ニ話:復讐相手の正体
「なっ!?何で!?」
左目のことは髪とコンタクトで隠してる。何故!?
「まあ、此処では話しにくいな。儂の店に来ないか」
「お嬢さんが知りたいことを教えてやろう」
正直その言葉を信じてもいいか分からない。でも、1%でもあるなら私は危険に賭ける。骨董屋に行くことを伝えた。田村さんは私のことを心配してくれたが止めはしなかった。私はそのままお爺さんに付いていった。
骨董屋に着いて直ぐ、私はお爺さんが何者かを聞いた。
お爺さんの名前は竜次さんといい、私に手袋で隠していた右手を見せてくれた。私の目と同じ様にお爺さんの右手の甲には『水』の字が彫られていた。
「この字は、怪異や神などが憑いている人間の身体に現れる。お嬢さんの、君の目や儂の手のようにな。」
「そして、その異形達の力を使うことが出来る。儂は水神の力で水や氷などを操る」
「どうじゃ?これだけの情報を渡したんだ。信じてくれたかい?」
……確かにそんな情報をくれたんだ。多少は信じていいかも…。
「?……いや、一番大事なことを教えてもらってない。」
「家を襲った奴の正体は何なの?」
「あぁ、あいつは『イザナミ』。日本神話に出てくる最古の神の1人だ。死を司っているんだが」
「襲われた理由は恐らく君が持っている『イザナミの眼』というペンダントが原因だろう。」
「え?」
つまり、つまりだ。私が買ったこのペンダントのせいで2人は死んだの?……そんなの私が殺したようなものだ…。
「だが、君のせいではないだろう。」
……どういうこと……?
「そのペンダントは呪物でな、持っている人間に不幸を与えるんだが……それも悪くて病院に入院するくらいの怪我をするだけで人が死ぬことはない。つまり、誰かがイザナミを操っている、かもしれないということじゃ。」
「イザナミを?」
「もしもの話だがね。」
そのままもう少し詳しく教えてもらって、最後に紹介したい人がいると言われ竜次さんの家で待っているとインターホンがなった。
「来たか。」
竜次さんがドアを開けるとそこにいたのは
「…小学生…?」
そこにいたのは白衣を着た130cmくらいの小さい女の子。
「……失礼だな君は!私は君より歳上だぞ!」
歳上!?
「歳上っていっても数歳ほどだろう」
「ほら、早く自己紹介をしてくれ」
「ッフン!しょうがないな」
「私の名前は観月莉音だ。お前ら異能持ち専門の医者をしている」
「……異能持ち専門の医者?普通の医者じゃ駄目なんですか?」
「あ?……おい爺、そんなことも教えてないのか?」
「ああ、そういえば忘れておったわ。せっかくじゃからお前が教えてやってくれ」
「はぁ!?何で私が教えないといけないんだ!?」
「それくらい簡単じゃろ?まさか…出来ない分けないよな?」
竜次さんがそう言って莉音さんを煽ると、莉音さんはハムスターのように頬を膨らまして「出来るに決まってるだろ!」と言い、私の方を向いた。
「簡単に言うぞ。お前らのように異能を持つ奴は、人間ではない。」
「……人間では……ない…?」
「そうだ。先天性・後天性どちらも、異能を宿した時点で身体の構造が人間のものとは変わり、回復力・身体の頑丈さ等が人間より強くなる。」
「よって、別の生命体になるため、普通の医者では身体の異常が分からない。」
「だから私が見てやるんだ。」
「…成る程……。」
「……何とも思わないのか?」
「人間ではない、別の化け物になったんだぞ?」
「……」
人間ではない、ということにショックはそこまでなかった。別に悲しくないとかそういうわけではないけど、元々、人間でいるということに執着はなかったから。それに姿も殆ど変わってないから実感も湧かないし。
「そうだ、莉音さんも何かの異能持ち、何ですか?」
「ん?急に話題を変えるな。まぁいいだろう。私の異能は回復だ。おい爺。少し部屋から出ろ。」
莉音さんがそう言うと。竜次さんは部屋から出ていった。扉が閉まったことを確認すると、莉音さんは服を脱ぎ始めた。
「!?!?」
「ちょっ!何で服脱いで…!」
「脱ぐか!」
「ほら!」
莉音さんは鎖骨の辺りに指を指すと、そこには私達と同じ様に文字が書かれていた。莉音さんには『癒』の字があった。直ぐに莉音さんは恥ずかしそうにしながらボタンをとめた。
「この力が、癒しと呼べるのかは分からないがね。」
「私に宿っている異能の元は人魚だ。」
「人魚って、半分が人間で半分が魚のあの?」
「ああ、まぁ君が思い浮かべているような綺麗なものではないけどね。」
「…?」
「人魚っていうのは昔、日本にも居たんだ。人間はその肉を求めた。理由は、人魚の肉を喰らうと不老不死になると言われていたからだ。……私の異能は不老不死とはいかなくても死んでいない限り、どんな怪我でも病気でもすぐに直す。」
「だから、私がお前達の医者をやるんだ。」
「………お前は?」
「え?」
「お前は何の異能なんだ?」
「私は……多分ですけど、きさらぎ駅…です?」
「きさらぎ駅?聞いたことがないな」
「えっと、都市伝説の1つで」
「字は?」
「あっ、左目です」
コンタクトは家に着いた時にとってたから髪を上げて、左目を莉音さんに見せた。
「鬼、か」
「おい、莉音、帰らなくていいのか?」
ガチャッと音がなった方向を見てみると竜次さんが時計を指差しながら莉音さんに言った。
「ん?あぁ、もうそんな時間か」
私も時計を見てみるともう24時を越えていた。
「あっ、そうだ。お前、名前は?」
「えっと………鬼咲…夜鈴です!」
「夜鈴か。これ持っとけ」
「えっ?」
莉音さんは名前を聞いて直ぐ私に何かを投げてきた。錠剤?
「これは……?」
「これは私が作った特別性の錠剤だ。私の血を混ぜているから、飲めば死んでいない限り傷が治る」
血を………?少し飲むのに抵抗が出そうだけど……。薬の説明を少しされた後、莉音さんはそのまま帰っていった。
「そうじゃ。夜鈴。君は今、学生かい?」
「……?はい」
………あ!月曜から高校だ!忘れてた!今日土曜だけど……。高校の準備……もしかしてだけど…燃えてる?
「これが家の前に置かれてての」
「え!?」
竜次さんが持っていたのは…高校の鞄や制服等、元々家に置いていた物だった。
「誰が……?」
届けてくれた人が誰か分からないまま次の日になった。