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反対側のfriend…

作者: 秋月

人は日々過ごす中でたまに?毎日時間をゆっくり使いたい時があるだろう。暗い時間に忙しく働く人、勉強する人、ゲームに明け暮れる人。逆に明るみ時間に働く人、勉強する人、ゲームに明け暮れる人。たくさん他にも生きているからこそやらなければいけないことがたくさんある。

「朝ー!起きろー!」

まだへやは暗い朝。携帯の目覚ましセットにも気づかないほど目が開かない。

「夏ー!遅刻するよ!」

うえー毎度同じみこのセリフの前に起きたいわ!

重い体を起こして毎日向かう脱衣場。

「おはよう夏。今日も不細工ね」)

「あーおはよう。毎日一緒だからお互いにさー!いちいちやめようよ!」

私の友達は鏡の中に存在する私。同じ顔をして同じ服装。年齢も同じ。全てが同じ。ただ違う所は性格と日常だ。

10年前にさかのぼる。「ママー!髪の毛してー!出来ないよー!」

小学一年生の初々しい可愛い子供時代。

顔を洗い鏡を見る。自分の顔は自分で見れない。身だしなみは鏡の前いる私。

「あ~あ今日も髪型うまくいかないな~!ママー」

「ちょっと待ってー!今ガス使ってるからなっちゃん先に着替えててね」母は毎日朝から戦っていた。子供ながらになるべく自分のことは自分でやろう!と決めてはいたもののなかなかうまくいかないものだった。

「歯磨きしようっと…」歯ブラシを手に取りふと鏡を見た。何だか忙しい朝なのに切ないような悲しいような気分になったプラス思考の当時の私。

「なっつちゃんおはよう」

「ん?な~に?だーれ?」

「なっちゃんってば!鏡見てよ!」

鏡?脱衣場にある鏡は夏の一日の始めに見る自分の姿だ。くしゃくしゃの髪の毛にはれた目が毎日のネオキスタイルだが中には完璧な人もいるのだろうか。夏を見た‼

「あっ!時間ないよーママー!髪の毛結んでよー!」

「もーなっちゃん、鏡見てってば!」

夏はプラス思考で鈍感でもある。さすがに気づくだろうが…。当時の私はなっちゃんの世界はいったいどんな世界なんだろうと鏡を見てはいつも不思議に思いながらボサボサの髪の毛と腫れた目でたまにママを呼びながら一日をスタートさせていた。

私は乱。なっちゃんの世界の反対側にいるもう一人の私。なっちゃんかプラス思考なら乱の私はマイナス思考なのだ。

なっちゃんに出会ったのはこの時。初登校の日だった。それまではママが化粧する姿を見てるのが好きで自分の姿など気にしなかった。背も伸びて脱衣場の鏡に自分の姿が見えるようになり、初登校のワクワクした気持ちで鏡を見た。

じーとこっちを見て、歯を磨き、ニコニコ笑顔の練習をしてるなっちゃん。なっちゃんだけど自分自身だ。乱でもあるのだ。

「ママー!髪の毛出来ないよー!お友達待ってるのにー!」

「ごめん、ごめん、夏。いそいで可愛くしようね!」ママは忙しいのに怒らなかった。いつも当たり前に助けてくれるママ。

「さーてと出来たよ!鏡を見て見て?どうかな?

夏は弾む気持ちで鏡を見た。

「ウワー!かわいー!ママ早く学校行こう!」

「なっちゃん、なっちゃん」

「ん?誰?」夏は何も疑わず声のする方を見た。

「ウワー!夏だー!夏?こんにちは。今日入学式だよ!嬉しいね。乱ちゃん。夏ね乱ちゃんの事ずっと知ってたよ!夏と同じ顔だけど、乱ちゃん寂しそうでいつもお友達になりたかったんだ!」

乱はきょとんとしてる夏と同じようにキョトンとしていた。

鏡の前では同じ世界にいる二人だが夏と乱は対称的な世界に生きていた。

目に映る世界が誰しも同じではないのが世の中だ。

夏はブラス思考の鈍感だが、乱はマイナス思考だ。

そんな二人はいつの間にか別々の世界に生きていた。

そしてお互いに良き相談相手であり、友達であり、別世界に生きているのが嘘のようにどこにいても一緒だった。学校の鏡や自分が映るまど、雨上がりの水溜まり全てが夏と乱の二人だけの空間、世だった。

「そういえば初めてなっちゃんに勇気を出して話かけたとき何故私だと分かったの?怖くなかったの?

「何よ今更ー!んー怖いっていうよりは嬉しかったよ!だって乱は私だったから。」

乱は夏と話をすると元気が出た。あの小学校の入学式から10年間二人だけで支えあって生きてきた。

その日その時の出来事を共有し、互いの世界で出会い生きている。

二人は17歳になっていた。子供から大人に感情が切り替わる時期だ。

夏は相変わらず学校でも人気者で成績も真ん中程。

乱は内気な性格だがとても気が利く学校では頼りにされる存在だった。

しかし互いに自分がもっていないものを持っている性格が羨ましく、いつしか疎ましくなったのだ。

顔を会わせればいつものように笑顔だが、その笑顔も苦い顔になりがちになっていた。

「乱、無理して私に合わせなくて良いよ。乱の気持ちもたまには尊重しなきゃね!」

夏はこの複雑な感情が何なのか自分でも理解できずに苦しんつわをゆでいた。

乱も夏と同じ感情だった。ずっと仲良しだと思ってたのは自分だけの思いで相手に何かしら押し付けてしまっているんではないかと不安でもあった。たが、お互いにその感情は笑顔の表情とともに斯くしていた。

鏡を見ると夏がいる、乱かいる。互いの感情のすれ違いはいつしか年月とともに増していった。

高校3年の春になり、夏と乱は進路に向かい合っていた。SNSの時代で自分達以外に共有できる世界に夏は乱、乱は夏に向かい合ってもはまなすこともなくなっていた。

ブラス思考の夏の世界。人は活気にあふれイキイキとしていた。

マイナス思考の乱の世界。夏の世界とは反対側の世界。必死に生き抜いいる。努力しなければ抜かされていく世界。

お互いにお互いの世界に関心すらなくなっていた。

「夏ーご飯よー!夏ー!」

夏は母の声も聞こえないほどSNSにのめり込んでいた。

「夏ー!もう知らないからね!ご飯自分で何とかしなさい!」

(初めまして。友達になりませんか?夏です。)

(初めまして!何歳ですか?)

SNSは世界の人々と共有できる心を許せる場所だ。

初めまして、こんにちは、挨拶には不思議な力がある。

言葉が異なる人々といろんな事を共有できる。

夏と乱の出会いもそうだった。朝の変わらないボサボサの髪の毛、腫れた目をお互いに見ては「おはよう!乱ちゃん」「おはようなっちゃん!」から一日をスタートしていた。

体の成長と共に心も成長していた。

そして夏は乱に向かい合う気持ちが出来なくなっていた。

そんな自分が夏は乱に対して切なく罪悪感にさいなまれていた。

(乱…)

そんな夏を乱は受け入れて見守っていた。鏡で夏を見て夏が笑顔を見せなくなっているのが分かっていたからだ。

乱は辛かった。乱の世界はいつも誰かが傷つき、擦り合い、そして荒んでいた。

空は晴れていても人々はしたを向き、作り笑いをしていた。

そんな世界を当たり前に過ごしてきた乱だったが夏の存在は荒んだ世界を照らしているようだった。

(なっちゃんの世界に生きてみたいな…)

乱は夏と向き合うようになりいつしか夏の世界に興味を持ち始めていた。

しかし二人は気持ちかすれ違い、お互いを理解しようとする余裕がなかった。そんな二人にも姿、形以外に共通するものがあった。だがなかなか打ち明ける事ができずもどかしく日々過ぎていった。

「夏ー!夏ー!ちょっと話聞いてるの?」

「聞いてるよ!」

「もう夏は他に興味ないの?スマホばっかり見て。

母の言うことは理解しようとできていた。でも夏には抜け出したくても出来なかった。そこは自分を理解してくれる人達で溢れていたから。

一方乱は…

「乱は本当に小さい時からママを困らせないしママの話を聞いてくれる優しい子で良かった。」

(違うよママ。何も分かってないママは幸せだね。)

二人の共通するもの…

夏にはあって、乱には無く、乱にはあって、夏にはない心だ。お互いに映る世界では見えていた幼い頃。補う事がてきていたから悩みも苦しくても我慢できていた。

今はSNSで補う夏に乱は複雑と苛立ちが日常を混乱させていた。

そして乱は夏から離れた。

夏は相変わらず乱の存在が疎ましかった。

ある朝夏は鏡を見つめて乱を呼んだ。

「乱。乱、とても寂しそうな顔。私に不満があるなら言いなさいよ!私を見てそんな顔しないで!」

…「何よ。乱黙ってればそれで済むから本当楽よね!」

乱には夏の声は届いていなかった。正直届いていたのかもしれない。しかし乱には今の夏を受け入れられなかった。

小さい時は夏と一緒にいたかった。じっと鏡を見て願っているうちに夏に出会えた。夏が不可思議がらずに怖がらずにニコニコして手を合わせ話を聞いて「大丈夫だよ!乱ちゃん!」いつも口癖のように言っていた夏。乱はそんな夏がいなくなってしまったようで夏を受け入れられなかった。

「夏ー!ママ買い物いくけど何から何までいる?」「あー特にな~い」

「了解ー!じゃあ火の元だけ気をつけてよ!夏はいつもなんでも付けっぱなしなんだから!」

「分かってるよ!じゃぁね!」

夏はいつもと同じようにSNSの見えない相手と日常を共有していた。だが、そこには見えないからこそ人々の寂しさや孤独、悩みや苦しみが渦を巻いていた。夏も笑顔の裏に自分では気づかないふりをして逃げては渦にのまれていた。

(こんにちは。夏さん。こんにちは、こんにちは。)挨拶から始まる繋がりを夏は心から受け入れ、充電が切れると不安にさいなまれ目に見える周りの人々や母親の存在は見えなくなっていた。

そんなある日、「夏ー次の授業移動だよ!」

…「うん。わかった!どこだっけ?」

…「ちょっと夏?夏ってば!今日ずっと携帯見てない?見つかったらヤバイよ!何そんなに見てるの?」

「ん?私のたくさんの友達がね、相談にのってくれてるの。学校ってマジで面倒くさい事ばっかりで嫌になっちって。」

「夏珍しいね。そんな愚痴初めて聞いたー!もうそんな話書き込んでるんじゃないよね。私に話してくれたらいいのに。」

…「授業遅れるよ。行かなきゃ。」

夏は学校の友達に笑顔を見せる事で日常が平和に過ぎていく事を本当は結局自分を苦しめていることをあの小学校に入学した7歳の時に気づいていた。明るく振る舞うことで大丈夫だよね。皆大丈夫だよね。それが成長と共に乱に変わっていっていた。

「乱ちゃんおはよう!乱ちゃん今日も頑張ろうね!」

乱の世界は夏が作り上げた心の世界。夏本人は気づいていない世界で夏は乱とささえあって10年の月日を過ごしてきたのだった。

夏はもう一人の反対側の友達無意識に作り上げ心を平常に保ちながら現実世界を生きてきた。母はそんな夏を見守って学校に出向き先生やクラスメートに自ら夏の生き方を見守って欲しいと頼んだ。皆笑顔で受け入れてくれた。入学式のあの日からずっと夏の反対側の友達と夏の成長を一緒に過ごしてそして一緒に共に支えあって17歳になった。

「ねぇ乱、今日もまた顔面引きつるりわー!最近乱私にも笑顔見せなくなったよね。何か不満なの?」

「いや別にいつも通りだよ。」

「なんだか嫌な感じだわー!」

周りから見たらとても不思議に見える夏の姿。夏から見たら当たり前の日常。自分と向き合い自分じゃない自分。夏の世界にしか見えない不思議な乱の世界。

心を繋ぐ世界。夏のプラス思考は乱がいるからこそ成り立っている。マイナスな乱もまた夏本人である。

自分を映す物の反対側の世界に繋がるのは夏だけなのかは分からない。乱もまた夏の世界に繋がるのも自分だけなのかは分からない。

「なっちゃんは何故笑顔に拘りの?笑顔じゃなくても無理に笑わなくても良いのに。」「分かってるけど笑顔だと周りを不愉快にさせないだろうし難でも上手くいく感じがするから。」

「たしかになっちゃんの考えも理解できるかもしないいけど私は正直に毎日を過ごしたい。だから笑顔になれない。夏ちゃんの笑顔は私には届かない。」(……)

そんな二人のやりとりも時間が過ぎていく程世界も変動していった。人々は気持ちがこもり争いが増え、SNSの世界も過激になっていった。文字の中の人々に焦りや不安、苛立ち悲しみ、楽しい嬉しいの笑顔の裏にそんな心が世界を変えてしまっていた。

「夏ちゃん最近何かあった?最近ずっと携帯ばかりみて心配だよ」 

「あーごめん。つい周りが気になっちゃって。世界の人達って言葉の壁を越して伝えてきてくれるから夢中になっちゃって」

「そっか。でも今の夏の世界を見てね。ってか教室移動だよ」

「私の世界?」夏は教室を面倒くさそうに移動日したが…

「誰も居なくないか?ん?」廊下も教室も見渡しながら歩いたがさっきいた友達の姿さえ消えていた。「ちょっと!誰かいないの?おーい!マジ?どういう事?」

夏はふいにまどに映る自分を見た。そこには廊下を通る同級生や先輩、後輩が映り夏の肩を叩く友達も映っていた。皆楽しそうに会話をしているようだった。きっと夏と乱は生まれた時空が違っていても鏡に引き寄せられ、いつしかお互いにを求めてお互いを意識していたのかもしれない。

同じ道同じ人生を過ごしながら反対側の友達として心の葛藤をお互いに感じてお互いに励ましていたのかもしれない。

しかし目に映る世界ものは必ずしも当たり前ではなかったのかもしれない。見渡してみると10年後20年後この二人の世界は、人々の心の歪みの中に存在しあなた自身が作り上げた未来なのかもしれない。

「なっちゃん、最近歩くのおっくうだねー。歳かね?」

「乱は相変わらず不細工だねー!でも乱がいたからここまで行きたー!若い時は逃げ道を探したもんさー笑ってれば周りが幸せなんだと作り笑いさえ当たり前だと言い聞かせてたさ」

17歳から何十年過ぎた事を二人はその時間をなぞるように話始めた。見た目を気にして見られる事を意識し、鏡を見る毎日。いつしか疲れはてそれでも必死に生きてきた二人。崩壊の世界と回復の世界を繰り返し年月を過ごして人々は成長していく。二人もまた同じように崩壊と回復を繰り返しその中で壊れた心を癒してくれる相手と廻り合い、新しい家族を作り上げた。何か変わると信じて。

「ママー!髪の毛してー!できないよー!」

今日は小学校の入学式。

「ちょっとまって、今ガス使ってるからごめんね!

「ママ早く!お友達待ってるのにー!あっ!乱ちゃんおはよう!夏ね今日入学式なんだ!乱ちゃんは?」

「うん。なっちゃんおはよう!」

10年20年と過ぎ行く月日の中に同じように生きて同じように泣き笑い空は変わらないのに下を向けば変わってゆく世界。夏と乱は永遠に私達の目の前に表れるては消えていく人間の夢なのかもしれない。

「乱ちゃん、明日も晴れるかな?きっと晴れるよね!大丈夫だよね!」

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