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The End of The World ~四国の猟犬~  作者: コロタン
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第1話 約束

「あー、終わらへん・・・なんなんやこの量は・・・」


 俺は今、職場の自室の机の上に突っ伏しとる・・・目の前にはうんざりする程の書類の山がある・・・。

 もともと頭使う仕事が性に合わん俺からすると、はっきり言って拷問や・・・。


 「兄貴、追加持ってきました・・・って、何やってんすか?

 寝てる暇あったら手を動かしてくださいよ!兄貴が終わんないと俺の仕事も進まないんすよ!?」


 俺の部屋に入ってくるなり、補佐をやっとる榊が耳元で怒鳴って来た・・・。

 榊の手には、これまた吐き気がしそうな量の書類が抱えられとる・・・。


 「やかましい!俺やって少しでも早う終わらせよう思て頑張ってんねん!

 仕事の合間に少しくらい休んだってバチは当たらんのとちゃうか!?」


 俺は椅子から立ち上がって榊に怒鳴り返した・・・。

 正直、井沢と同じ仕事するようになれば事務作業は減ると思ってなめとった・・・。

 逆に、報告書やら装備の申請やら自分でせなあかん分余計に事務作業が増えてもうた・・・。

 任務の報告や装備の申請なんかは、自分の事やしせなあかんのは解る・・・せやけど、なんもかんも書類を提出せんでも良ぇと思うんやが・・・。

 これが普通の出勤日で、給料が出るならまだやりがいもあるんやけど、俺は今日は休み返上で出てきとる・・・やる気が出えへんのもしょうがない。


 「兄貴、そんなん言ってても終わらないっすよ・・・。

 井沢さんなんて兄貴よりも大変なのに、事務作業もしっかりやってるんすからね!

 兄貴もこれからさらに任務で忙しくなるなら、事務作業もこの比じゃないっすよ!?」


 俺は榊に言われて椅子に座りなおし、背もたれにもたれ掛かって天井を見上げた・・・。


 「井沢か・・・あいつホンマになんなんやろな・・・あれで元サラリーマンとか信じられんわ」


 井沢・・・俺にとってはまぁ先輩みたいなもんや。

 これまで井沢は、北海道・四国・九州にある組織の中で、唯一自衛隊と一緒に救助作戦なんかに参加しとった。

 背が高く、細身やがしっかりと筋肉が付いとるし何より戦い慣れしとる男や・・・。

 俺の誤解で、つい最近まで井沢とは顔を合わせば喧嘩するような間柄やったけど、誤解が解けてからはアドバイスを貰ったりと良好な関係にはなったと思う。

 俺にとっての目標・・・越えなあかん男や。


 「人は見かけによらないって言いますからね・・・まぁ、兄貴は見た目通りっすけどね。

 それより、そろそろ休憩終わりにしてくれると嬉しいんすけどね・・・」


 「あーもう、わかったわかった!ホンマにしつこいなお前は・・・」


 榊に注意され、俺は仕方なく書類の束を手に取った・・・。

 俺が作業を再開してしばらくすると、部屋の扉をノックされた。

 

 「入って良ぇでー」


 俺が返事をすると、女性職員が遠慮がちに部屋をのぞいてきた。


 「局長・・・陸自の玄葉陸将からお電話が入ってます」


 「んあ?玄葉さんからか・・・あの人から俺に直接電話が来るんは珍しいな・・・」


 「なんでも急ぎの用事だそうですよ」


 「了解、あんがとな」


 俺は女性職員に軽く手を振って受話器を取った。


 「お待たせしました、なんや珍しいですね陸将から俺に電話て・・・」


 『あぁ、鬼塚君久しぶりだね・・・』


 受話器から聞こえてくる玄葉の声は、何となく元気がない・・・。

 

 「どないかしはったんでっか?」


 俺が尋ねると、玄葉はしばらく押し黙った・・・。

 言葉を選んどるような感じや。


 『鬼塚君は、今井沢君が関東で任務に就いているのは知っているね?』


 「えぇ、俺にはまだ早いっちゅうてあいつが行くことになったんでしたよね?」


 『あぁ・・・その井沢君がだね・・・』


 玄葉はまたもや言い淀んだ・・・。


 「一体なんなんすか・・・いつもの陸将らしくないやないですか?」


 俺が急かすと、玄葉は電話口で深呼吸をした・・・。

 

 『井沢君が、任務中に消息を絶った・・・同行していた櫻木一尉も意識不明の重体だ・・・』


 「嘘や無いんですか・・・?エイプリルフールには遅すぎますよ?」


 俺は、玄葉の言葉を信じることが出来んかった・・・なんせあの井沢と櫻木が2人そろってヘマをするっちゅう事が信じられんかった。


 『嘘だったならどれだけ良いか・・・井沢君は、怪我をした櫻木一尉を守るため、一人で囮になったようだ・・・。

 櫻木一尉の意識がまだ戻っていないため確認は出来ていないが、同行していた他の隊員達の証言からすると、彼の性格上、」囮になった可能性が非常に高いようだ』


 「捜しには行かんかったんですか・・・?」


 俺は焦る気持ちを堪えて聞き返した・・・。

 井沢には家族がおる・・・あいつが死んだら、あいつの嫁さんと子供達が残されてしまう・・・。

 俺は、そこが気がかりやった・・・。


 『発信機を頼りに櫻木一尉はなんとか救助出来たが、井沢君の発信機は櫻木君を発見した場所から少し離れた場所に落ちていたらしい・・・。

 恐らく、奴等との戦闘中に落ちてしまったと思われる・・・。

 井沢君の発信機を発見した周辺をくまなく捜索したが、彼の手掛かりになるようなものは発見できなかったそうだ・・・』


 玄葉の声は悔しさからか震えとる・・・この人もなんだかんだ井沢の事を信頼し、いつも気にかけとった。

 周りに心配掛けてほんまアホな男やあいつは・・・。


 「周囲に手がかりが無かったっちゅう事は、あいつはまだ生きとるんですよね?

 まぁ、あいつが奴等に後れを取るなんて事は絶対に無い思います・・・捜索は続けるんでっか?」


 『我々はもちろんそのつもりだ・・・だが、上がどう判断するかが問題だ・・・』


 「そんなん、あいつ見捨てたらお前等を関東に放り込む言うとけば良ぇんですよ・・・。

 また誰かを見捨てるんやったら、今後はお前等だけでどうにかせぇって言うてやれば良ぇ!」


 受話器から、玄葉の笑い声が聞こえてくる・・・。

 俺の言葉を聞いて少しは元気が出たようや。


 『我々も出来る限り食い下がるつもりだ・・・鬼塚君には、また何か進展があったら連絡するよ』


 「了解です・・・俺も櫻木の兄さんの様子見に行ってみますわ。

 兄さんは今どこに入院しとるんですか?」


 『九州の基地近くの病院に移送されているはずだよ・・・結構危ない状態だったらしくてね、いつ意識を取り戻すかも分からない状態らしい』


 「まぁ、行くだけ行ってみますわ・・・ほなまた・・・」


 俺は受話器を置いて大きなため息をついた。

 榊が俺を心配そうに見とる・・・。


 「兄貴、井沢さんなんかあったんすか・・・?」


 「あいつ、任務でしくじりよった・・・行方不明になっとるらしい。

 櫻木の兄さんが怪我して、守るために囮になったってことまでは解っとるらしいけど、詳しい事は兄さんの意識が戻ってからやないと何とも言えんて言うとった・・・。

 ホンマあのアホわ!嫁さん泣かすような事すなって言うたばっかやないか!!」


 俺は書き損じた書類の束を丸めて力任せにゴミ箱に投げ捨てた。


 「大丈夫なんすよね・・・?」


 「あいつがそんなんで死ぬ訳ないやろ!・・・榊、しばらくこっち頼んで良ぇか?

 ちっとばかし兄さんの様子見てくるわ・・・もしかすると、俺にお呼びが掛かるかもしれんし、兄さんが起きとったら少しでも話聞いときたいんや」


 「わかりました・・・こっちは任せてください。

 ただ、終わったらしっかりと仕事して貰いますからね!」


 榊はため息をついて頷くと、俺を指さして言いよった・・・帰ってくんのが嫌になって来た。


 「まぁ、早いとこ終わってくれることを願っとくわ・・・」


 俺は、書類の束を榊に渡して部屋を出た。

 今は昼過ぎ、これから準備して飛行機で行けば夕方までには向こうに着けるやろ・・・。







 俺は支局を出てすぐに準備をして、何とかその日のうちに九州までやって来た。

 

 「はぁ、何とか最終便に間に合って良かったわ・・・。

 さてと、こっから病院のあるとこまではバスで2時間か・・・姐さんに連絡して迎えに来てもらっとけば良かったかな・・・」


 バス停で時刻表を確認し、俺はバスが来るまでの間空港の周辺を散策した。

 今まで何度か九州には来とっても、ゆっくりと散策したことが無かった分新鮮な気分や・・・。

 俺がしばらく周辺を歩いとると、後ろから車のクラクションが聞こえて振り向いた。

 クラクションを鳴らしたのは自衛隊の車両やったらしく、俺の目の前まで来ると停車した。

 運転席には永野二尉が乗っ取った・・・。


 「やぁ、この間ぶりだね鬼塚君!玄葉陸将から、君がこっちに来るだろうから迎えに行ってあげてくれって連絡を貰ったんだ。

 いつ来るのか聞こうと思って君の所に連絡したら、榊君がもう九州に向かったって言ったから慌てて準備したよ・・・。

 いやぁ、行き違いにならなくて良かったよ・・・」


 永野は疲れ切ったように項垂れとる・・・。


 「助かりますわ・・・早いとこ病院に行きたいとは思っとったんですけど、バスが来るまでまだ掛かりそうやったし有り難いですわ!」


 俺は永野に礼を言って助手席に乗り込んだ。


 「どういたしまして・・・それより、井沢さんの事は聞いたかい?」


 俺がシートベルトを締めるのを待って車を走らせた永野は、複雑そうな表情で聞いてきた。


 「陸将から聞きましたわ・・・永野さんは今回は一緒やなかったんですか?」


 「あぁ、最近は君と一緒に行動することが多いからね・・・今回は行かなかったんだよ」


 永野は寂しそうに笑った・・・。

 この人も井沢とは仲が良ぇみたいやし、心配なんやろな・・・。


 「はぁ・・・あいつが下手うつとか、今回のはかなり危ない任務やったんですか?」


 「そうだね・・・元々、奴等の数が多い事は解っていたんだ・・・。

 ただ、偵察機やドローンでの映像ではA型かB型かの判断が付けられなくてね・・・実際に行ってた隊員2人の話では、B型の数が今までの比じゃないらしい。

 彼等も、井沢さんと櫻木一尉を逃がすためにしばらく奴等の足止めをしたらしいんだけど、100や200じゃ済まなかったって言ってたよ。

 恐らく、彼等が確認した以上のB型がまだまだいるだろう・・・それにあの地域には要救助者がいるのもわかってるし、彼らの元にどうやって辿り着くかも問題だね」


 「生き残っとる人達は、良く今まで生き残って来れましたね・・・」

 

 俺は、永野の話を聞いて素直に感心した・・・B型は、10体くらいまでなら俺1人でもなんとか対処できる。

 せやけど、その地域で生き残っとる人達は、その10倍以上のB型がはびこる場所で今まで生き抜いてきた。

 それは並大抵の苦労やないやろう・・・。


 「そうだね・・・だからこそ、彼らを助けに行きたかったんだけどね。

 まさか、B型がそれほど多いなんて思いもしなかったらしいよ・・・。

 今までなら、4人で十分対処出来ていたんだ・・・それが、まさかこれほど増殖しているなんてね・・・」


 ハンドルを握る手に力を込めた永野は、悔しそうに歯を食いしばった・・・。

 

 「まぁ、あいつらの事はまだ解ってない事も多いようやし、常に気を引き締めていかんとなとは思いますね・・・。

 悠長に構えとったら犠牲者が増えるのも事実やし、その場その場でしっかり対処せなあかんですね・・・。

 それより、兄さんの様子はどうなんでっか?」


 俺は悔しそうにしとる永野に櫻木の話題を振った。

 解らんもんをぐだぐだ悩んどっても埒が明かんからや・・・。


 「あぁ、櫻木一尉も結構危ない状態だったみたいだよ・・・。

 右鎖骨、右上腕骨、右足尺骨の骨折と、腹部裂傷でね・・・発見があと少し遅れていたら、失血死していたかもって言ってたよ。

 まぁ手術は無事に終わったんだけど、なかなか意識が戻らないらしくてね・・・」


 「さいでっか・・・早う目が覚めてくれたら良ぇんですけどね・・・」


 「そうだね、あの人が意識不明とか似合わないよね・・・」


 永野はそう言って苦笑した・・・。






 

 「はぁ、やっと着いた・・・」


 永野は駐車場に車を停めてため息をついた。

 空港を出て2時間、永野は休まず車を運転しとったし疲れもするやろう。


 「永野さん、おかげで助かりましたわ・・・」


 「別に構わないよ・・・どの道様子を見に来るつもりだったからね」


 俺達は車を降りて院内に入って櫻木の病室に向かった。

 櫻木の病室の前に着くと、中から声が聞こえてきた・・・。

 目が覚めたんやろか?


 「失礼します・・・なんや姐さんおったんでっか」


 「あら、久しぶりね鬼塚・・・永野二尉も来たのね」


 俺等が中に入ると、玉置の他に2人知らんのがおった・・・若い女と、まだ小学生くらいの女の子や。

 2人は、俺と永野を見て頭を下げた。

 目が赤くなっとるところを見ると、泣いとったようや・・・。


 「そちらの2人はどちらさんでっか?」


 「あんたは初めて会うんだったわね、こちらの2人は井沢さんのご家族・・・奥様の美希さんと、娘さんの千枝ちゃんよ。

 櫻木一尉の事を心配して様子を見に来てくれたの・・・」


 この2人が井沢の家族か・・・あいつが自慢するだけあって偉いべっぴんやな。

 それにしても、自分の旦那が行方不明になったっちゅうのに人の事を心配するなんて出来た嫁さんや・・・。


 「初めまして、井沢の妻の美希です・・・この度は主人がご心配をおかけして申し訳ございません・・・」


 井沢の嫁は俺に深々と頭を下げる・・・。

 なんちゅうか居心地が悪い・・・辛いんは自分達のはずやのに、周りに気を使い過ぎとるのがいたたまれん。


 「あぁ、気にせんで良ぇよ・・・俺もあいつには世話んなったしな。

 それより、あんたらは大丈夫なんか?」


 「はい・・・夫が心配をかけるのはいつもの事ですから・・・」


 井沢の嫁は弱々しく笑った・・・。

 娘の方は俯いたまま泣くのを堪えとる・・・。


 「ほんまあいつは・・・こんな良ぇ嫁さんと可愛い娘悲しませてからに!」


 俺は井沢の娘の前にしゃがんで頭を撫でた。

 井沢の娘は少し驚いて俺の顔を見た。


 「嬢ちゃん、良ぇか?嬢ちゃんのお父ちゃんは絶対に生きとるよ・・・。

 あいつはこんなんじゃ絶対に死なへん・・・今回も行く前に死なへんって約束したんやろ?」


 井沢の娘は、泣きそうなんを堪えて力強く頷いた・・・涙ぐんだ眼には力が籠っとる。

 井沢は任務の前には、必ず生きて帰ると約束するって言っとった・・・。

 それがあいつにとってのジンクスなんやろう。

 だからこそ絶対に生きて帰る・・・家族を残して死んだりせぇへんって言っとった。


 「お嬢ちゃん・・・お父ちゃんはな、俺が唯一今のままじゃ敵わへんって思った男や。

 俺も腕っぷしには自信はあるけど、お父ちゃんは俺よりも強い・・・そして約束は守る男やと思っとる。

 せやから、今回も絶対に帰ってくる・・・信じて待ってられるか?」


 俺の言葉に、井沢の娘は再度頷いた・・・。


 「良ぇ子や!お嬢ちゃんは強いな、それでこそあいつの娘や!!

 お嬢ちゃん、俺と約束や・・・お父ちゃんは俺が絶対に連れて帰って来る!

 駄々こねたらぶん殴って首に縄掛けてでも連れて帰って来たるわ!」


 俺は井沢の娘の頭を撫でて小指を立てる・・・指切りや。

 井沢の娘は、子供らしい細く小さな小指を俺の指に絡める。

 こんな良ぇ子をこれ以上悲しませたらあかん・・・俺はそう自分に言い聞かせた。


 「あんたも待っとき、あんたの旦那は俺が連れて帰ってきたるからな・・・」


 「はい・・・ありがとうございます・・・」


 井沢の嫁は涙を流して俺に頭を下げた・・・。

 もう後戻りは出来ん・・・あいつは家族との約束は守ると言っとった。

 あいつがそうなら、俺は女子供との約束は絶対に守る・・・それが俺の矜持や。


 「はぁ・・・あんたはまたそんな軽々しく・・・」


 玉置が俺を見てため息をつく・・・。

 まぁ、その気持ちは解らんでもないけどな。


 「なんや姐さん・・・姐さんはあいつが生きとるとは思ってへんのか?」


 「はぁ?そんな訳ないでしょう・・・井沢さんが簡単に死ぬような人に見える?」


 玉置は俺の言葉を聞いて呆れたように言い放った・・・これはこれで酷いような気もせんではない。


 「姐さん、どのくらいで準備出来る?

 どうせ色々と手をまわしとるんやろ?」


 「あら、あんたにしては鋭いわね・・・。

 海自の酒井二佐や田尻一佐、陸自はうちの佐藤一佐をはじめ幹部全員、それと玄葉陸将にも話をしてるわ。

 5日・・・いえ、3日以内にはなんとしても連絡入れるわ。

 私にとって、井沢さんは命の恩人だし借りは返さないと気持ち悪いしね!

 上が渋るようなら命令違反だろうが何としても行くわよ!!」


 玉置は拳を握って怪しい笑顔で仁王立ちしとる・・・。

 こんなんが無ければ美人やのにとは思うけど、絶対に言わへん・・・言ったら殺される。


 「もちろん永野さんも行くやんな?」


 俺が話を振ると、永野は慌てて自分を指さした。


 「お、俺も!?はぁ・・・まぁ良いよ。

 井沢さんには俺もお世話になってるし、君と玉置二尉だけだと何しでかすか分からないからね・・・」


 永野も仕方なさそうに笑いながら頷いた。

 

 「皆さん・・・夫の為にありがとうございます・・・!」


 「玉置さん、永野さん、鬼塚さん・・・お父さんをよろしくお願いします・・・」


 井沢の嫁と娘は、俺達に頭を下げる。

 あいつの自慢の家族・・・良ぇ嫁さんと、出来た娘や。

 自分たちが辛くても、他人を気遣える人間てのはそうはおらん・・・何としてもあいつを見つけ出さないかん。

 この2人にはあいつが必要や・・・。


 「ほな、あんまりここに居っても兄さんがゆっくり休めんし、俺はそろそろ帰るわ。

 姐さん、連絡まっとるからな!

 お嬢ちゃん達も早う帰って休んどき、あいつのことは俺らに任せてくれたら良ぇからな!

 ほな、永野さん行きましょか?」


 俺は永野と一緒に櫻木の病室を出た。

 結局櫻木は目を覚まさんかったけど、井沢の家族と会うことが出来た・・・。

 今日はこっちに泊まって、明日朝一で四国に戻ろう。

 向こうに着いたら姐さんから連絡があるまで自分で出来る準備は済ませとこう。

 俺は今後の予定を立てつつ永野の運転する車で病院を離れた。


  


 



 


 


 

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