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青春エトセトラ  作者: 羽柴 歌穂
第1章
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番外編《それぞれの大晦日1》

 side.裕

「「お疲れ様でしたー!」」

「いやー大量大量。」

「目当てのもの全部ゲット出来て良かったねー。」

「はい、後は通販頼みです。」

「多少送料がかかっても妥協するくらいなら買うよね。」

「ですね。いやぁ、それにしても本当に助かりました。まさか売り子をして頂けるなんて思っていなかったので、本当にありがとうございました。ハルギツネさん、いえ、陽子さん。」

「なーに、水臭いこと言ってくれちゃってるの、私とメガヤン君じゃ無かった、裕君の仲じゃない。」


 そう言って目の前の彼女はニカッと笑う。

 その笑顔が今頃受験勉強に四苦八苦しているであろう先輩の顔と重なってしまって思わずくすりと笑いが零れた。


「ほーんと、初めてのオフ会で裕君と会った時はまさかその2週間後に弟の部活の後輩として再会することになるなんて思いもしてなかったよ。もうあれから1年経つんだねぇ。」

「俺も驚きましたよ。まさか有名レイヤーであるハルギツネさんが雅也先輩のお姉様だったなんて、本当に世間って狭いですねー。」

「いやいや、それを言うなら私こそ幼馴染で話を書かせたら間違いなく萌える作品を作りあげるメガヤン先生が弟の後輩でしかも現役の高校生なんてどこの漫画だよって思わず突っ込んだもん。あ!ていうか、新作のあれ、もしかして、もしかしなくてもこないだ家に来た幼馴染ズが元だったりするの?」


 そう言ってキラキラと目を輝かせて聞いてくる陽子さんに思わず俺の口角も上がる。


「あ、やっぱり分かっちゃいました?実は多少ネタの参考にさせて貰ってます。」

「やっぱりか~!いやぁメガヤン先生の作品にしてはくっつく速度が遅いなーって感じてたのよ!あー、でもそうかそうか、で、あれってどれくらい実話なわけ?」

「まぁそこはプライバシーの問題もあるのでノーコメントで許してください。」

「だー!まぁそうよねーいいわ、こっちで勝手に妄想しとくから。」


 そうやって陽子さんと2人でワイワイ話していればピロンと通知を告げる音が陽子さんの携帯から鳴った。


「あ、ごめんね裕くん、ちょっとこの後他のフォロワーさんから年越しの飲み会に誘われてて……」

「何ですかそれ、めちゃくちゃ羨ましいです。」

「裕君も成人したら誘うからその時は一緒に盛り上がろ。」

「早く成人して~。」

「あはは、じゃあ本当にごめんね。」

「大丈夫ですよ、俺もこの後兄さんと会う予定なんで。」

「お兄さんって龍先生だよね?ほんと、それも驚きよ……。また今度ゆっくりオフ会しよ、今度は他の地方で誘えなかったメンバーも誘うからさ。」

「はい、是非!」

「じゃあ裕くん、またね。もうあと少ししかないけど良いお年を!」

「陽子さんも飲み会楽しんできてください!良いお年を!」


 そうやって別れたちょうど良いタイミングで俺の携帯から着信音が鳴った。


『あ、もしもしひろ~?今どこ。』

「駅前のコンビニ前だけど。」

『おけ、ちょっと待っててね。』

「んー。」


 そんな会話をした数十秒後


「あ!いたいた、裕~。」

「よっ。」

「よっ、じゃ無いよ。あーもう、何でこんな人多いの?全く、みんな大晦日くらい外に出歩かないで家でまったり過ごしてればいいのに。」

「兄ちゃんこそ家で原稿しなくて良かったの?」

「原稿のことはいいの!今年も終わる前に折角だから可愛い、可愛い弟に会っておこうと思ってね。」

「わ、やめれ。」


 そう言ってわしわし頭を撫でる兄ちゃんの手を思わず払い除ける。


「もー、照れちゃって!可愛い奴。」

「照れてないし。て言うか元気そうで何よりだよ。」

「え、なになに?兄ちゃんの心配してくれてたの?」

「そのノリちょっとウザイよ。」

「ひどっ!」


 本気でショックを受けたような顔をする兄ちゃんにぶはっと吐き出しながら冗談だってと言えばまたすぐに顔を輝かせる。

 そして、あ!と何かを思い出したかのように口を開いた。


「そいや健斗、文化祭に行ったんだってなー。久しぶりに裕に会ったって言ってたわ。」

「あー来てたね。」


 その名前を出されて露骨に嫌な顔をすればそんな顔してたら可愛い顔が台無しだぞーと眉間をつつかれる。


「そんな事より!」

「ん?」

「今年もどうせ家には帰ってこないんでしょ。」

「んーまぁ、ね。母さんには悪いけど……」


 そう言って若干顔を曇らせた兄ちゃんの額を今度は俺が小突いてやる。


「って。」

「そんな顔するくらいなら帰って来ればいいのに。親父だって多分もう別に……」

「裕、気を使わせてごめんな。母さんにもよろしく言っといて。」


 そう言いながら俺の頭を優しく撫でる兄ちゃんの顔に俺はこれ以上何も言えなくなって黙ってしまう。


「ま、そのうち、な。」

「意地っ張り。」

「仕方が無いでしょーが。」

「兄ちゃん……。」

「ん?」

「無理して体調崩したりとかしないでよ。」

「はいはい。」


 じゃあご飯でも行こっか。と言いながら歩き出す兄ちゃんの後ろで小さく「ほんと、意地っ張り。」兄ちゃんも父さんも後に続く言葉は心の中でだけ呟いた。

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