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The End of The World ~四国の猟犬~  作者: コロタン
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第2話 新しい武器

櫻木の見舞いに行った翌日、俺はすぐに四国に戻って井沢救出のための準備に取り掛かった。

 まずは武器の調達や・・・自衛隊から支給されとる武器もいくつかあるんやけど、俺の戦闘スタイルにはどうもしっくり来ん・・・。

 基本的に俺も井沢も接近戦がメインやけど、自衛隊から支給されとるナイフやとメリケンから持ち替えなあかんのがネックや。

 出来れば、ナイフとメリケンが一体になっとるようなのが良ぇんやが・・・。


 「榊、ちょっとばかし出てくるわ」


 俺は職場で武器以外の物の準備をあらかた済ませ、手伝ってくれとった榊に外出することを伝えた。


 「良いっすけど、何か他に必要な物でもありました?」


 「あぁ、武器を探しに行こうかって思てな・・・」


 「いつものじゃ駄目なんすか?」


 「いつもので良ぇんやったら探しに行かんやろ・・・。

 お前、確か四国出身やんな?ここら辺でナイフやら売っとるとこ知らんか?」


 俺の質問に榊が考え込む。

 まぁ、戦闘にはあまり向いとらんしこいつに聞いてもあんまし意味無いとは思うが・・・。


 「流石に俺は知りませんけど、ナイフならうちにマニアが居ますよ?

 色んな形のナイフを100本近く持ってるとか自慢してるの聞きましたけど」


 榊から意外な答えが返ってきた。

 そんなん居るんやったら早めに聞いときゃ良かったわ・・・。


 「誰や?そいつに話聞いてみるわ」


 「3班の茂木ですよ。

 確か、今日は休みだったんで自宅に居るんじゃないっすかね?」


 「あぁ、あいつか・・・そんなら家調べてちょっと行ってくるわ」


 「じゃあ俺は他にも詳しいのいないか聞いときますね。

 茂木が居なかったら間に合わなくなるかもしれませんし」


 「あぁ、ほなあとは任せるわ」


 俺は榊に後を任せて事務所に行き、住所を調べて茂木の家に向かった。







 「ここやんな・・・すみません鬼塚言いますー、茂木さんのお宅で間違いないでしょうか?」


 俺は職場を出てから歩いて茂木の家に向かい、住所に載っとった家に着くと、インターホンを鳴らして外から声を掛けた。

 しばらくすると、慌てた様子の茂木が玄関を開けて出てきた。


 「兄貴、どうしました?・・・何か俺に用事ですか?

 俺、なんかやらかしましたかね?」


 出てきた茂木は不安そうに俺を見とる・・・。

 いくら俺が普段怒鳴っとるからって、こういう反応は傷つくわ・・・。


 「あぁ、別にお前が何かやったとかやないんや・・・ただ、お前ナイフを仰山持っとるんやろ?

 今度の任務に持っていけそうなんがあったら、売っとる店を教えて貰えんかなと思ってな・・・」


 「それなら上がってください!たぶん、兄貴の気に入るのもあると思いますよ!」


 茂木は、自分の趣味を俺が知っとったのが嬉しかったんか、上機嫌で俺を家の中に案内した。


 「ここが俺の部屋です・・・ちょっと散らかってますけど、待っててください。

 すぐに飲み物持ってきますよ!」


 「あぁ、別に飲み物とか気を遣わんで良ぇで?」


 「いやいや、結構量があるんで時間掛かるかもしれませんから!」


 茂木はそう言うと、俺が止めるのも聞かずに台所に向かっていった・・・。


 「しゃあない、中で待っとくか・・・」


 俺はため息をついて茂木の部屋に入って驚愕した・・・。

 壁のいたるところにナイフが飾ってあったんや・・・。


 「うわぁ・・・これは知らんで中に入ったら、茂木の頭ん中どうなっとんのか疑いたくなるな・・・」


 「兄貴、お待たせしました!どうです、ここに飾ってあるのは俺のコレクションの一部ですよ!

 で、今日はどういったナイフを探してるんですか?」


 飲み物を用意してきた茂木は、俺がナイフの数に面食らっとるのを見て笑顔で聞いてきた。

 めちゃくちゃ嬉しそうや・・・。


 「あぁ・・・壁に飾っとる中にもいくつか良さそうなん見付たんやけど、ナックルガードの付いたナイフで、お前のおすすめなんあるか?」


 「ちょっと待っててくださいね・・・」


 茂木は立ち上がると、壁に掛けてあるナックルガードの付いたナイフを5本と、押し入れからデカいケースを持ってきた・・・。

 まだあるんか・・・どんだけ金掛けとるんやこいつは・・・。


 「とりあえず、ナックルガードが付いてるのは全部で9本ありますね・・・兄貴的にはこの9本の中ではどれが良いですか?

 正直、全長と重さ以外は好みで良いと思いますよ?」


 「そうやな・・・出来れば頑丈で、ある程度重いのが良ぇんやけどな・・・。

 ナックルガードで奴等殴っても壊れんようなのが良ぇな・・・まぁ、お前のおすすめがあれば何でも良ぇで?」


 俺が希望を言うと、茂木は9本の中からゴツめのを3本俺の前に差し出した。


 「ここら辺なんかどうですかね?

 重量で言うならこのボウイナイフが良いと思います・・・全長480mmで肉厚なので重量はこの3本の中で一番重いですし頑丈です。

 ナックルガードもメリケンみたいになってるので奴等を殴るのに適してますが、重いので取り回しに難在りって感じですね・・・。

 そして、全長ならやっぱりマチェットですね・・・これは全長710mmでソウ付きです。

 これはソウが付いてるので、木やロープを切る時にも役立つので色々と用途があって便利です。

 ただ、このマチェットのハンドガードは奴等を殴るのにはあまり向いてないですね・・・頑丈ではありますけど、大き目でプラスチックなので強度が足りないかもしれません。

 最後はこのタクティカルナイフタイプですね・・・これは全長と重量は先程紹介した2本には劣りますけど、切味は他のと比べると段違いです。

 それに、軽いので取り回しも楽ですから、狭い路地なんかではかなり良いと思います・・・。

 ただ、全体的に薄い造りなのであまり無茶な使い方はやめた方が良いですね」


 茂木の説明を聞いて俺は唸った・・・どれも見た目、性能共に俺好みや。

 でも、使い勝手を考えると断然ボウイナイフや・・・マチェットは長すぎるし、タクティカルナイフは強度が気がかりや。


 「茂木、このボウイナイフのは何処で買うたん?良ければ売っとる店教えてくれへんか?」


 俺が尋ねると、茂木は渋い顔をした・・・。


 「いや、これは通販で買ったんですよ・・・こっちにも探せば似たようなのはあるとは思うんですけど、兄貴に時間があるなら探してみましょうか?」


 「そうか・・・ちょっと急ぎでな・・・今から探しても間に合わんかもしれんし今回は見送るかな。

 とりあえず、今後のためにも探しとってくれんか?」


 俺がそう言うと、茂木はボウイナイフを革製の鞘にしまって俺に差し出した・・・。


 「兄貴、これ使ってください・・・」


 「いやいや、これは壁に飾っとったやつやろ?

 わざわざ飾っとるって事は、気に入っとるって事やないんか?

 流石にそんなん貰うわけにはいかんわ・・・」


 俺は差し出されたナイフを茂木に返そうとしたが、受け取って貰えんかった・・・。


 「いえ、兄貴が必要だから探してるんですよね?

 俺が持ってても飾っとくだけですし、こいつがあることで兄貴が生きて帰って来てくれるんなら、その方が俺も嬉しいです!

 それに、俺嬉しかったんですよ・・・ナイフ集めが趣味って言うと皆引いちゃうんですけど、任務の為かもしれないけど、兄貴は俺の話を真面目に聞いてくれましたから・・・。

 ですから、これはそのお礼と思って受け取って貰えると嬉しいです!」


 茂木は寂しそうやけど、良ぇ笑顔や・・・ここまで言われたら、受け取らん方が失礼になりそうや。


 「茂木、ありがとうな・・・大事に使わせてもらうわ!」


 俺は茂木に頭を下げて礼を言い、その後しばらく茂木の話に付き合った。

 ナイフに賭ける茂木の情熱はすさまじく、殆ど頭には入らんかったけど、何だかんだ楽しい時間を過ごせたと思う・・・。

 他の仲間とも、こういった時間を作らんといかんなと改めて思った。





 俺が四国に戻って2日目、玄葉と玉置から連絡があった。

 上の連中から、井沢救出の許可を得ることが出来たらしい。

 まぁ、半ば脅しに近いやり方で説得したらしく、井沢救出という名目では最初で最後の作戦になる・・・。

 1回あれば十分やとは思うが、失敗は許されん・・・気い引き締めんといかん。

 連絡を貰って1日が過ぎ、俺は今日関東に向かう。

 玉置と永野は昼前にはこっちに着くと言っとったが、少し遅れとるようや・・・。

 玉置が面白いもんを持っていくと言っとったけど、何を持ってくるかは見てのお楽しみと笑いを堪えた声で言われた・・・。


 「あーほんま遅いなあの人等・・・それにしても何持ってくんのやろな・・・」


 俺は、茂木から貰ったナイフのナックルガードに指を通してクルクルと回して待った・・・。

 それを見て周りの人間は冷や汗を流しとるが、俺は構わず回し続けた。

 少しでも手に馴染ませときたかったってのもあるが、何より手持無沙汰っちゅうのが一番の理由や。


 「ちょっと・・・あんた何不良みたいな事してんのよ・・・」


 背後から声が聞こえ、俺はナイフを鞘にしまう。

 声がした方を振り返ると、呆れた表情の玉置が俺を見とった。


 「姐さん達が遅いんで暇しとったんですわ・・・。

 てか、なんなんすかその大荷物は・・・」


 俺は、玉置と永野を見て呆れてもうた・・・玉置は両手にデカいアタッシュケースを、永野は両手で一つの巨大なケースを抱えとる・・・。

 永野は汗だくになり、肩で息をしとる・・・。


 「ふふふ・・・これは、あんたと井沢さんの専用武器よ!」


 玉置は得意げにそう言うと、両手に持ったアタッシュケースを俺の前に下した。

 永野はケースを壁に立てかけてしゃがみ込んだ・・・相当重かったようや。


 「俺の武器でっか・・・なら、これいらんかったかな」


 俺は、腰の鞘にしまったボウイナイフに手を掛ける。

 茂木になんか悪い事したようで申し訳ない・・・。


 「あら、良いの持ってるわね・・・ナックルガード付きのボウイナイフとか珍しいじゃない?」


 「あぁ、うちの奴にナイフマニアがおって、そいつから貰ったんですわ・・・」


 ナイフを抜いて玉置に渡すと、玉置は面白そうに眺めとる。


 「ナックルガードの部分もかなり頑丈そうだし、これなら武器を持ち替えずに奴等を殴れそうだね!

 鬼塚君らしいチョイスで良い感じなんじゃない?」


 永野は玉置が持っとるナイフを見て笑いながら俺に話しかけてきた。

 

 「まぁ、それ目当てで買いに行こうかと思とったら、そいつが譲ってくれたんですわ」


 「良い仲間を持って良かったじゃない?」


 「それより、姐さん達が持ってきた俺専用武器ってどんなんや?」


 俺は、玉置の足元に置かれたアタッシュケースを見て尋ねた。

 すると、玉置が不敵に笑いだした・・・。

 なんか嫌な予感しかせぇへんのやけど・・・。


 「あんたの武器は、なかなか面白い仕様になってるわよ?

 名前は鎧通しって言ってたわ!」


 玉置はそう言うと、目の前にあるアタッシュケースの1つを開いて俺の前に差し出した。

 中には2対の武器が入っとった。

 50cm程の長さの棒の片方の端近くに、握りになるように垂直に棒が付けられている武器・・・トンファーや。

 まぁ、トンファーにしてはかなりゴツイんやけど・・・。

 てか、鎧通しって言えば短めの刀やった気がするんやけど・・・。


 「姐さん、これかなりゴツく見えるんやけど?

 それに、これのどこが鎧通しなんです?」


 「えぇ、片方2kgちょっとあるらしいわよ・・・持ってくるの大変だったんだから感謝しなさいよ!?

 まぁ、名前の由来についてはあとで説明してあげるわ!」


 俺は苦笑してケースの中から片方だけ手に持った。

 素材は金属が主らしく、持つと結構ずっしりとくる・・・。

 本体の部分は全長が50cm、幅が5cm、厚みが3cmの長方体のような形をしとる。

 両端には棘のようなパーツが3つ付いとって、殴る時には良さそうに見える。

 他にもいくつか突込みどころのある武器に仕上がっとるようや。


 「姐さん、これ何で持ち手にナックルガードが付いてんの?

 これやと回せないんちゃう?」


 そのトンファーの持ち手にメリケンのような形のナックルガードが付けられ、回して攻撃することは出来んようになっとった・・・。

 折角のトンファーも、攻撃方法が減るんやったらあまり使い勝手は良くなさそうに見える。


 「甘いわよ鬼塚・・・グリップエンドにスイッチが付いてるでしょ?

 それを押しながら振ってみなさい!」

 

 玉置に言われてグリップを見ると、確かにスイッチの様なもんが付いとった。

 俺はそれを親指で押し込んでトンファーを振ると、カチッとロックが外れるような音が響いてグリップの付け根から回転した・・・。


 「おぉ、なんやこれ!本体が回転する仕組みなんか!?・・・ってあ痛っ!!」


 俺はテンションが上がり過ぎて調子に乗り、戻って来たトンファーの本体が脇腹に直撃した・・・。

 2kgの金属の塊は痛すぎる・・・。


 「何やってんのよ・・・それは、ロックを解除すると本体が180°回転するように出来てるのよ。

 構造は簡単だから強度には問題ないわよ」


 玉置は蹲る俺を呆れたように見とる・・・。

 永野に至っては、腹を抱えて笑っとった・・・。


 「ほんま痛いなぁ・・・永野さん笑いすぎやで、あんたも食らってみるか?」


 「いや、俺は遠慮しとくよ・・・」


 永野は、俺に睨まれて慌てて首を振った。


 「それよりも姐さん、本体が回るんやったら別にナックルガードいらんくないですか?

 それと、さっきから気になっとったんですけど、本体の短い方にもナックルガードとグリップみたいなん付いてますよね?」


 俺がそう言うと、玉置がまた不敵な笑いを浮かべた・・・。

 なんなんや一体・・・そろそろこの展開にも飽きてきたわ・・・。


 「鬼塚、そのグリップを握ってナックルガードの人差し指の部分と、その反対側にあるスイッチを押しながら引き抜いてみなさい・・・」


 俺は言われるがままに本体側のグリップを掴んで引き抜いた・・・。

 すると、本体から怪しく光を反射する細身の刃が姿を現した。

 それは長さは30cm、幅が3cm、厚みは5mmちょっとの直刀やった・・・。

 俺はそれを見て言葉が出んかった・・・。


 「それこそが名前の由来よ!斬るのには向いてないけど、狭い路地で戦う際に刺して戦う事が可能になってるのよ!

 刀側はナックルガードが付いてるから殴ることも出来るし、本体側は楯としても使える上にグリップのナックルガードでメリケンとしても使うことが出来るわ!」


 得意げに説明している玉置はテンションが半端ない・・・まぁ、その気持ちは解らなくもない。

 俺も正直ワクワクしとるからな・・・。


 「・・・良ぇなこれ」


 俺は試しに素振りをしてみる・・・重さも長さも申し分無い。


 「あぁ、でもこれやと本格的に貰ったナイフがいらんくなってまうな・・・」


 「そうでもないんじゃない?さっきも言ったけど、その刀は突き刺すことを前提にしてるから斬るのには向いてないわ・・・でも、ボウイナイフなら斬るのに使えるし使い分ければ良いじゃない?」


 「せやな・・・無駄にならんようで良かったわ」


 俺は改めてボウイナイフを見る・・・折角俺の為にと貰ったもんやし、出来ればこいつも使っていきたい。


 「それとね、その構造を考えたのは井沢さんなのよ・・・。

 あんたも刃物とメリケンを使い分けるでしょ?だから、少しでも隙を無くせるように、生き残れるようにって井沢さんが色々と注文してたらしいのよ」


 俺は玉置の言葉を聞いて、あいつが以前言っとった言葉を思い出した・・・。

 あいつは『死なない事と死なせない事』それがこの仕事をする上で重要な事やと言っとった。

 あいつにとっての『死なせない事』の中には、俺の事も含まれとると知って驚いた・・・。

 そして、それと同時に嬉しくなった・・・。


 「ほんまにあいつは・・・人の事より自分の事を優先せえよって思うわ・・・せやけど、感謝はしとくわ」


 俺はトンファーを見て呟いた・・・玉置と永野はそれを優しく見守ってくれとった。


 「そういえば、井沢専用の武器も持って行くんか?」


 気恥しくなった俺は、慌てて話を変えた。


 「そりゃあ井沢さんは生きてるだろうし、武器は必要じゃない?」


 「まぁ、確かに必要やとは思うけど・・・永野さんが抱えとったんもあいつの武器なんか?」


 「ええ、まずはこっち・・・これは普段井沢さんが使ってる鉈をさらに大型化して、強度と重量を増したものね。

 これを造った連中は、名前を同田貫って言ってたわ・・・」


 玉置、トンファーの入っとったのの隣のケースを開けて中を見せた。

 中には、全長1m程の超大型の鉈が入っとった・・・こっちもナックルガードが付いとって、グリップエンドに大きな棘状の突起物がある。

 俺はそれを持って呆れてもうた・・・それはかなりの重量やった。


 「ちなみに、これの重量はどのくらいなんや?」


 「片方3kgよ・・・刃渡り70cm、幅5cm、厚み1cmで切味よりも破壊力重視らしいわ・・・」


 「やっぱりあいつはアホやな・・・」


 「そればっかりは私も同意するわ・・・」


 俺と玉置は呆れて苦笑した。


 「こっちはまだ凄いよ!」


 俺が鉈をしまうと、永野が壁に立てかけとった巨大なケースを運んできて床に置いた。

 ケースは幅と厚みは無いけどとにかく長かった・・・2m近くありそうや。


 「・・・姐さん、これなんなん?」


 俺はケースを開けて玉置に尋ねた。

 自分でも顔が引き攣っとるのが解る・・・。


 「見てのとおりよ・・・名前は野太刀だそうよ・・・」


 玉置は明後日の方を見とる・・・。

 俺は再度ケースの中身を見てため息をついた。

 ケースに入っとったのは、全長170cmはある巨大な剣やった・・・。

 刃だけで140cmくらいはある・・・幅は10cm程、厚みは1.5cmと言ったところやろうか。

 重量が気になるところや・・・。

 俺は唾をのんで柄を握って持ち上げた・・・重い・・・。


 「これ何kgあるん?」


 「7kgって言ってたわ・・・重量自体はそんなに無いけど、長い分重く感じるのよ」


 「こんなん振れるんかな・・・」


 「なんでも右手が使えるようになってから、長さ180cm、重量8kgのバーベルシャフトを振ってトレーニングしてたらしいわよ・・・」


 俺も現役やった時にはスレッジハンマーでタイヤを叩くトレーニングをやったりしとったけど、それは上から叩きつけるやり方やった・・・せやけど、これで奴等と戦う場合は横に振らなあかん。

 横に振るとなると、その重量は直接肩や腰に掛かる。

 昔の日本や西洋ではこんな感じの刀剣があったらしいが、基本的にそれらも上段から重量で断ち切るのが前提や・・・。

 いくら範囲が広くて強かろうが、俺は絶対に使いたくない武器や。


 「俺も持ち上げて振ろうとしたら腰が悲鳴をあげたよ・・・」


 永野は腰を擦りながら泣きそうな声で呟いた・・・普通そうなるんは解りそうなもんなんやけどな。


 「まぁ、あの人なら大丈夫でしょう・・・」


 「せやな、俺等の知ったこっちゃないな・・・」


 俺はケースを閉めてため息をついた・・・出発前からなんか疲れてもうた・・・。


 「さてと、じゃあそろそろ行きましょうか?」


 「あぁ、あんまりもたついとったら井沢見っけるんも面倒になるしな・・・」


 「あの人の事だから、どんどん先に行きそうだしね・・・」


 俺らは最初のテンションは何処へやら、あいつの武器を見て自分の常識が間違っとるんか疑問に思いながら、井沢捜索のため、俺が適正試験を受けた島に向かった。

 


 

 





















 


 

 




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