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他人の夢の断片短編小説  作者: モシャス男子
9/9

松永 恵子の場合

女子会ってモノは建前8割で構成されている。



今日は私のアパートに同期5人で集まって粉ものパーティを開催する日だ。

本来、粉ものというのは罪悪感の塊なのだけど、たまの女子会なのだからそんなことは気にしてられない。

ほろよいだってたくさん買い込んだし、カルーアも用意した。

当然プレミアムモルツも。

同期はみんな外ではそんなに飲むほうじゃないと言っているけど、女子だけで集まると不思議とお酒がジュースに変わる。

例にもれず私も女子会パワーでお酒が魔法のジュースに変わる。


台所の戸棚からボウル準備していたタイミングで、玄関から聞きなれていても緊張してしまう音が鳴った。

「はーい、今行きまーす」

私のアパートにはカメラ付きインターホンなんて高尚なものはないので元気よく返事をする。

緊張してしまう音の正体はこれのせいかもしれない。


のぞき窓から確認しようとすると、カシュッという音が聞こえた。

私はドアを開け「もうあけちゃってるじゃないの」と笑いを堪えながら同期に言った。

散らかってるけどどうぞ、という決まり文句で部屋に同期を招き入れる。

全然散らかってないじゃんというお世辞を左に受け流し、リビングへと誘導した。

途中お決まりのようにバスルームを覗く同期に蹴りを入れつつ、一人足りないことに気づいた。

「○○来てないけどぎっくり腰?」

「なんか買うものあって遅れるって言ってたよ」

サプライズの好きなあの子のことだから何を持ってくるか楽しみだな。


リビングで一人欠席者の出た円卓会議が始まる。

お酒は○○が来てからにしようかという会話をしたのちに私は台所へ行き、大きめのホットプレートを手に取り、振り向いた瞬間に二度目のカシュッという音が聞こえてきて少し強く奥歯をすり合わせた。

スマホが並ぶテーブルにホットプレートを置き。

「乾杯もまだだよ」と今度は笑いながら言った。


「2回乾杯したらいい」

短い髪のよく似合う姐さんというあだ名の同期に唆され、私も勢いよくビールを飲み干した。


全員でお好み焼きの用意をして、隣から苦情が来そうなほど喋りながらホットプレートでお好み焼きを焼き始める。

夏祭りを思い出させる香りを嗅ぎながら全員で遅くなった1度目の乾杯を済ませる。

こんな時でも缶を当てずに胸元に少し持ち上げるだけの姐さんは非常にクールだ。


1枚目のお好み焼きが出来上がる頃にピンポーンというチャイムがなり、同期みんなが慌てて隠れようとした、姐さん以外。

その時に飲み途中のほろよいアイスティーサワーが倒れてテーブルを侵食したが被害は少なかったのでバスルームを覗いた同期を蹴っておいた。


いらっしゃい、という言葉と同時くらいに玄関を開けた。

そこには足りなかった1人がそこそこ大きめの魚を持って立っていた。

「カツオ!知り合いがくれるっていうから貰ってきたの!」

私は真顔のままドアを閉めた。

おーいという声と共にドアを叩く音が近所に迷惑がかかりそうなので早急に招き入れることにする。


「遅くなっちゃったー、見てみてー!カツオー!」

天真爛漫でムードメーカーなこの子が来てやっと同期が集結した。

お酒もかなり進んでいたが5回目の乾杯を済ませて、カツオを捌ける人を探したら姐さんが捌けるとのことなので台所を任せた。


カツオ楽しみだなぁなどと言いながらまた1人欠けた円卓会議はウワバミのように酒を飲んでいく。

台所から姐さんが先に切れた分置いておくね、とテーブルに少し刺身を置いて台所へ戻っていった。

美味しそうだなぁと思いながら箸を伸ばしたときに私は思い出した。

これは私的にもかなりいいタイミングで思い出した。

「先週買った高級な土しょうががあるから擦ってくるね!」

同期たちの「おー」という声援に背中を押されながら意気揚々と台所へ向かう。


真剣な顔でカツオと向き合う姐さんを見て少し惚れてしまいそうになりながら使い慣れた冷蔵庫を開ける。

白いビニールに包まれた先週買った物を取り出す。

あったあったと声にもならない声を出して流しに立つ。

開けてみたら土しょうがではなかった。


動かなくなっていたハムスターだった。


「みんなー!ごめーん、しょうがじゃなくてハムスターだった!これから蘇生するから手伝ってー!」

どうせならいきているほうがいいものね。

私は慣れた手つきでハムスターの胸を揉む。

手伝ってと言ったのに誰も来てくれないことに少しムッとしたが、私もダメかなぁと思っていたので良しとする。


ハムスターを蘇生しようと試みたがやはりダメだった。

まぁ仕方ないか、本当は生きたままの方が美味しいけど、これはこれで美味しいからよしとする。


冷蔵庫に先週買って使いそびれた土しょうがが入ってると思ったらハムスターで、慌てて救出した。私が必死に蘇生しているのに誰も助けてくれなかった。

より

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