転生準備
白い景色が広がる空間に俺はいた。
『ここはどこだ?』
その問いに何者かが答えた。おそらく神だ。
『ここは死後の世界じゃ』
『じゃあ俺は死んだと言うことですか?』
『そうだお前は、若くして亡くなった……理由はわかるな』
『確か……俺は冷蔵庫に五年もの間、眠っていた高級黒毛和牛がもったいなくて食べてのだ。結果として腹痛……おそらく食中毒で死んでしまったと思いますが、そうですか?』
じゅるっ、おっといけない思い出したらヨダレが。
『う、うむ。理解が早くて助かる。それでのお主には……』
『異世界転生ですね。そうですよね!』
『……よくわかったの』
『いやー、ニートの俺は暇で暇で仕方なくて、WEB小説やアプリ漫画での情報収集として読みあさっていましてね。こんな状況ですし、異世界転生ならいいなーと淡い期待を抱いていたら本当に異世界転生ですね。きたあああああああ!!!!』
『……』
『すいません、思わず感情が昂ぶって叫んでしまいました。どうか地球に転生するなんて言わないでくださいね』
『そんなことは言わね。暴言を吐かれるよりは数億倍マシじゃ』
『なんと慈悲深い』
『こほんっ。魂の残留時間も限られているので話しを進めるぞ、お主は異世界転生するかわりに願いごとを三つじゃが叶えられる』
『三つですか……これってもしかして試してます?【異世界語】は標準装備ですか?』
『……それがお主の第一の願いかの?』
『あ、あっぶねええ!!!【異世界語】が喋れないとか日本語は喋るくせにアラビア語が喋れないとか言ってるようなもんだよ。英語の比じゃねえ。本当に危ねえ』
『因みに、この事を聞いてきたのはお主が初めてじゃな』
『うわわわ』
きっと俺以外に転生者はいると思うが、気づかなかったあんたが悪い、南無。
と言うことは一つ目は【異世界語】に関する願いになるが、俺はある事を閃いた。
『なあ、【異世界初心者セット】をくださいなんてどうかな?』
『?どういうことじゃ』
『異世界にいくなんて海外に手ぶらでいけ!なんて言っているようなもんじゃん?』
『まあそうなるの』
『だからさ【異世界語】にプラスしてお金を少しと異世界の服、それに生活魔法なんて使えたらいいななんて思ったわけよ』
生活魔法は、手から火や水や風を出したり、体を綺麗にする魔法が使えるもののことだ。
『そのぐらいなら許容範囲じゃ』
『よしっ』
言質を取り付けて生活の基盤を手に入れた俺は、残るの二つの願いを慎重に考える。
異世界といえば魔獣や野蛮な盗賊がいる世界だよな。異世界に入ってすぐに死にたくはないし、
『絶対無敵の障壁』を創れるスキルをもらおうと名付けて『パーフェクトバリア』
『あと一つは……うーんうーんうーん。何にしよう……なあ神様よ。現地に行ってから考えてみてもいいか?』
『いいぞ』
『いいんかい!』
思わず突っ込んでしまった。今の段階でアイデアが出てこないし残り一つは現地に行ってから考えよう。
『では異世界転生じゃが、言い忘れおった。お主は正真正銘、赤ん坊としてスタートするから【異世界初心者セット】は【アイテムボックス】とやらに入れておくからのー、忘れるでないぞー』
最後に重要な事をいう神様の声が脳内に響くとだんだんと意識が薄れていき、ぷつんっと言う音と共に意識を失った。