五話:契約と迫り来る脅威
竜爺から聞いた契約の内容は、簡単だった。メリーさんに私の血を飲ませるらしい。メリーさんの体に私の血を馴染ませて、能力を使えるようにするということだ。ただ儀式を行うのは寝てからだ。戦闘後で疲れたし、メリーさんも寝てるし。部屋に戻って布団に潜ると、睡魔が襲ってきた。少し目を瞑ると、私の意識は途切れた。
アラームの音で、目が覚めた。アラームを止めて時間を見ると6時だった。今日は水曜日で普通に学校があるから、直ぐに制服に着替えて準備する。10分程で支度をし終え、小さめの声で「行ってきます」と言い家を出る。6時半に駅に着き、1時間半かけて学校へ行く。学校に着いて教室へ行き、授業の準備をする。今日の1限目の用意をして、いつも通り席に着いて本を読む。それからチャイムが鳴って、1·2·3·4と授業が続いて学食でお昼を食べて、また5·6と授業を受ける。水曜日は特に体がだるい気がする。時間が経つのも遅く感じるし。
終礼をして学校を出て、行きと同じように電車に乗って家に帰る。玄関に入ろうとすると包丁が飛んできた。………え??
「え??」
それは私には当たらず顔の横にある壁に突き刺さった。犯人はすぐ分かる。メリーさんだ。数秒そのままで居ると、メリーさんは私の方に向かって歩いてきた。
「何処に居たの?」
メリーさんは不機嫌そうな顔でそんなことを聞いてきた。
「えーっと…学校に……行ってました」
数秒後、「ふーん」と言ってメリーさんはリビングに戻って行った。え、この包丁どうするの?……取り敢えず包丁は危ないからキッチンに戻して、リビングに行く。リビングに行くとすぐ、メリーさんは私の腕を引っ張って2階の私の部屋へ連れていった。メリーさんは、キィと音を立ててドアを開くと、私をベッドに座らせる。小さめのナイフで私の人差し指を切り、そこから出てくる血を舐める。
「痛っ」
「我慢しなさい」
10秒くらいそのままで、やっと離してくれたと思ったらメリーさんは、部屋から出ていった。が、またすぐに戻ってきた。手には絆創膏を1枚持っており私の人差し指にそれを貼り付けた。
「はぁ」
「……夜鈴は今から私の主よ」
「で、使える能力は半径5kmの瞬間移動。」
「半径5km?メリーさんって20kmの距離を瞬間移動してたよね?」
「人間が使う能力っていうのは、怪異の力を借りただけ。だから本来の持ち主である私達より劣るっわけよ」
「まぁ、最初に得た能力は100%で使えるけどね」
「そうなの?」
じゃあ………私って…使いこなせてるのかな…能力……。しばらくすると竜爺が帰ってきた。契約のことを聞かれ、さっきした事をありのまま話した。さらに2時間後、莉音さんが家に来た。直ぐに、竜爺·莉音さん·私·メリーさんの4人で夕飯を食べる。食べた後は、私とメリーさんでお風呂に入った。改めてメリーさんを見てると、やっぱり人形とは思えない。そこで、シャワーを浴びてるメリーさんに、気になったことを質問する。
「メリーさんって」
「ん?」
「人形なんだよね?」
「えぇ」
「じゃあ、なんで人間みたいな姿なの?」
「人間社会でやっていくなら、人間の姿の方がいいでしょ?」
「それはそうだけど……」
まぁ、うん。それはそうだけど…。……もういいや。
ふともう1つ、気になった。
「じゃあ別にもう1個。メリーさんっていつからいるの?」
メリーさんはどれくらい前からいるのか、それが気になった。その質問の返事は、
「さぁ?」
「さぁ?って……」
「気付いたら怪異だったからわかんない」
「そもそもとして、怪異の殆どか人間の噂から創られた存在なんだから。それに、怪異からしたら人間の生きる年月なんてすぐ過ぎるし」
「へぇー」
怪異と人間は、やっぱり違うんだと分からされた気がした。怪異と話した事なんて初めてだから、本物の話を聞くと勉強になる気がする。普通はしなくていい勉強なんだろうけど…。
「じゃあ私はもう出るから」
「あっ待って、私も」
メリーさんはシャワーを浴び終わったらしく、私も湯船から出て脱衣所に行く。身体と髪を拭いてドライヤーで髪を乾かして服を着る。
メリーさんと一緒にリビングに行って竜爺に1つ気になったことを聞く。
「竜爺?メリーさんって何処で寝るの?」
「夜鈴の部屋でいいかい?」
「私は別にいいけど…」
「私も別にどこでも」
そういう訳で、私とメリーさんは一緒に寝ることになったんだけど…。布団が1つしか無かったので2人で布団に入って寝る事になった。寝る前に一言メリーさんから
「私を使いこなせ」
それだけ言ってメリーさんは寝ていた。私も眠くなってきて、直ぐに寝た。
時は遡って夜鈴がメリーさんとお風呂に入っている頃、その少女はスマホで電話をしていた。蒼色の髪と自身の顔をパーカーで隠し、そのまま路地裏に入っていった。
「そっちはどう?」
「こっちには私以外で能力者が4人居た。2人はこっち側に来ると思う」
「ふーん。ホントはその4人全員こっち側に来て欲しかったけど……まぁいいか」
「残りの2人は私の部下に殺らせとく」
「…じゃあまた。」
直ぐに電話は切られた。少し歩くと、ドンッと誰かにぶつかった。顔を上げると、周りは5人の大柄の男達がいた。
「おい嬢ちゃん、1人でこんなとこ来てどうしたよ」
男達は下衆な笑いを浮かばせながら三咲に近付いてきた。
「邪魔」
三咲の目は、学校の三咲と同一人物か疑う程、冷めた目をしていた。
「あ?」
「なめてんじゃねぇぞ!!」 「おい!」
1人の男が、三咲に殴り掛かった。が、その拳が三咲に当たることはなかった。
「最初に攻撃したのはあなた達だから」
「狂って『───』」
10秒後、そこに立っていたのは、三咲ただ1人だった。
三咲は路地裏から出て家に戻った。
夜鈴の知らないところで別の大きな何かが動いていた。