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「待て待て待て待て!早まるな!」
「黙れ」
「ティナ、あいつを下がらせてくれ!せめてアレクの見えないところに行くように言ってくれ!」
「かしこまりました!」
「そしてすぐに戻ってきてくれ!」
「はいっ!」
突然腰に挿した剣を握り、殺気を放ったアレクに対し、ディルは瞬時に反応して声を上げると共に駆け寄り、剣を抜かせないように前に立った。それと同時に、ティナは指示に従い黒髪の護衛のもとに駆けつけ、何が起こったのかわからない様子でいる護衛に声をかけ、説明する時間もないとその隣にいる護衛も巻き込んで後宮を出るように促した。隣にいた護衛が状況までは分からないものの、アレクの殺気の原因が黒髪の護衛にあると判断し、腕を掴んで引きずるようにして後宮を出て行った。
それでアレクが落ち着くわけでもなく、アレクとディルは小競り合いをしていた。
「邪魔をするな!」
「落ち着けって!勘違いかもしれないだろ」
「勘違いな訳があるか!邪魔をするならお前を斬るぞ!」
「冷静になれ!ユーシェ様も見てるんだぞ!」
「チッ……」
横目に呆然と立ち尽くすユーシェを確認し、アレクは自分を押さえ込んでいたディルを突き放した。
「アレク!」
「戻る」
「お、おい…」
「お前は来なくていい」
そう言うと、アレクは背を向け、立ち去った。
「陛下」
「……」
後宮の入り口で、護衛を追い出して戻ってきたティナとすれ違ったが、アレクは視線も合わせずに無言で立ち去って行く。あっという間の出来事に、ティナは頭を下げることも忘れ、呆然とそれを見送った。
「あの…、アレク様は…」
立ち尽くすティナとディルにゆっくり歩み寄ったユーシェは、状況が全く把握できずに混乱している様子だった。後ろに控える侍女も、どうしたものかとオロオロしている。
ティナはディルと目を合わせ、こちらもどうしたものかと困った顔をした。
「とりあえず、部屋に戻りましょうか。アレクは仕事を思い出したみたいだから」
「は、はい…」
「ティナ、ちょうどこれからお茶の時間だっただろう?」
「はい、そうでした。先に戻って準備して参ります」
ディルの号令に、ティナはユーシェに微笑みかけてからその場を去った。
「さぁユーシェ様、参りましょうか」
「…はい」
アレクの去った方を何度か振り返りながら、ユーシェはディルに従った。
何が起きているのかを、一番理解していないのは、ユーシェ本人だった。




