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The End of The World ~四国の猟犬~  作者: コロタン
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第4話 痕跡

「さてと、そろそろ良ぇんちゃいます?」 

 

 島に着いた翌日、今俺達は目的の港で待機中や。

 瀬崎の部隊の1時間後に上陸と言われとったけど、少しばかり問題発生でまだ動けん状況や・・・。

 俺は港の堤防の端から少しだけ顔を出し、周囲を確認して後ろを見た。

 そこでは、ボートでしゃがんどる玉置と永野が呆れた顔で俺を見とった。


 「あんたね・・・それ何回目?

 瀬崎一尉から、思いのほか奴等の数が多いから待機しててくれって言われたでしょう!」


 「鬼塚君、焦っても良い事ないよ?早く行きたいのは山々だけど、急いては事を仕損じるって言葉もあるからね・・・」


 2人に注意されて俺はボートに座りなおした・・・。

 別に焦っとる訳やないけど、時間があまり無いっちゅうのも事実や。

 俺等が遅れれば、それだけ井沢も生存者も危なくなってまう・・・。


 「瀬崎一尉からの連絡を待ちなさい・・・私達まで奴等の集団に囲まれたら、救出どころの話じゃないでしょ?」


 「解ってますって・・・ただ気になっただけやって。

 でも、それだけ奴等の数が多いんやったら、瀬崎一尉達は大丈夫なんかな・・・」


 「降りて戦う訳じゃないから大丈夫よ・・・1台に何かあったとしても、他がカバーできるようにしているからね。

 あんたは、瀬崎一尉の事よりも自分の心配しなさい・・・勝手に突っ走ってポカしたら許さないわよ?」


 玉置は俺をジト目で睨んできた・・・。

 流石にそんなポカはせんつもりや・・・油断は絶対にせん・・・。

 

 『こちら瀬崎、そっちは退屈して寝てないか?こっちはそろそろ大丈夫だ。

 港から離れたら教えてくれ・・・今おびき寄せた奴等をまた港に連れて行くからな』


 「了解です、そちらはどうです?」


 『よくもまぁこんなに集まったもんだと言いたいよ・・・お前らの健闘を祈る』


 玉置が瀬崎との通信を終えて立ち上がる。

 俺と永野も立ち上がって堤防に上った。


 「さて、行きましょう・・・ここから先は油断は禁物よ。

 奴等を発見した場合、出来るだけ戦闘は避けてやり過ごすわ・・・。

 まず、井沢さんが櫻木一尉と別れた現場に向かいましょう」


 そう言った玉置は、港の入り口に向かってゆっくりと歩きだす。

 玉置の背中には、井沢の鉈の片割れが担がれとる。

 もう片方は永野、デカいのは俺が担いどる・・・正直背中が重い。


 「井沢と兄さんが別れた現場ってこっから近いんか?」


 「えぇ、港を抜けた先にある倉庫の近くよ・・・。

 コンテナが並んでて視界が悪いらしいから気を付けて行くわよ」


 振り返って説明した玉置に、俺と永野は頷いて返事をした。

 玉置はそれを見て再度歩きだす。

 俺等はそのまま奴等と出会うことなく港の入り口までたどり着いた。


 「俺らには車は無いんやったよな?」


 港の入り口に着いて、俺は玉置に確認した。


 「そうよ・・・見落としをしないようにするためね。

 私達がゆっくり探索出来るように、瀬崎一尉の部隊に奴等を引きつけて貰っているのよ。

 結構広範囲に渡って走り回ってくれているから、少なくともB型はかなりの数が瀬崎一尉達の方に行ってるでしょうね」


 「なんで奴等の誘導にヘリを使わんかったんや?」


 「この港とその先の倉庫を抜けると、ちょっとした住宅地はあるけど、あとはビルや大きな建物が並ぶ街になっているのは聞いたわよね?

 そう言った場所だと、ヘリの場合、音が建物に反響してしまって奴等をうまく誘導出来ないのよ・・・。

 背の高い建物が無い住宅地とかなら、どの位置を飛んでも奴等の目にヘリが目につきやすいし、音もあまり反響しないから良いんだけど、こうも障害物が多いとそれも出来ないのよ・・・」


 玉置は、俺に説明をしながら通りを見て、安全を確認して先に進んだ。

 俺と永野もその後に続く。


 「瀬崎一尉様々だね・・・通りの先まで全く奴等の姿が無いよ」


 通りに出て周囲を見渡して、永野が安堵したように呟いた。

 確かに、通りには奴等の死体が何体か転がっとるだけで、動いとる奴はおらんようや。


 「まぁ、楽できるんは助かりますね」


 「いて貰っちゃ困るわよ・・・ただでさえ歩きなのに、奴等に囲まれたらたまったもんじゃないわ。

 まぁ、乗り物に乗って囲まれるのも勘弁だけどね・・・」


 玉置は俺と永野の会話を聞いてため息をついた。

 車で移動中に奴等に囲まれてしまえば、出られんくなってしまう・・・生きた人間なら車を動かせば轢かれんよう避けるし、降りてくるんを待っとっても意味がないと解れば諦める。

 せやけど、奴等は違う・・・避けんという事は轢き殺さなあかん。

 轢いてしまえば、奴等の肉片や血でタイヤが滑って結局立ち往生や・・・。

 それこそ戦車なんかのキャタピラでもなけりゃ逃げることは不可能に近い。

 それに、奴等が諦めるんを待つのも意味がない・・・目の前に獲物がおれば、いつまでもその場で待ち続ける。

 俺等が建物の内部におって、外から見えん限りは奴等が諦めることはまずないやろう。


 「さてと、あまり瀬崎一尉達を待たせるのも申し訳ないし、早くここから離れるわよ。

 櫻木一尉を保護したコンテナの所まで行ったら瀬崎一尉に連絡するわ」


 「了解、ほな行きましょ」


 俺と永野は玉置に頷いて通りを進み、櫻木を発見したというコンテナを目指した。







 「これが櫻木一尉のいたコンテナね・・・。

 ここから北に向かって奴等の死体が続いているから、死体の多い場所を進みましょう。

 私は瀬崎一尉に連絡するから、2人は周囲の警戒をお願い」


 俺等は港を出て10分ほどで櫻木を発見したコンテナの前に辿り着き、一通り周囲の確認をした。

 ここに来るまでの間に遭遇したのはA型が10体ほど、瀬崎達のおかげか、B型に遭遇することは無かった。

 遭遇したA型も、ばらけてくれとったおかげで難なくコンテナまでたどりついた。


 「何と言うか、こんだけ静かだと、井沢さんが消息を絶つ程危険な感じは全くしないよね・・・。

 まぁ、それも瀬崎一尉達のおかげなんだけどさ。

 鬼塚君、そっちはどう?何か見つかった?」


 10m程離れた場所で通りを見とった永野が俺に話しかけてくる。

 しっかり見とかんと玉置に怒られそうやけど、はっきり言って全く奴等の姿は確認出来ん。


 「こっちも何も無いですわ・・・折角新しい武器も貰ったいうのに、試す機会がないんが残念ですわ・・・。

 永野さん、ここにおっても暇やし俺はちっとばかし他も見て回ります」


 「了解、あまり遠くには行かないようにね」


 俺が肩をすくめて答えると、永野は苦笑して頷いた。

 俺は永野の反応を見たあと、自分の立っとった場所の隣にあったコンテナの裏に回った。


 「何やこれ・・・」


 俺がコンテナの裏に回ると、足元にメロンくらいの大きさの丸い物体が転がっとった・・・。

 それは、首から下の無い奴等の頭やった。

 その頭は、鉈かなんかで頭蓋骨を破壊されて中身が零れ落ちとった。

 

 「どういう事やこれは・・・」


 俺はその頭をつま先で突きながら周りを見て、ある疑問を覚えた。


 「あんたこんな所にいたの・・・ここには何も無いみたいだし先に行くわよ。

 瀬崎一尉達が港に戻ってくる前に移動しましょう・・・何?どうかした?」


 俺が見つけた頭部の周囲を見回しとると、後ろから玉置の声が聞こえて振り向いた。

 玉置は俺の行動に疑問を持ったのか、ゆっくりと近づいてくる。


 「いや・・・こいつ、どうやってここまで来たんやろって思てな・・・」


 玉置が傍に来るのを待って俺はもう一度転がっとる頭を見た。

 俺の感じた疑問・・・それは、この場所にあったんが頭だけやったってことや。

 大量の血と、いくつかの肉片はあるけど、胴体らしきものが見当たらん・・・。


 「確かに頭だけしかないわね・・・何かに潰されたのなら胴体の潰れた肉片があってもおかしくないけど、こんな狭いところに車が入れる訳はないしね・・・。

 首の断面も、何かで斬り飛ばされたと言うよりも引き千切られた感じだし・・・」


 玉置はしゃがみ込んでまじまじと転がった頭部を観察しとる・・・。


 「野犬か何かに食われたのかな・・・」


 玉置の肩越しに転がっとる頭部を見て、見なけりゃ良かった的な顔で呟いた。


 「それはどうやろな・・・確かに野犬の可能性もあるけど、ここまで綺麗に頭だけ残すとは思わんけどな」


 「頭蓋骨が硬くて食べるのを諦めたとか?」


 俺と永野は腕を組んで考え込む。


 「それなら、肋骨とかの胴体の骨も同じだと思うけど・・・ここには頭部以外には殆ど残ってないわよ?

 地面にはどこかに引き摺って行った跡も無いし、ここで何かあったのは間違いないみたいだけど・・・。

 まぁ、今はこれ以上考えててもらちが明かないわ・・・瀬崎一尉達が戻る前に早く先に行きましょう!」


 玉置はそう言って立ち上がると、俺と永野の背中を叩いて急かした。


 「せやな・・・んじゃまあ、とりあえずは北に向かうんやったっけ?」


 「えぇ、そっちの方に奴等の死体が転がってるみたいだし、井沢さんの発信機が見つかったのも北の方って聞いてるわ。

 見落としの無いように気を付けて進みましょう!」


 俺等はその場を離れ、北に向かった。

 頭部だけの死体が気になりはするけど、もしかしたらこれから先にも同じような死体を見つけるかもしれん・・・。

 あったならそん時考えれば良ぇし、何も無ければただの偶然ってことやろう。

 俺は気を取り直して玉置の後を追った。 






 「この先の角を曲がれば井沢さんの発信機を見つけた場所よ・・・。

 この前も一応は調べたらしいけど、見落としが無いかもう一度確認を・・・っ!?」


 角を曲がろうとした玉置は、慌てて壁に隠れた。

 すぐ後ろを走っとった俺は、玉置にぶつかりそうになりながらも、壁に手を着いて何とか耐えた・・・。


 「どうしたんすか姐さん・・・」


 俺が尋ねると、玉置はジェスチャーで角の先を指さした。

 壁から少しだけ顔を出して先を見ると、そこには20体ほどの奴等がユラユラ身体を揺らしながら立っとるのが見えた。


 「井沢さんの発信機のあった場所はあの先なんだけどね・・・。

 別の道から回り込んだとしても結局はあいつ等に見付かるし、ここは強行突破しかなさそうね・・・」


 「新武器を試す良ぇ機会やし、さくっと済ませて先進みましょ・・・」


 「永野二尉はB型がいた時のために援護をお願い・・・。

 まず、音を立てて奴等をおびき寄せるわ」


 俺は腰にぶら下げとったトンファーを両手に持って構える。

 玉置は右手に井沢の大鉈を持ち、道端に転がっとった空き缶を左手に持つ。

 俺等より少し離れて永野はサプレッサー付きの小銃を構えとる。


 「じゃあ行くわよ・・・」


 玉置はそう言うと、左手に持った空き缶を奴等の方に向かって放り投げた・・・。

 甲高い音が響いて空き缶が転がっていく。

 それに反応した奴等はゆっくりと振り返ると、音のした方に向かってゆっくりと歩きだした。


 「全部A型のようね・・・永野二尉はそのまま周囲の警戒をしつつ私達の援護を。

 鬼塚は自由にやりなさい・・・ただ、いくらA型だけだからって油断はしなさんなよ」


 「言われんでも解ってますって・・・」


 俺は念押ししてくる玉置に頷き、奴等に向かって走り出した。

 俺等に気付いた奴等は、ゆっくりと方向転換して俺等に向かってくる。

 俺は右側、玉置は左側に向かって奴等を分散させると、最初の1体に同時に攻撃を仕掛けた。

 金属製のトンファーで殴られた頭部がひしゃげ、中身が飛び散り、1体目がその場に崩れ落ちる。

 俺はそのまま狙いを2体目に切り替え、今度はグリップのスイッチを押しながら左手に持ったトンファーを回転させて横に薙ぎ払う。

 すると、2体目の近くにおった3体目の頭部にも同時に当たり、2体揃ってきりもみしながら横に倒れた。

 俺は、回転させたトンファーを元に戻すと同時に4体目の頭を殴り、崩れ落ちる前に胴体を蹴り飛ばして後続を牽制して距離を置く。


 「おぉ、なかなか使い勝手良ぇやないかこれ!ってあちゃー・・・」


 俺はそう呟きつつ両手に持ったトンファーを顔の前で構えてあることに気が付いた。

 ファイティングポーズをとると、トンファーの本体が邪魔をして視界が遮られて前が見えんくなってもうた・・・。


 「ちょっとあんた何してんのよ!?さっさとそっち片付けなさい!!」


 動きの止まった俺を見て、玉置が怒鳴る。

 玉置は井沢用に造られた重い鉈を両手で持ちながら振り回しとる・・・近づいたら巻き添えを食いそうや。


 「待ってくださいよ・・・今悩んどるんですから」


 俺は掴みかかろうとしてきた5体目に足を掛けてこけさせ、頭を踏み潰す。

 さて、どうしようか・・・。


 「しゃあない・・・慣れとらんけどこれで良ぇかな」


 俺は顔の前で構え取った左腕をだらりと下げ、腕全体を鞭のようにしならせて斜め下から敵の顔面めがけて素早くジャブを繰り出す。

 放ったジャブが6体目の顔面に当たりはしたが、しっかりとした手ごたえを得ることは出来んかった・・・。

 ジャブでよろけた6体目にストレートでとどめを刺し、7体目にもう一度ジャブを打ったが、やっぱししっくりこん・・・。

 結局7体目もそのまま右で殴り倒した。


 「うーん・・・やっぱし慣れとらんと難しいなぁ・・・。

 こんなんやったら練習しとったら良かったわ・・・」


 「ちょっと鬼塚!あんたさっきから何遊んでんのよ!?」


 トンファーを構えて何度もジャブを試し打ちしとったら、背中を玉置に蹴られて俺は盛大にこけた・・・。


 「痛いなぁ!何すんねん姐さん!?」


 「それはこっちのセリフだっての!こっちだって慣れない武器で大変なんだからしっかりしなさいよ!!

 私はあんたの面倒見るために居るんじゃないのよ!」


 俺は玉置に襟首を掴まれた。

 えらい剣幕や・・・まぁ、よそ見しとったのは俺やし言い返すんは筋違いやな・・・。

 襟首を掴まれたまま横目で周囲を見ると、永野が最後の1体を倒したところやった。

 永野にもえらい迷惑を掛けてしもうた・・・反省せないかんな。


 「・・・すんませんでした」


 「まったく、次やったら私があんたを殺すからね!」


 「もうしませんって!殺すとか物騒なこと言わんでくださいよ!」


 「まぁまぁ、2人とも落ち着いて・・・鬼塚君、何か気になる事でもあったのかい?」


 他に奴等がいないか周囲の確認を終えた永野が、俺と玉置の間に割って入って来た。

 永野は玉置の剣幕に冷や汗を流しながら俺に話を振って来た。


 「えぇ・・・さっき普通に構えた時、武器で目の前が隠れてもうて奴等が見えんくなったんですわ。

 それで、フリッカーを試してみたんですけどなかなか上手くいかんくてですね・・・」


 フリッカージャブ・・・目標へ直線的に素早く繰り出す通常のジャブとは違い、腕を下げたデトロイトスタイルで斜め下からスナップを聞かせて打ち込むジャブや。

 元々はアメリカの世界王座5階級制覇のプロボクサー、トーマス・ハーンズが多様しとったジャブや。

 フリッカージャブには俺が試したような遠くから腕全体をしならせて打ち込むもの。

 それと、前腕部のみで相手の手を数回はたいき、相手の注意を外側に向けるちゅう効果のあるのもある。

 前者はリーチのある人間向きで、後者はリーチが無くても使える。

 ちなみに、トーマス・ハーンズは前者を使っとったんやけど、両腕を広げた時のリーチは198cmやったらしい・・・井沢の身長よりも腕が長いとか脅威や。


 「フリッカージャブね・・・ボクシングにはあんまり詳しくないんだけど、ガードを下げるのって危なくない?」


 「まぁ、実際しならせて打つフリッカーは井沢みたいにリーチあってデカい奴が使った方が良ぇんですけどね・・・。

 奴等の攻撃は直線的でリズムも取りやすいし、オーソドックスなスタイルで視界を遮るよりは良ぇかなって思ったんですわ・・・

 ただ、スナップ利かせる分一撃の威力に劣るんが難点ですわ」


 俺はトンファーを腰に付けた留め具に戻してから永野にフリッカーを見せる。

 腕全体をしならせてスナップを利かせるため、風を切る音が響く。


 「斜め下からだから避けにくそうだね・・・」


 「まぁそれが利点ちゅう感じですわ・・・人間ってのは下からの攻撃には反応が遅れますんで。

 ただ、奴等の場合は反応が遅れるとかそんな事無いんであんまし意味無いんですけどね」


 俺が永野に説明しとると、俺達は玉置に耳を引っ張られた。


 「ほら、喋ってばっかりいないでさっさと探索するわよ!」


 「痛いですって姐さん!解ってますって!」


 「なんで俺まで・・・!?」


 「鬼塚、試すのは良いけど詰め所に着いてからにしなさい。

 まだ時間はあるとはいえ、早いうちに一番近い詰め所まで行かなきゃいけないんだから」


 玉置は俺達の耳を離して先に進む。

 

 「へいへい・・・で、どこら辺を探すんすか?」


 「あそこに奴等の死体の山が見えるでしょ?あの近くに井沢さんの発信機があったらしいわ」


 玉置の指さした方向を見ると、100m程先に大量の死体が転がっとるのが見える。

 そこまでにもいくつか転がっとるようや・・・。

 俺等は周囲を警戒しながら進み、死体の転がっとるところまで向かった。


 「おいおい・・・これをあいつ一人でやったんか・・・。

 こんなかにはもちろんB型も仰山おるんやろな・・・」


 目の前に転がっとる奴等の死体は30体近くある・・・ほぼすべての死体が頭をかち割られ、バラバラになっとる。

 そう、バラバラや・・・いくら何でも、これだけの数に囲まれとる状況で、その殆どをバラバラにするなんて事は不可能や。

 倒した後にそんなんするんも現実的やないし、恐らく井沢の後に何者かが死体をバラバラにしたんかもしれん・・・。


 「姐さん・・・ここの死体、さっきの頭だけの奴程やないけど、明らかにおかしいやんな」


 「そうね・・・井沢さんがこんな事するとは考えられないし、他の誰かがやったのか、それとも何者かに荒らされたか・・・。

 まさか共喰い・・・?でも、そんな話今まで聞いたことも無いし・・・」


 「2人とも、これって井沢さんのじゃないか!?」


 俺と玉置がバラバラになった奴等の死体を調べとると、壁際に積み重なった死体を調べとった永野が叫んだ。

 俺と玉置は急いで永野の元に走り、積み重ねられた死体の中にあるものを発見した・・・井沢の使っとった大鉈や。

 井沢の鉈は、積み重なった死体の中の1体の頭の半ばほどの所で折れとった・・・。


 「確かに、これは井沢さんの鉈だわ・・・恐らく、今までのダメージのせいで折れたのね」


 玉置が死体の頭から折れた鉈を引き抜き、まじまじと見る。

 鉈の刃には、刃こぼれと傷が無数に確認できる・・・。


 「井沢さん無事かな・・・」


 折れた鉈を見た永野が不安そうに俯いた。

 

 「ま、あいつなら大丈夫やろ・・・鉈は何本も持っとったし、1本折れたくらいやったら問題無いんちゃうかな」


 「そうね、ここから先にも奴等の死体が転がってるところを見ると、ここで戦った後もあの人はまだ生きていたってことよ。

 とりあえず、他にも何か無いかもう一度確認してから先に進みましょう」


 「何というか、2人ともやけにあっさりとしてるよね・・・」


 俺と玉置の言葉を聞いて永野が呆れた顔をしとる。

 

 「そんなん言ったかて、あの井沢やで?」


 「そうね、まぁあの人にとっては平常運転なんじゃない?

 心配ではあるけど、あの人がそう簡単に死ぬような人じゃないのは永野二尉だって知ってるでしょ?」


 「はぁ・・・何で俺の方が間違ってるような雰囲気なんだろう。

 2人の根拠のない自信が羨ましいよ・・・」


 俺等はしばらくその場で確認作業を続け、何も無い事を確認して死体の続く道をさらに突き進んだ。

 


 


 

 


 


 


 


 

 


 

 

 

 

 


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