冬の詩:笑顔/霰/半月/白昼夢/我が子…/ツリー/寒い夜/真夜中の秘密
笑顔
いつも笑ってるんだねって
みんなから言われる
それって、ほめられてるのか
けなされてるのかわかんないけど
悪いことじゃないよね
笑うことはあたしには
とても自然なこと
ただ一回だけ違ったけど
あなたがあたしの中で
いちばん好きだって言ってくれたから
がんばったよ
最後だもんね
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霰
あたしは指の先がいつも冷たい
だから、こんなところで言わないで
なべ焼きうどんを食べてるときも
ホットココアを飲んでるときも
お天気の話をしてたくせに
だからほら
鉛色の雲が広がって
今にも降ってきそう
そんな公園でなんて
雪は静寂をもたらすもの
でも、霰は音を聴くもの
だからほら
聞こえなかったじゃない
好きだって言ったの?
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半月
寒いのも、暗いのも好きじゃないけど
あなたといっしょなら楽しい
肩を抱いてくれれば
もっとうれしい
なんか不思議だよね
ずっと前から知ってたような
でも、まだまだ知りたいことがいっぱい
もう半分?
まだ半分?
じゃあ、またね
握手して
軽くキスして
お月様をパキンと二つに割って
おうちまで持って帰ろうね
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白昼夢
どうしたの?
鳩が豆鉄砲食ったみたいな顔して
え? 何言ってんの?
髪の毛切っただけじゃない
しゃべるといつもどおり?
悪かったわね
トレーナーとジーンズの方が似合う?
ぷん。どうせドレスってがらじゃないもん
ひらひらひら……?
まだぼおってしてるね
どこにもいかないでって?
わかったからそんなに抱きしめないで
翼が折れちゃうじゃない
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我が子…
親はなくても子は育つ
そう。あたしがもし死んじゃっても
元気に育ってくれたらいいな
子は親の背中を見て育つ
そう。あなたたちは
あたしの見えないあたしを見ている
まるで神様のように
親の心、子知らず
そう。そんなの気にすることはない
自分たちで自分たちの道を行きなさい
そして、親になったら笑ってちょうだい
その日になったら
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ツリー
今はこの小さなツリーがいいの
二人っきりで見つめながら
夢を語り合うには
この間、行ったデートスポットのツリーは
夜空に向かってずっと伸びて
幾千ものイルミネーションで
幾千もの願いを聴いていたね
もし想いがかなって
あたしたちの子どもができたら
もうちょっと大きいのを買おうよ
その子がサンタを信じている間
見上げるくらいの
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寒い夜
オレンジ・マーマレードを
紅茶に溶かして飲んでみた
好きなドラマの最終回を見ながら
ブルーの水性ボールペンで
今年もよろしくねって年賀状に書いた
スマホが鳴らないかなって思いながら
結露した暗い窓を指でなぞる
子どもじゃないからハートなんて書かないけど
お布団に入っても眠れないから
独り言をつぶやいてしまう
あたためて
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真夜中の秘密
下弦の月がぬりゅって昇って
ハートのクイーンが裏返り
なめらかな背中に薔薇が咲く
ふるえる舌に花びらを撫でられて
倒錯した砂時計が
夜明けまで1時間と9分だと告げる
あなたは1回と3/4は楽しめると笑って
あたしの小さなボタンを弾く
真紅の花火が
アーチの肢体を浮かび上がらせる
潮が深海から満ちてきて
スペードのエースが貫き
きつい貝殻に挟まれあえぐ
インモラルな使命感にそそられて
痙攣した脳みそが一瞬の
幻影に(あたしの?)
引きずり回される(あなたが?)
蝸牛のような跡を引いて(混じり合って)
流星のような声を挙げて