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青春エトセトラ  作者: 羽柴 歌穂
第1章
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12.恋する警察官

 昴 side


 そんな話をしてから2年。

 俺は未だにあの時の返事を健斗さんにできないでいる。


 あれから何か劇的なことがあって健斗さんへの気持ちに気づいた。


 なんてことはなく、本当に些細な日常的な会話をしている時にあぁ俺、健斗さんの事が好きだ。


 この気持ちは恋なんだ......って、ストンとパズルのピースが埋まるみたいに落ちてきた。


 1度自覚してしまえば自分の中で折り合いをつけるのは早くて、ふとした瞬間、ちょっとした健斗さんの言葉や態度で俺の心は健斗さんが好きって気持ちで埋め尽くされる。



 そうやって自分の健斗さんへの恋心を自覚してから直ぐに返事をすれば良かったんだけども、自分からあの話を掘り返すのが何だかとても気恥ずかしくて、まごついていたらもう2年が経った。

 経ってしまっていた。

 ここまでくると本当に自分から切り出すだなんてできなくて、それと同時にもし健斗さんの気持ちが俺に向かなくなっていたらどうしようだなんて不安も出てきて、けれどそんな俺の不安を知ってか知らずか



「なぁ昴。」

「どうかしました?健斗さん。」

「返事をもらってもいいか。」

「返事?」

「あーその、2年前の。」

「あ」


 だなんて、ずっと返事を言わない俺に痺れを切らした健斗さんの口からその話題出た。

 そうやって話を振られてさっきまで普通に動いていた心臓が早鐘を打つように動き出す。


「待つって言ったけどよ、最近のお前の表情とか行動とか見てると俺の勘違いじゃなけりゃお前も俺と同じ気持ちだって思うんだけど違うか?それともやっぱ俺の勘違いか?」


 ずるい聞き方だと思った。

 けど、この人をこんな風にしているのは自分なんだって事実がどうしようもなく嬉しくて体の底から好きだって気持ちが溢れて来た。


「......です。」

「昴?」


 勇気を出して放った言葉は自分が思っているよりもか細くて目の前の人には伝わらなかったみたいだ。

 だからもう1度深く息を吸いこんで、俯いていた顔をばっと上げ大きな声で


「健斗さんのことそういう意味でちゃんと好きです!!」


 と言った。


「その、俺、何か気恥ずかしくて…健斗さんのこと待たせてるから早く言わなきゃって気持ちとでも今更言ってもう健斗さんは俺のこと好きじゃなかったらって考えると不安で。ごめんなさい。」


 そう言いながら健斗さんの反応を見るのが怖くて目をそらしてしまう。

 けれどそんな俺の言葉に何の反応も無い健斗さんに不安になり


「けん、とさ」


 呼びかけようとしたら痛いくらいの強さで健斗さんに抱きしめられていた。


 何だか俺、健斗さんに抱きしめられてばっかだ。


「すんっげー嬉しい。」


 そう耳元でぽつりと言った健斗さんに「俺もです、待たせてすみません。」という言葉は最後まで口にすることが出来なかった。


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