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青春エトセトラ  作者: 羽柴 歌穂
第1章
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64.恋する幼馴染

「「「雅也先輩、深月/みっちゃん先輩、卒業おめでとうございます!」」」

「サンキュ!」

「3人ともありがとう。」


 卒業式を終えた雅也先輩と、深月先輩を部室に迎え入れて、それぞれの定位置に座る。


 こうして5人揃うのは久しぶりで、なんだか懐かしい、そんな気持ちになるのはやっぱり俺自身この2人の先輩方がいない部室を見て寂しいと感じていたからなんだろうな……

 何て考えていれば「あっ」と、颯希が声を上げてそのまま言葉を続けた。



「そうそう、雅也先輩もみっちゃん先輩も第一志望校受かったんですよね?おめでとうございます。」

「ギリギリだったけどな~深月のスパルタのおかげで何とか合格できたぜ。」

「雅也ってば別に頭の出来が悪いわけじゃないのに勉強しないからどんどん成績落ちるタイプのバカだったからね、詰め込めば何とかなったてよかったよかった。」

「めちゃくちゃバカにされてんのはわかってっけど今回ばかりは何も言い返せねー。」


 そんな2人のやり取りに思わず颯希と顔を合わせて思わず笑ってしまう。

 そんな俺達の心の声を代弁するかのようにヒロ先輩が口を開いた。


「2人のそのやり取り見るのも久しぶりな気がしますけど全然変わってませんねー。」

「そりゃあな、たった数ヶ月なわけだしそんな簡単に変わりゃしねーだろ。」

「はは、確かに。」

「それにしても雅也先輩が教師目指してたなんて驚きました。」

「それ周りから散々言われ続けてっけどそんなに驚くことか?」

「まぁ確かに雅也って人に教えるってタイプじゃないもんね。」

「わかります、何か感覚でこうしてこうやんだよとか言ってそう……」


 そう言う深月先輩とヒロ先輩の言葉に颯希と2人思わず頷いてしまう。


「お前らな~。」

「いや、でも生徒に人気は出そうですよね。」

「確かに、親しみやすさはありますしね。」

「颯希!奏汰!!お前らは良い奴だなー。うりゃうりゃ。」

「わっ」


 俺達の言葉に嬉しそうに破顔した雅也先輩に思いっきり頭を撫でられて頭を左右に揺すられる。


 この感覚も久しぶりだなって言うか、本当にこの人力加減ってもんが無い!!


 そのままされるがままになっていれば


「ほーら、その辺にしときなよ、奏汰ならまだしも颯希は繊細なんだから。」


 と、深月先輩からストップがかかった。



 いやいや、俺ならまだしもって何すか!?


 なんてツッコみたい衝動はぐっと飲み込んで雅也先輩から解放された俺は今度は深月先輩の方に話題を振った。


「でも俺的には深月先輩が心理学専攻するってのもちょっと驚きましたけどね。」

「へーどうして?」

「いや、何つーか深月先輩って文学系にいきそうだなってなんとなく思ってて。」

「んー確かに小説を読むのは好きだし実際そっちにいってもいいかなとも思ったんだけどさ心理学の方がほんの少しだけ自分の中で学んでみたい気持ちが大きかったんだ。」

「やっぱり自分がその時学びたいって思う気持ちを一番に考えなきゃですよね~。」



 深月先輩の言葉に同調するようにヒロ先輩が言ったその言葉に「そうそう。」と、雅也先輩も大きく頷く。


「ま、奏汰や颯希はまだ後2年あるしね。」

「いや、でも2年なんてあっと言う間だぞ。」

「確かに俺も気が付いたら最高学年ですからね。」


 そうやってわいわい騒いでいればぽつりと


「でもこれで本当に雅也先輩とみっちゃん先輩は卒業しちゃって校内ですれ違うこともなくなるんですよね……」


 と、呟いた。

 そんな颯希に対し、ぽん、と肩を軽く叩いて


「まぁ大学生になってもどっか遠くに行くわけじゃねーし、時々遊びにくっからよ!」


 と、笑顔で言った雅也先輩に続いて


「そうそう、そんなしんみりした顔しないでほら、元気出して。俺達は卒業するけど今度は新入生が入ってきて颯希や奏汰は先輩になるんだからさ。」


 と深月先輩が言う。

 その言葉に小さく頷いた俺達の目の前で「その通り!」と、ヒロ先輩が右手をずずいっと突き出して更に言葉を続けた。


「て言うか、忘れてるかもだけど雅也先輩と深月先輩が抜けたから今年の新入生は最低でも2人確保しないと再び廃部の危機だかんな。」



 そう、にっこり笑うヒロ先輩の表情に若干頬を引きつらせながら思わず「あいあいさ―」と答えていた。


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