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ソウルエクスチェンジ~来世のボクから前世の俺へ~  作者: 山吹アオサ
迷宮での探しもの
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第六話 妖精族?いいえ女神です



士官学生、魔法学科には実践を鍛える訓練室のようなものがあるらしい。


魔法と言う画面越しでしか縁のないものに少なからず興味を覚えていた俺は、訓練室に案内してもらった。


『栄華の炎よ、踊れ、灯れ』

『氷結結界、張り巡らせて』

『雷撃の槌よ』


数人の生徒たちが各々、訓練している。標的に当てる者、対面で魔法をぶつけ合う者、特に何もせず周りを見渡す者、様々だ。


「あれが、魔法かぁ」


何もない所から自然現象を生み出してるみたいですごい。


「見慣れない?確かに1千年前は黎明期であまり魔法は一般的じゃなかったらしいものね」


いや、そうじゃなくて……、でも異世界とか説明しようがないから自分は古代人でいいか。


「あの呪文みたいなので魔法を使うのか?」

「ええそうよ、ただ適正がないと使えないわ、適正は大まかに二つ」

「二つ?」

「魔法と魔道具。そのどちらかが基本だけど……、二つとも適正がある人もいれば、どちらも使えない人もいるわ、貴方は確か……前のメイス・イクリプスくんが、両方使えたけど

初級レベルだったと思う、だから学科を頑張ったのでしょうね」

「なるほど……あれ、それじゃあ、俺も同じ?」

「いいえ、中身が違うから適正は違うと思うわよ。確かクレイモアくんがあげた報告では、魔道具だけだったような」

「魔道具」


魔道具。つまり道具で何かして魔法を使うことができるらしい、ちょっと魔法を使ってみたかったので残念だ。


「魔道具ってどうやって使うんだろう?」


周りを見ても魔法を使っている人ばかりで何か持っている人は見当たらない。


「魔道具は、相性とかあるからーー」

「でしたら、私くしの予備の杖がございますよ、平均的なものですし、お使いになりますか?」


とても甘ったるい声が聞こえた。


「フワフワだ」


思わず声に出てしまうほどのフワフワの金髪をした女性だった、足に届くほどの金髪にたれ目が瞳、そしてスイカ並みな装甲である。


「まぁ?私くしの事をそんな風に呼ぶ殿方に出会ったのは初めてですわ~」

「トリア。いつもならここにはいないわよね?」

「今日は素敵な出会いの予感、そんな気がしたんです~、パール様もそんな時ありませんかぁ?」

「ど、どうかしら……」


きびきびしていてたパールさんが困っているぞ、あのトリアって人すごい天然の気配がするっ。


「さあ、どうぞ」

「あ、ありがとう」


手渡されたのは、音楽で指揮者使うようなタクトにそっくりだった。てっきり杖と言うからには樹から作られたもっと大きいものを想像していたが違ったようだ。


「え、えと、どうしたら……?」

「イメージして使いたい魔法にちなんだ呪文を唱えるのよ」

「呪文とかしらないんだけど、」

「呪文はあくまでイメージするための補助ですわよ、魔力に伝えることができたらどんな言葉でも良いんですわ~」


な、なるほど。まったくわからないがやってみよう。そういえばさっきから部屋中から視線を感じる、見世物になった気分だ

、嫌な気配はしないがいい気分ではない。


「ま、魔力に語りかけるように……」


何をしよう、炎とか出したら派手でいいかもしれない。


「ぬううう、火、火、炎」


燃え盛る炎。なんか赤くて……あれ、そもそも燃料と酸素がないと燃えないじゃ……、それに燃える前に熱とかいるよな、んん?ん?魔力は、えと、熱になるのか?


「うううううん?」


そもそも魔力って何処にあるんだ……?熱になるとして、この杖が熱くなるんだろうか……?



「…………」

「…………」


タクトを持つ手がプルプルしている、力を込めて持っているがあんまり関係なさそう。とりあえず炎の形をイメージしてみる。

パールさんもトリアって人も固唾をのんで見守ってくれている。


「炎、炎、ファイヤー、」


…………何も起こらなくて数分が経過した。俺に視線を向けていた人たちは興味を失い、各々の訓練を始めている。


「…………何もでない」


思わず肩を落とす。


「ほ、ほら、最近来たばかりだから調子が悪いのよ、日を改めたらできるようになるかもしれないわ、」

「…………うん」


すごく慰められた。魔法ってよくわからない。とりあえず借りていた杖をトリアさんに返す。


「あの、杖ありがとうございまし——」

「まあまあまあっ!」


え、何っ!?めちゃキラキラした瞳で俺のこと見ているんですがっ??


「貴方の事は1千年前からおいでになったと聞きましたけど、ホントにそうなのねっ!私くしはとても嬉しいですわっ!」

「あ、あの」


すごいグイグイ寄ってくる、こんな勢いのある人なのかっ?パールさんも目を丸くしているし。


「うふふふふふ、これは失礼しましたわ。私くしはトリア・リーフ。ニンフという妖精族なのですよ」

「……ニンフ?それって女神な——むぐっ」


急にトリアさんに両手で顔をガシッと掴まれた。こ、この人けっこう力強い。あと顔が近い。息がかかるような距離まで急に詰めてきてトリアさんは小声で俺に話しかけた。


「まさか、この時代に私くしの事を女神と呼んでくれる方がいると思いませんでしたわ。本当にあの酷い時代の方なんですね、ちなみに信仰はどのお姉様ですか?」

「むぐ、っむむ」


頬っぺ左右から思いっきり力を込めて持たれているんで話せない。


「あらあらあら?もしかしてどのお姉様も信仰なさってない感じ?でしたら是・非、素敵な女神がいるんですが」


この人?も俺のことを古代人だと思ってるみたいだ。もう本当に古代人にしとこう。それにクレイの話で神とか言ってたけど、女神とかいるんだなぁ。魔法があるくらいだもんな。


「そうそう。私くしが妖精族の名を借りているのは、おしのびで人間界に来ている、くらいに思っていてくださいね」


と可愛くウインクしてくる。ちょっとドキっとした。


「ちょ、ちょっとトリア、メイスくんが困っているわよ。どうしたのよ、いつもの通り名、微笑の妖精は」

「あらあら、そうでしたわ、私くしとした事がつい熱くなってしまって。そうですわ、案内するのならを私くしもいっしょに行きましょう」

「ええっ!」


急に大声をあげて驚くパールさん。クレイの時に見せていた嗜虐心溢れる感じはなく、メイス・イクリプスの肉体と同じくらいの年齢っぽい、少女の反応だった。


「どうしまして、そんなに驚いて?」

「いや、だって、トリアって基本的に人間嫌いじゃなかっの?異性同性問わずに告白されては、微笑を浮かべたままふりまくってるじゃない」

「別に人間嫌いではないのですが……、それと告白してくる方は私くしの見た目にしか興味がありませんわよ?」


パールさんとトリアさんは仲がよさそうだ。


「見た目って、……わからなくはないけど。でもねぇ」

「それに比べっ!この方は違いますわ、今わかりました。こう胸のあたりがぎゅうとしたのですっ!」

「そ、それって……恋?」


パールさんは顔を真っ赤にして、「……恋?」あたりの言葉が小声になっている、恋愛とか経験がないのかもしれない。ちなみトリアさんからは、別に恋してる気配は感じない、むしろ……。


「ふふふふ、こんな時代でも私くしの信徒を得るチャンスがきましたわ、お姉様を出し抜けますの、うふふふふ」


と小声で呟いているが俺にすごく聞こえている。トリアさんは見た目より腹黒タイプなのかもしれない。あと宗教勧誘は勘弁してください。


「さぁ、行きましょう。私くしのオススメスポットに案内いたしますわっ!」


と俺の腕をとるトリアさん。そのあとを続くようにパールさんが歩く。


案内というより自然の多い場所歩く散歩だった。ただすれ違う生徒たちが皆、ぎょとした顔をし、唖然としていたのは印象的だった。



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