二番
元気は家に帰り台所でお茶を作っている。コップに注ぎソファに座っている女の子に差し出す、女の子は「ありがとう」と言いお茶を飲む。美味しかったのか顔が笑顔だ。顔が整っており綺麗な黒髪が魅力の女の子 大和撫子は元気の家に来ていた。元気は向かいのソファに座り話し始める。
「大和さん、さっきの話なんだけど」
大和は飲むのを止め元気の方に視線を向ける
「ええ、先ほど言ったとおりよ、昨日の白いアダムスに乗っていたのは貴方よね光ヶ丘君」
「根拠は?」
「女の勘よ。」
大和はそう答えた後、手を口に当て「冗談よ」と笑う。
「私がそう思ったのは、貴方がアダムスの開発に関わった光ヶ丘博士の息子だからよ。昨日見たあのアダムスあれは見たことない形をしていた、私はあれを試作型のアダムスと仮定した。それで貴方がテストパイロットをしていると考えたの。」
「残念だがそれはハズレだ。まず俺自身はアダムスについて何も知らないし関わりが無い、そんな奴がアダムスのテストパイロットなんか出来ないと思うけど。」
「そうなの。しかし実際に私はあの白のアダムスに命を助けて貰った、コレは事実。」
「俺も聞きたいことがある、佐藤に教えて貰ったんだけど昨日君は黒いアダムスに狙われていたらしいな、なんでだ?」
大和は少し考え、口を開く。
「私も心当たりは無いの、有るとしたら私が〈バトル・ウォー〉に出場するくらいかしら」
バトル・ウォーとは日本で行われる、アダムスに乗り決まった場所で戦う人気の大会だ。アマチュアに分類されるがその人気と経済効果はとてつもない。参加資格は年齢十六歳から二十歳までの男女問わずで各自スポンサーを付ける決まりがある。スポンサーロゴを付ける場所はパイロットスーツと決まっている。これはアダムス自体、兵器の為もしもの事態を考慮した結果となっている。とはいえバトル・ウォーは命を賭けた試合ではなくあくまでアダムスを使った格闘バトルなので死んでしまう危険性は極めて低い。この大会に出ることで注目を浴びるためアダムスに乗る者、スポンサー、技術スタッフは名前と技術を売るのに最高の舞台なのだ。
「だから狙ったのか。」
確かに凄いことだが理由となるには少し弱い気がする。
「だけどこれだと理由が弱い気がするの。」
「でも他の理由は考えられないんだろ?」
「そうね、あとは私の兄が大和戦艦なのぐらいかしら。」
「なんだって!?」
大和戦艦とは日本で最強と言われているアダムス操縦者だ。
「来年行われるアダムスに乗り、国同士で戦う大会が開かれるのは知っている?」
「いや知らない。」
「アダムスの世界大会が開かれるの、ちなみに日本代表は大和戦艦よ。」
これで繋がった。
「つまり君が白いアダムス操縦者を探してた理由は?」
「バトル・ウォーに出場して優勝する為よ、その為あの白いアダムス操縦者に私を護衛して欲しいの、あの黒いアダムスの目的がバトル・ウォー参加者の妨害なら必ず現れる。いや、それだけならまだいいわ。世界大会までそんな事されてしまったら兄の夢が」
大和はそこで話すのを止めて視線を下に向ける。大和の体は怒りに震えていた。元気は大和がそこまで真剣になる理由は知らない。しかし大和が夢や目標の為に必死なのは伝わった、だから
「それを話すのは俺じゃないでしょ」
元気は大和に言い放った。
「でも、貴方は」
「俺に何が出来る?」
元気の言葉に大和は止まった
「それを伝えるのは警察とか大人にだ、無力で関係ない俺にじゃない残念だけど俺は護衛なんか出来ない。」
「でも、だったらあんなタイミングで」
「俺の親父はもう死んでる、俺にはアダムスは作れない。」
大和は悲しそうな顔を浮かべる
「ごめんなさい、私もう帰るね。 ねえ、光ヶ丘君最後にこれだけ聞かせて貴方はロボット アダムスは好き?」
「いや、俺はアダムスは嫌いだよ」
元気の答えに大和は
「そう…飲み物ありがとう ごめんなさい」
元気の家から出て行った。