15-①:怨霊と女神
『怨霊テス・クリスタ、貴様をこれより成敗いたす』
「……キサマ、アノオンナダナ…イツモイツモジャマバカリシニキテイタ」
化け物は、心底憎々しげに赤い目をぎろりと女に向けた。
「ヤレルモノナラヤッテミヤガレエエエエエエ!!」
化け物は失った手を一瞬にして再生させると、女に向かって突き出した。それを、女は剣で薙ぎ払うと、跳躍した。狙う先は、化け物の目。女は化け物の右目に剣を突き立てた。
「ギャアアアアアア!!」
咆哮し身悶える化け物の首に、女はすかさず横薙ぎの一撃を放つ。飛んでいく首。しかし、切断面が増殖したかと思えば、すぐに新たな頭が生える。
『ちっ…!』
女は舌打ちすると、もう一度と剣を振りかぶった。頭から胴体を真っ二つに切り裂いた。しかし、すぐに断面から触手を伸ばし、失った半身を引きつけ再生する。
『さすがは2000年物の怨霊ね…』
女はそれでも、もう一度と化け物の胴体に横薙ぎに剣を振るう。上下半身が分離するが、下半身が黒い水に溶けて消えたかと思うと、上半身の断面から新たな下半身が生えた。
『こうなったら…』
女は一端化け物から距離を取ると、目を閉じた。自分は神とは言えど、今や人間の生と死―転生をつかさどっているだけで、怨霊を退治できるほどの力はない。しかも、数千年もの間、人間達に憑りつき続け、負の感情の力を蓄えてきた怨霊相手ならなおさらだ。
ただ、自分が無理でも、この世界の全能の神の力を借りれば何とかできるはず。女はすうっと息をつくと、イゼルダに呼びかける。
すると、女の体が金色に光始める。やがてその光が収まると、女は化け物の方に向き直り手を振った。
「…!!!」
化け物の足元から金色の鎖が伸び、体を拘束する。化け物は触手を出してそれを切ろうとするが、その触手すらも絡め取って、身動きできなくしていく。やがて地面を転がるだけになった化け物の前に、女は降り立った。
―さあ、これで
女は辛い心地がわき上がるのを無視するかのように目を閉じると、剣を握る手に力を入れた。
『待ってくれ…!』
『…?』