夢、そして現実
~夢~
「青藍!死体をそのままにしておくなんてどういうこと?!暗殺者としての自覚はあるの?!」
「あ?姿は見られてないんだから問題ないだろ。どうせ誰がやったかなんてわかんねぇーよ。」
「そういう問題じゃないよ!だいたいーー……」
「ここは…どこ?確か…路地裏にいたはずじゃ…そうだ…急に酷い耳鳴りがして気を失ったんだ。じゃあここは夢の中?不思議な感覚…現実じゃないのに意識があるし…現実みたいな感覚…。」
(誰かの話し声が聞こえる。この声は…路地裏で耳鳴りと一緒に聞こえた声だ。男の人が…2人?言い争っているみたい‥…いや、片方の男の人が一方的に何か言っている。青藍?暗殺者?何のことだろう?もっと近くで聞きたい。)
華美は声が聞こえる方へ歩いて行った。
夢の中なのに全ての感覚があった。視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚。それだけではない。どの感覚も現実にいる時よりも鋭くなっていた。まるで、別人の体みたいだ。
声が聞こえる方へ行ってみると、周りの景色は白っぽい色の空間からさっきまでいた路地裏の景色に変わっていた。
「?!これ…本当に夢?」
あまりのクオリティの高さに目を丸くした。
声がした方を見てみると、そこには大鎌を持った青年と拳銃を持った青年がいた。2人とも18,19歳ぐらいだ。
「僕達は暗殺者だろ!死体を片付けるまでが仕事だ!」
「はぁ〜。分かったよ!片付ければいいんだろ!つーか、目的のあいつは見つかったのか?」
「ため息をつきたいのはこっちだよ…。見つかったけど…青藍が早まって殺さなければもっと早くけりがついてたよ。」
と青年2人は話していた。
それを聞いていた私は…
(し、死体を片付ける??殺さなければ??どういうこと…?まさか…あの事件の犯人って……この2人?。)
私は2人の会話を聞いてそう思った。
華美は少し怖くなってきた。
どうやら2人には華美が見えていないらしい。
会話を聞いてから数秒後、急にまた華美の意識がはっきりしなくなっていった。
(あれ?また目の前が……待って…もう少しだけ……あと…すこし)
華美の意識は完全に途絶えた。
~現実~
現実ではお母さんがなかなか帰って来ない華美を心配していた。いつもなら17時ぐらいにはもう家に着いているのに、今は20時だ。
首切断事件のこともあって不安が限界値にまで達したお母さんは、まず鈴汝の家に電話した。
「もしもし、鈴汝ちゃん?華美の母です。」
「どうしたんですか?」
「華美って、そっちに行ってないかしら?まだ帰って来ていないのよ。」
「え…、いませんよ…。華美、まだ帰っていないんですか?!」
嫌な予感が的中した。
「え、ええ、いつもならもうとっくに家に着いているのに…。」
「そう言えば華美、寄りたいところがあるって部活が終わった後に言っていました。」
「寄りたいところ?どこだか分かる?」
「ごめんなさい、そこまでは……。」
この後鈴汝は、家族に華美がまだ家に帰っていないことを伝え、華美のお母さんと鈴汝の家族全員で手分けして華美を探した。
鈴汝は華美が朝のニュースについて気になっていたことを思い出し、事件があった路地裏は勿論、華美の家の近くの路地裏を探し尽くした。
そのおかげで華美は見つかった。
倒れていたことに鈴汝は驚いたが、すぐに皆を呼んで救急車で華美を病院まで運んだ。時計の針はもう22時をさしていた。
場面の移り変わりが激しくてすみません。