プロローグ
蝋燭の光が薄暗い部屋をかすかに照らしていた。
石造りの部屋は壁、地面、天井がタイルなどなどの処理が施されておらず、石材をくみ上げた姿がそのまま残っている、そんな部屋には、窓がないためか、空気が淀み、窮屈さと不衛生さをより際立っていた。
「…………ボクにはもう時間がない」
人が数人ほどのしか入れないであろう部屋の中央、一人の少年が、地面に胡坐をかき、手元の本を睨んでいる。
「…………これで、理論は証明される、ボクは正しい、」
そう呟くと、手に持つを本をボソボソと小声で読み始めた。
本は古びたように見えるが、真新しさを持つ奇妙な本であった、少年が抱えるほどの大きさを持ち、金属光沢をもつ表紙と裏表紙、しかし中のページは、焦げていたり、穴が開いていたりと、後から外側だけ付け足したような様相である。
「っ!」
本の内容を半分ほど読み終わりだした時、変化がおとずれた、本は光だし、光は、渦となって少年を包み込む、その様子に少年は満足気に微笑む。
「……ああ、ボクから先は魔力汚染で使い物にならない、だから、」
光の渦は少年を飲み込もうと動き回る、光が強くなればなるほど、少年の意識は刈り取られていく。
「…………、ボクは、ボクより前、前世に賭ける、よ」
少年の意識はここに消えた。