第3話 懐かしの島
「この島も久しぶりやけど、3か月程しか経ってへんのにえらい変わりようやな・・・」
俺は、以前自分の適正試験を行った島に着いて港の変わりように驚いた・・・。
以前来た時はいかにも田舎の港っちゅう感じの場所やったのに、今では古い倉庫なんかはとり壊され、簡易ではあるものの、海自関連の施設が建ち並んどる。
「これでもまだ未完成らしいわよ・・・。
この島は海自の拠点として艦の補給、整備をするためにまだまだ必要な施設を建てる予定らしいわ。
私達陸自もこの島で補給なんかをする事になるし、最優先でインフラの整備を進めてるのよ。
街の方も医療施設とか優先させるべき所は終わったみたいだけど、それ以外はまだ途中みたいよ・・・」
俺が変わり果てた港をみて唖然としとると、迎えの車に荷物を載せとった玉置が戻ってきて説明してくれた。
「空自はどうするんや?てか、あんまし空自の人等と一緒に仕事した記憶が無いんやけど・・・」
「あぁ、空自はね・・・何と言うか、私達みたいに前線での任務は殆どないのよね・・・。
彼らの主な任務は警備と領空警戒なのよ。
あとは、陸自と海自の人員が足りない場合のヘルプね」
「領空警戒とかまだ必要なんか?」
俺が聞き返すと、玉置は呆れたように見てきた。
横で聞いとった永野も苦笑しとる・・・。
「あのね鬼塚・・・今世界で安全が確保されている国は現状では日本だけってことは知ってるわよね?
それは、この国が島国・・・4つの大きな島で出来ている国だからなのよ。
本州を隔離して、北海道・四国・九州の安全を確保することで全滅を防いだ・・・まぁ、そのせいで取り残された人達や亡くなった人達も大勢いるんだけど・・・。
ただ、他の国が全滅したかと言ったらそうじゃない・・・アメリカ、EU、ロシア、中国などの大国をはじめとした数か国は安全が確保された訳ではないけど、なんとか持ちこたえているわ・・・。
そう言った他の国が、安全な場所・・・この日本を狙ってくる可能性は非常に高いのよ。
まぁ、言わなくても解るでしょうけど、この国を囲んでいる2大国なんかは特にね・・・。
実際、すでにそう言った目的で領空・領海侵犯をした航空機や船舶を何度となく沈めているわ。
向こうも自国内の混乱で手一杯ってのもあって大規模なものはまだ無いけどね・・・。
2年前までは考えられなかった事だけど、こんな状況じゃ仕方のない事よ・・・もしそういった物に感染者が乗っていたら取り返しのつかないことになってしまうし、ここは私達の国だもの・・・。
今この国が唯一繋がりを持っているのはアメリカだけ・・・まぁ、それも持ちつ持たれつの状況だけどね。
武器弾薬、燃料を分けてもらう代わりに、まだ少量だけどワクチンを輸出しているわ。
ワクチンが出来るまでは、アメリカが敵に回ることも考えていたんだけど、何とか最悪の状況だけは避けることが出来たのは不幸中の幸いね・・・」
玉置は少し悲しそうな顔で説明してくれた・・・。
まぁ、俺もその気持ちは解らんくもない・・・国は違えど同じ人間や。
今までも色々とあったとは言え、見捨てるんはやっぱし気が引ける・・・。
それでも、奪われる訳にはいかん・・・。
「あー・・・すまんな姐さん、気を付けてはいるんやけど、今度からはもうちっと自分で考えてから聞くわ。
なんもかんも聞いとったら自分の為にもならんしな・・・」
俺が謝ると、玉置は小さく鼻で笑った。
「そうしてくれると助かるわね!井沢さんからも考えることを止めるなって言われたんでしょ?
あんたも死にたくなければ無い頭で頑張って考えなさい!」
「姐さん、無い頭は失礼やないか!?」
「まぁまぁ、2人とも早いとこ街に行きましょうよ・・・」
俺と玉置のやり取りを、遠巻きに見とった永野に促され、俺らは港を出て街に向かった。
「で、これからどないすんのや?」
港から車で10分ほど走り、俺達は街の役所の前に着いた。
ここは会議室なんかもあるため、自衛隊がそのまま利用しとる。
周辺の民家なんかは、今後施設等の建設予定地に建っとるものは取り壊し、それ以外はこの島に勤務する自衛官や医療関係者の社宅として再利用するようや。
この島に住んどった人等は皆死んでもうたけど、そんな人等の思い出が詰まった家を取り壊すんは正直申し訳ない・・・。
「とりあえず、これから会議室で明日の段取りの確認をすることになってるわ」
「段取りて俺等だけで行くんとちゃうんか?」
「ははは、流石にそんな無謀な真似はしないよ!」
俺が玉置に聞き返すと、隣におった永野が笑いながら俺の肩を叩いた。
「井沢さんと櫻木一尉ですらあんな事になっている土地よ?
流石に私達だけじゃどうしようもないわ・・・それこそ彼らの二の舞になるのは目に見えてる。
私達が動きやすいように陽動部隊を先行させてくれると言ってたから、陽動部隊との連携や段取りについて話し合いをするのよ」
俺は玉置の説明を聞きながら役所の会議室に向かった。
2階にある会議室に入ると、中には既に数名の隊員と指揮官らしい人等が待っとった。
「お、怖いもの知らずの3人がやっと来たか!」
俺らが会議室に入ると、真っ先に気付いた一人の自衛官が、椅子に座ったまま笑いながら俺等を見た。
「瀬崎一尉、君はもう少し言葉を選びなさい・・・。
3人には疲れているところ申し訳ないが、明日の作戦について話をしておきたい。
空いている席に自由に掛けてくれ。
鬼塚君と会うのは初めてだね・・・私はこの島を預かっている陸将の武田です。
四国の玄葉陸将から君の噂は聞いているよ・・・初めての本格的な任務がこのような形になってしまって申し訳ないが、どうか力を貸してほしい・・・」
自己紹介をした武田は、申し訳なさそうに笑いながら俺を見とる。
歳は50代中ごろほど、厳つい玄葉とは真逆の細身の男や。
「あぁ、別に構いませんよ・・・櫻木の兄さんには世話になっとりましたし、井沢とも約束しとることがあったんで・・・」
「井沢君と約束かね?」
「えぇ、嫁さん泣かしたらぶん殴って土下座させたるって言っとったんですわ」
俺が説明すると、武田は可笑しそうに笑った。
「あぁ、その約束は守らないといけないね・・・本当に彼とご家族にはお世話になりっぱなしで申し訳ないよ・・・。
今回の件も、彼は櫻木一尉を助けるために囮になってくれた・・・本来ならそれは我々の役目だというのにね・・・。
彼が消息を絶ってから今まで偵察機やドローンなどで周囲の捜索を行ってきたが、まだ手がかりすら掴めていない・・・だが、少なくとも奴等の中に彼らしき姿は見ていない。
隊の中には絶望的などと言っている者達もいるが、彼はまだ絶対に生きている・・・私はそう信じている。
彼と、そして彼のご家族の為にも、必ず見つけ出し救出しよう!」
武田の目には決意がやどっとる。
井沢は本当に自衛隊の連中から信頼されとるようや・・・。
「そう言やあ玉置、お前等が着くちょっと前に櫻木の意識が回復したって連絡あったぞ。
あの馬鹿、目が覚めて早々お前等の事聞いて自分も行くとか言ってたらしいぞ・・・まずは自分の怪我どうにかしろって話だよな!」
瀬崎は腕を組んで笑いながら言った。
この男、武田の前で態度がデカいと思うんは俺だけやろか・・・。
「あぁ、櫻木一尉なら言いそうですね・・・で、どうなりました?」
「よろしく頼むって言ってたらしいぞ」
「櫻木一尉は様態が落ち着き次第詳しく話を聞くことになっているよ・・・さて、そろそろ本題にはいろうか?」
武田はそう言って自分の席に戻って俺等を見渡す。
「まず、作戦開始は10:00から、まず瀬崎一尉率いる一個小隊が上陸し、LAVで周辺にいる奴等を3方向に引き離す。
玉置二尉達は瀬崎一尉達が上陸してから1時間後に上陸し、井沢君救出の為に手がかりを探してもらうことになる。
ただ、今回向かう場所は奴等の数が非常に多い・・・瀬崎一尉達が引き離しているからと言って油断は禁物だ・・・。
瀬崎一尉は、玉置二尉達が港を離れたら奴等を再度港に誘導してくれ・・・攻撃ヘリによる掃討を行う。
その後、瀬崎一尉には生存者の目撃された場所に向かってもらいたい。
今回向かう場所は、港を抜けるとビルなどが立ち並ぶ比較的大きな都市だ・・・周辺には広い空き地などが無く、救助するにもヘリを使うことが難しい場所だ。
恐らく車両での救助になるだろうから、ルートの確認を頼みたい。
玉置二尉、そちらの状況判断、指揮は君に一任する・・・ただ、危険だと判断した時には無理だけはしないでくれ。
井沢君救出は最優先事項ではあるが、君達までも同じような事態になってはいけないからね。
私からは以上だ・・・何か聞きたいことは無いかね?」
俺等は武田の言葉に顔を見合わせて特に聞きたい事が無い事を確認した。
「ふむ、まぁ何か気になる事があった時にはいつでも聞いてくれて構わないよ。
では、明日の準備が終えたらそれぞれゆっくりと休んでくれ」
武田が部屋を出るのを見送り、俺等も準備の為に外に出た。
「姐さん、俺の装備借りてっても良ぇか?」
「別に構わないけど、あんたは明日に備えてしっかり休みなさいよ・・・」
玉置は俺を見て呆れとる・・・。
「少しでも新しい武器に慣れとかんと、いざという時困るしなぁ・・・頼むわ姐さん」
「明日に響かなければ別に良いんじゃない?」
俺が玉置に手を合わせて頭を下げとると、永野が助け舟を出してくれた。
「わかったわよ・・・あんまり無茶やって備品を壊さないように気を付けてよ?
怒られるの私なんだから・・・」
「あざっす!まぁ、そこらへんは気を付けるわ!」
俺は預けとった荷物の中からトンファーとボウイナイフを貰って島にある体育館に移動向かった。
周りに何も無い広い場所の方が体を動かしやすいからや。
役所を出て徒歩5分、前来た時と変わっとるところを眺めながら歩いて体育館に着いた。
中を確認するといくつかの荷物は置いてあるようやけど、体を動かすのに十分なスペースがあり、中には誰もおらんかった。
「さてと、まずはトンファーだけでやってみよ・・・」
ケースの中からトンファーを2本取り出して構える・・・。
重量は片方3kg無いくらい、若干重いとは思うがそれだけ頑丈に出来とる証拠でもある。
「最初みたいに自分に当たらんようにせんとな・・・」
俺はグリップエンドのスイッチを押しながらトンファーを振り、回転させる。
初めてこれを試した時には、戻って来た勢いで脇腹を強打した・・・重い上に不意を突かれて結構な痛さやった。
「おっと危ない・・・先っちょが重い分、遠心力で持っていかれるな・・・」
俺は何度も同じ攻撃を繰り返しながら動きを確認する。
このトンファーは、殴った時に刺さらんように幅広に造られとる。
それ自体は便利な造りやけど、先端が重い分遠心力で暴れてまうんが難点や・・・。
「それにしても面白い武器だな!」
どれくらいの時間が経ったのか、しばらく同じ動きを集中して何度もやっとったら、不意に背後から声を掛けられた。
声のした方向を振り返ると、瀬崎が腕を組んで笑いながら俺を見とった。
「お疲れさんです・・・何か用でっか?」
「いや、特に用事がある訳では無いんだけどな!
明日の準備を済ませて適当にブラブラしてたら、体育館の中から声が聞こえてきて気になってな!」
集中しすぎて独り言を言っとったらしい・・・。
結構恥ずかしいわ・・・。
「もう準備終わったって、あまり持っていくもん無いんでっか?」
俺が照れ隠しに話題を変えると、瀬崎は体育館に設置されとる時計を指さした。
俺は時計を見て肩を落とした・・・。
俺が練習し始めてから3時間は経っとった・・・。
「集中するのは良いが、明日に備えて休んだ方が良いんじゃないか?」
「そうですね・・・やばいな、姐さんに叱られるわ・・・」
俺が頭を抱えると、瀬崎は面白そうに笑いだした。
「あいつには俺が言ってフォローしてやるよ!
それにしても、凄い集中力だな・・・俺が入って来たのに気付かなかったのか?」
「いや、全然気づかなかったですわ・・・」
瀬崎は俺の反応を見て苦笑した。
「さっきから見てて思ったんだが、本体が戻ってくる時に動きがぎこちないくないか?」
「いやぁ、本体が戻ってくる時の遠心力で脇腹に当たりそうになるんですわ・・・。
便利そうな武器やけど、なにぶん初めて使う武器やから勝手が解らんくてですね・・・」
「戻す時に、手首を内側に曲げれば良いんじゃないか?
それなら、多少遠心力で手首が返されても当たらないと思うんだが・・・どれ、ちょっと片方貸してみろ」
俺は瀬崎にトンファーの片方を渡して距離を取る。
振り回したトンファーに当たりたくないからや・・・。
「よっと・・・こんな感じでどうだ?
タイミングさえ合わせて慣れてくれば大丈夫なんじゃないか?
鬼塚君は確かボクサーだったって話だし、手首も強いだろ?」
「俺の事は呼び捨てで良ぇですよ・・・よっと!
おぉ、これなら良さそうやな!助言助かりましたわ!」
俺は瀬崎の見よう見まねで試してみたが、言われた通りにやれば脇腹に当たることは無かった。
これで地獄から解放や・・・。
「そいつは良かった!さて、そろそろ戻らんと飯の時間だ!
明日に備えて、たっぷり食ってたっぷり寝ろよ!」
瀬崎はそう言って手を振りながら体育館から出て行った。
俺もトンファーをケースにしまって体育館を出て宿舎に向かった。
「あんたどんだけ身体動かしてんのよ!」
宿舎に戻ると、入り口の前で玉置が仁王立ちして俺を待っとった・・・。
ほんまおっかない人や・・・これさえ無ければ美人なんやけどな。
「身体動かしとかんと落ち着かないんですわ・・・」
「瀬崎一尉からあまり怒るなって言われたからこれ以上言わないけど、あんまり無理して明日に響いたら私達も困るのよ・・・気を付けなさい!」
「わかっとりますって・・・で、永野さんはどうしたんでっか?」
「永野二尉には食堂で待ってもらってるわ。
明日の事も含めて色々と話しておきたいから先に席を取って貰ってるのよ」
「永野さんも待たせてもうたな・・・ほな、早う行きましょか」
俺は玉置に背中を小突かれながら食堂に向かった。
食堂に入って永野を探すと、俺等に気付いた永野が手を振っとんのが見えた。
「待たせてもうてすんませんでした・・・今日の晩飯は何ですかね?
今日は金曜やし、匂いからするとカレーですかね?」
「いやいや、気にしなくて良いよ。
君の予想通り、今日のメニューはカレーだね!流石海自のカレーは美味そうだよ!」
この島には海自と陸自がおるため、金曜日はカレーという事になっとるらしい・・・。
元々海自では土曜日の昼に食べとったらしいが、週休二日制になってから金曜日になったらしい。
厨房からはカレーの良ぇ匂いが漂ってくる。
「ほら、そんなとこに突っ立ってないで早く貰いに行くわよ!」
「そんな何度も叩かんでくださいよ!口で言うてくれれば解りますって!」
俺は玉置に頭をはたかれて自分のカレーを貰いに行った・・・。
周りにおった自衛官達は、俺を哀れんだ眼で見とる・・・誰か助けてくれんかな・・・。
俺と玉置は自分のカレーを持って永野の元に戻ると、話の前に夕飯を済ませた。
カレーは噂にたがわぬ美味さやった・・・これなら毎日でも良ぇかもしれん。
「さてと、食べ終わったし明日どうするか決めましょうか?」
先に食い終わっとった永野が、俺と玉置が食器を片付けるのを待って話をきりだした。
「まず、井沢さんは一人の場合にどう行動するかよね・・・」
「考えられる行動は3つ・・・1つ目は安全な場所で俺達が救助に来るのを待っている。
2つ目は移動手段を探し、南下して要塞化している陸自の基地に向かう。
3つ目はそのまま生存者の元に向かい、その人達と行動をともにする・・・考えられるのはそれくらいかな?」
玉置の言葉に、永野が答える。
「俺は、あいつなら3つ目を選ぶと思うわ・・・」
「まぁ、確かにあの人ならそうしそうではあるわね・・・とりあえず、何で3つ目だと思ったか聞いても良いかしら?」
俺の意見に玉置が聞き返してきた。
永野も俺を見て話し始めるのを待っとる。
俺は2人の反応を見つつさらに話を続けた・・・。
「あいつは・・・井沢なら、自分のやるべき事は必ずやり遂げる。
井沢は、生存者がおるのに自分の仕事をほっぽり出して逃げるような奴やない・・・。
自分には待っとる家族がおるのに、それが良ぇか悪いかは別として、あいつなら必ず生存者の助けになろうと動くと思う。
もし、俺があいつと同じような状況に置かれたとしてもそう判断するやろう。
理由は簡単や・・・まず、あいつは今発信機を持っとらん・・・安全な場所を見つけて救助を待っとっても、俺等が救助に来るかどうかも解らん状況で、一つの所に居続けるのは賢い選択とは思えん。
食料の問題もあるし、必ず何かしら移動せなあかんからや。
次に移動手段を見つけて南下するんも現実的やない・・・まず移動するとなると車になるけど、世界が変わったあの日から2年近く経っとるとなると、バッテリーが死んどる可能性が高い。
バッテリーはエンジンを掛る時に使うだけやなく、エンジンを切っとっても時計なんかのアクセサリーを動かすのにも使われとる。
それに、約2年の間には冬もある・・・冬場にはバッテリーが冷やされて電圧も落ちる・・・液温が低下して、中の希硫酸と鉛の化学反応が弱くなるんが原因や。
マニュアル車なら押し掛けっちゅう手もあるけど、一人でやるんはかなり厳しい・・・途中で奴等に見付かったら危険やし、ある程度押して加速せなあかんからや。
それに、車に乗るんやったら燃費の良ぇハイブリッド車一択になる・・・燃料を給油する回数が減ればそれだけ危険が減る・・・せやけど、マニュアルのハイブリッド車なんて俺の知る限りホンダのCR-Zくらいのもんや。
そう都合よく見つかるもんでも無いし、探すとなるとそれこそ奴等に見付かる可能性が高くなる。
よって、あいつの取るであろう行動は3つ目や。
あいつが今回受けた任務は生存者の説得および救出や・・・。
生存者の救出は俺等にとって最も重要な任務になる。
生存者と一緒におれば、時間は掛かっても必ず俺等が救助に行くと考えるやろう。
それに、生存者はこれまでの生活で心身ともに弱っとる可能性がある・・・あいつなら、少しでも生存者を安心させるために自分が戦うやろう。
これが俺の考えや・・・姐さんたちはどう思います?」
俺が言い終わると、玉置は意外そうに俺を見た・・・永野は拍手をしとる。
これはあれや・・・どうせ勘かなんかやと思って俺を馬鹿にしとったな。
「見事な推測だったよ・・・正直意外過ぎて明日が心配・・・」
「そうね・・・あんた明日は気を引き締めなさいよ?」
やっぱり馬鹿にしとったな・・・クソが!
「まぁ冗談はさておき、私もあんたの言う通りだと思うわ」
「鬼塚君、よくバッテリーの事とか知ってたね?何かそっち系のバイトか何かやってたのかい?」
玉置と永野は、俺が不機嫌そうにしとるのを見て話を切り替えた・・・。
覚えとけよお前等・・・この屈辱は忘れんで・・・。
「族やっとった時は車や単車いじるんが趣味やったからや・・・。
知り合いにも整備士がおったし、聞いたことがあったんや!」
俺が不機嫌そうに答えると、玉置達は苦笑した。
「さっきは悪かったわよ・・・」
ほんまに悪かったと思ったんか、玉置達が俺に頭を下げた。
「もう良ぇわ・・・俺やってな、井沢に言われて色々と考えるようにしとるんや。
あいつは、俺を巻き込んだことを後悔しとった・・・俺も仲間を巻き込みたくはないし、そのためには俺自身が死なんように、常に最善の行動が出来るようにと考えとる。
自分で言うのもなんやけど、ちょっと前までの俺と同じやと思っとったらあかんで・・・」
「そうね・・・確かに最近のあんたは変わったと思うわ。
井沢さんと会っても喧嘩しないしね!もっと前からこんなだったら良かったのにね・・・。
まぁ、何はともあれ明日は期待してるわよ?
明日はまず、井沢さんが休みそうな場所・・・消防団の詰め所とかを優先して探してみましょう。
もしかすると、まだ生存者と会えていない可能性もあるし、何かしら手がかりが見つかるかもしれないからね・・・2人もそれで良いかしら?」
玉置は俺に微笑むと、明日探すべき場所を提案して俺と永野を見る。
「それで良ぇんちゃう?」
「そうだね、あの人が拠点として使いそうな場所って言ったらそこくらいのもんだろうしね」
「じゃあ、予定も決まったしそろそろ休みましょう。
明日は装備の最終チェックもあるから早く起きなさいよ!
特に鬼塚、遅くまで起きてたら承知しないからね・・・」
玉置は俺に釘を刺して席を立った。
俺は軽く返事をして永野と一緒に食堂を出た。
今日は永野と同じ部屋や。
まぁ、明日起きれんかったら玉置にどやされるやろうから、さっさと寝よ・・・。
俺と永野は軽く風呂を済ませ、玉置の言いつけ通り夜更かしもせずそのまま深い眠りに落ちた。