表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
他人の夢の断片短編小説  作者: モシャス男子
4/9

土岐 桂葉の場合


「あんね、休憩中にうたた寝してたんよ」

「はい」

「病棟に置いてある水色の消しゴムあるっしょ?」

「はい」

「あれがな…。私の個人用Boxに隙間無いほどビッシリ大量に詰られてる夢見た…」

「なにそれ、カオス」より

皆さんは消しゴムを、最後まで使ったことはありますか?

最初はカドのある消しゴムが、使っていくうちに丸くなり、小さくなって

それから…?


私は消しゴムを使い切ったことがない。

これは誰でもそうなんだと思う。

たいてい小さくなって失くしてしまうか、捨ててしまう。


私は昔から青い消しゴムを使い続けていた。

子供の頃にお母さんが買ってくれた青いアイスクリームのプリントが施された消しゴムがお気に入りで、それから大人になってからもずっと青い色の消しゴムを使っていた。

アイスクリームのプリントが重要ではなく青い色の消しゴムが好きだった。

周りのみんなは白い消しゴムだとか、カドケシだとか練り消しだとか、色々使っていた青春時代も青い消しゴムを使い続けていた。

だからなんだと言う話なのだが、私の昔から変わらないところはそこなのだ。


仕事を黙々とこなしていてもやはり誤字脱字は避けられない運命であり、仕方のないことだ。

今日もいつもの青い消しゴムを使おうと少しチャックがくたびれたケースに手を入れて消しゴムを探す。

「無いなぁ」

今回の職場では初めて消しゴムを失くしてしまった。


そんなにものの入っていないペンケースをガチャガチャと漁っていると同僚がなんか失くしたか?と聞いてきた。

「私の消しゴムが無いんですよね、かなりチビてたから落としたのかな」

とペンケースを裏返して、机に小さなフリーマーケットを開店しながら話す。

「桂葉さんまた青い消しゴム無くしたの?僕の消しゴムあげるよ、予備あるし」

と使いかけだが3点カドの残る消しゴムを渡された。

この消しゴムは白い。


んー。といいながら。

「まだ新品じゃないですか、急いでる仕事でもないので消しゴム買いに行ってきます」

あいよ、と言いながら手をパタパタ振る同僚に消しゴムを渡して部屋を出た。


廊下を歩き、青い消しゴムの売っている店はどの辺かな、などと考えていた。


意外に職場の近くには文具店が無く、青い消しゴム探しに時間がかかってしまい

部屋に戻るのがかなり遅くなってしまった。

急ぐ仕事ではないのだが定時を過ぎてしまい、冷たいホットコーヒーを飲んで苦さで気を紛らわす。

青い消しゴムを使って仕事を終わらせて部屋を出る。


基本的に仕事場には私服で来るので着替えとかはないのだが荷物を個人用ボックスに入れているので荷物を取りに行く。

だが、鍵がない。

「あれぇ?色々失くなるなぁ。もう、朝のテレビの占いは一位でなくしものが見つかる日って言ってたのに」

1人の時は割と人間は思ってることを口に出してしまいがちになるのは誰だってそう。

そうだと思いたい。


仕事をしていた部屋に戻ると、机の下に観光地で買ったカッパのキーホルダーのついた鍵が落ちていた。

すぐに見つかって良かったと息を吐き、もう一度個人用ボックスへ向かった。


ボックスの鍵を開け、戸を開ける。

いつもと違う景色に思考が停止した。


個人用ボックスの中には隙間なく詰め込まれた使いかけの青い消しゴムだった。

城の石垣の如く綺麗に敷き詰められていて、少しすごいと思いつつ

状況を理解していった。


あぁそうか、ずっと前からだったのか。


私は会社を辞めて引っ越した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ