は別のトコロにあるようだ。
……俺のこと見てない?
「再び会えて光栄だなぁ。まさか貴女が競争相手なんて、運命の糸は本当に不思議だ」
「べ、ベア第三王子」
大げさなリアクションで現れたベア第三王子は、イーリスお嬢様に恭しいお辞儀をした。
「貴女の戦う姿もまるで、戦乙女のような美しさがあるのだろうね。きっとその武道は可憐な舞踊のように」
「え、ええと……その、お、王子のチームは」
「ああ、もちろん。王国で優秀な者が揃っている。勝利はいただくけど、栄光は貴女に捧げたいね」
す、すごい、あの第三王子。ぐいぐいイーリスお嬢様にアピールしている。ただイーリスお嬢様は、あまり押しが強いのは嫌のようで、口元が少し引き攣ってる。
「ふっ。他人頼りで己を磨かない愚か者だな」
「貴様は、第四皇子レパードっ!」
おや、また別の少年が、イーリスお嬢様の傍にやってきたぞ。
「か、歓迎パーティー以来ですね」
「美しき刃に覚えてもらって光栄だ。此度は刃を競い会うのに、実に良い日になるだろうな」
「イーリス・ヴァイス伯爵令嬢には、触れさせないが?」
「ほう、ベア第三王子が相手をしてくれるのか?」
ひ、火花が散っているっ!? イーリスお嬢様は人気者だなぁ。イーリスお嬢様は、レイナやパール、トリアに負けてないほどの美人だもんな、と俺が観客席で適当な感想を思っている第三者だった。
「?」
偉い人たちの視線を俺に向いていた。
「……あの、イーリスお嬢様。どうして俺の後ろに隠れているんですか?」
「え、と、なんとなく?」
羊飼いの俺はスケープゴートにされそうだ。でも、お嬢様が困っている、従者として堂々としてよう。
「君の事は知っているよ。加護を破壊する加護を持つ、忠義の厚い者だってね」
「ほう。噂の……」
え、噂って何?
「十二女神様も酷なことをなさる。そのような試練を用意しなくても、王国民の信仰は揺るがないのに」
「まったく同意だな。十二女神様は絶対だ」
うーん? 俺、この偉い人たちから憐れみをうけてる。
「……、お二人とも。わたしの大切な従者をそんな目で見ないでください」
俺の後ろにいたイーリスお嬢様は、いつのまにか俺の前に立っていた。忙しいお嬢様である。
「それは失礼————」
『開催の時間になりました。参加者は——』
神官の声と共に巨大な鐘の音が響いた。どうやら始まるらしい。俺達は与えられた持ち場に移動する。
「のぉ。マスター」
「なんだ、レイナ」
俺はレイナと並んで歩いている。
「いつのまにモテ男ムーブを身につけたんじゃ?」
「え、モテ……?」
あまりに思い当たる事がないので首をかしげる。そんな俺の様子にレイナが目を丸くした。
「ま、まさか、ど、ど、鈍感系じゃとっ……!?」
レイナはよほど衝撃だったのか、俺から数歩離れた。
「れ、レイナ……?」
「く、来るでない。……妾、困ってしまうのじゃ……」
ライトさんの後ろに隠れたレイナ。ライトさんは苦笑していた。




