4.恋する警察官
昴 side
「おっ、不良少年発見~、」
「!? 」
俺と健斗さんが出会ったのは俺がまだ小学生だった頃。
行くあても、家に居場所もなく一人公園のベンチに座っていたら突然そんな言葉と共に声をかけられた。
「オラ、ガキんちょが何でこんな時間に公園にいるんだ。ガキはけーれけーれ。」
「......」
「あ?無視か、態度悪いがきだな~。」
当時から健斗さんはちょっと人より人相が悪く、ガキだった俺からしたら警察官と言われるよりヤクザって言われた方が納得するレベルだった。
「た、態度悪いのはそっちだろ。それに知らない人と話したらダメだっておばあちゃんが言ってたもん!!」
「あー?どっから見てもお巡りさんのカッコイイー兄ちゃんじゃねーか。」
「おまわりさんのコスプレした変態かもしれない。」
「はー!?今時のガキはそんな事まで考えんのか、屁理屈こねくり回したような自論だな。」
「......」
「あー…お、あったあった。」
「?」
「おら、これで俺様がおまわりさんだってちゃんと証明できんだろ。」
「何これ。」
「警察手帳ってんだ、本物のお巡りさんは皆これ持ってんの。」
「......にせものじゃなくて?」
その言葉に手帳と健斗さんの顔をまじまじ見ていたら再び名前を尋ねられる。
「ちっげーよ!疑り深い奴だな、たくっ俺は橘健斗。ガキ、お前の名前は?」
「......すばる。」
だから小さな声で俺は自分の名前を言ったのだ。
「すばるか、いい名前だな!」
そう言ってニカッなんて擬音がハマる笑顔で言った健斗さんの顔が当時の俺にはとても眩しくて、直視出来なくて目を逸らした。
そう、これが俺と俺のヒーローの出会い。
「何でこんな公園にいたんだ?もう22時だからガキが出歩いていい時間じゃねーんだけど。お前父さんや母さんはどうした。」
「......おとうさんはいない、おかあさんは今日大事な仕事があるからあんたは外の公園にでも行ってきなさいって言って僕のこと家からだしたの、だから公園にいた。」
「あっそ。」
俺の言葉に一瞬顔を歪めた健斗さんはそれ以上詳しいことを追求してくるわけでもなく黙ってしまった。
そうやって黙ってしまった健斗さんに自ら話しかける話題なんてあるはずもなく俺はただ街灯をぼーっと見つめる。
そうして数分経った後、突然舌打ちをしたと思ったら健斗さんが頭をガシガシと掻きながら
「ガキ、お前いつもこの時間こんなところいんのか?」
と聞いてきた。
「おかあさんが仕事の時はここにきてる。」
から、素直にそう応えた俺に
「ふーん、よし!じゃあこれからは俺がお前の話し相手になってやろう。」
「え?」
なんて言うものだから突然の言葉に俺は戸惑ってしまう。
「流石に小学生のガキんちょが一人こんな夜の公園にいるってのを知っちまったら放っておくわけにもいかねーしな!」
「いや、いいよ......仕事しなよ。」
「ハハハ、ガキが遠慮すんなって!」
「遠慮じゃないし......ていうかさっきからガキガキ言うけど僕はもう小学6年生だし来年の春には中学生だから。」
「は~?んなもん俺から見たら充分ガキだよガキ。」
「じゃあそう言うあんたは何歳なわけ?随分若そうだけど。」
「あ?23だけど。」
「まだまだ新米警官じゃん。」
「うるっせ、口の減らないガキだな。」
そう言いながらも笑う健斗さんに変な人だなんて思ったのは内緒だ。
そして、そんなやり取りをしてから数日後。
あの人はやってきた。
「うわっ、本当に来た。」
「んだ、そのうわって。」
「不良警察官だ」
本当にやってきた彼に内心、嬉しいようなむず痒いような気持ちになった事を表に出さぬよう表面上は嫌そうな呆れたような顔をして可愛げの無い事を言った俺に健斗さんは頭を軽く小突いてくるから「警官が子供に暴力奮っていいわけ」と再び可愛げの無い事を言ってしまう。
そんな俺を「生意気な口を聞く奴はこうしてやる」なんて言いながら後ろから羽交い締めにして頭をワシャワシャ撫でくり回された。




