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青春エトセトラ  作者: 羽柴 歌穂
第1章
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50.恋する幼馴染

「おっす、後輩共―元気かー。」

「お手伝いに来たよー。」

「今日はよろしくねー。」


 そう言ってOBの先輩方がやってきた。


「あ、匠海先輩、碧葉先輩、夏向先輩こんにちはー。」

「こちらこそ今日はよろしくお願いします。」

「「「よろしくお願いします」」」

「おうよ!任せとけ!」

「久しぶりのお祭りだからね、はりきっちゃうよ~。」

「二人ともあんまり羽目を外しすぎないようにね。」


 そんな先輩達のやり取りを見てやっぱりどこか既視感があるよな……なんてぼんやり思っていればきっと同じことを考えているのであろう颯希と目が合い、二人して小さく笑った。


「じゃあ今日も気合入れて頑張るぞー!」


 と言う部長の掛け声にそれぞれ返事を返して文化祭2日目は幕を開けたのであった。




「おっす、奏汰来てやったぞ。」

「健兄?!」

「なかなか似合ってんじゃん。」

「あー、健くんだ!」

「おー、颯希!お前も可愛い格好してんなー。」


 そう言いながら教室に入ってきた健兄に俺は目を白黒させる。

 そんな俺に構うことなく颯希に案内されるがままに健兄は部室に足を踏み入れるので、頭に浮かんだ疑問をとりあえずぶつけていく。


「は、何で、え、てか健兄に伝えてないし、仕事はどうしたんだよ。」

「ん?今日は休み。そんでもって俺はここの卒業生だぜ、文化祭の日程くらい覚えてるっつーの。それに叔母さん達が行けないから代わりに奏汰と颯希の写真撮って来いって頼まれて、な!」


 と言うや否やどこから取り出したのかこちらにカメラを向け1枚2枚と連続でシャッターを押す。


 咄嗟の事に反応が遅れた俺や颯希の姿はそのまま健兄が持ってきたカメラの中に納まった。



「はは、良い顔。」

「っ~。突然カメラ撮るの止めろよ健兄!」

「んだよ、写真の1枚2枚でうるさい奴だなー。別にいいだろ、減るもんじゃねーんだし。」

「減るよ!俺の精神力が確実に減ってくよ!!」


 そう、やいのやいの言っていれば健兄の後ろに人がいることに今更ながら気が付いた。

 俺と同じようにその人物に気付いた颯希が俺が口を開くより先に言葉を紡いだ。


「ねえねえ健くん。その子、誰?」

「んぁ?おー、そうだそうだ。今日は叔母さんに頼まれて写真を撮りにきたのもそうだけど、お前らにこいつを紹介したくてな。ほら、挨拶。」


 そう、健兄に前に押し出された人物は俯いて、長い前髪に片目が隠れているせいであまり表情が見えなかった。


「ほーら。」

「……村上昴です。」


 健兄に促されるまま小さくぽつりと言った名前に聞き覚えはなく、俺と颯希はお互い顔を見合わせる。

 そんな俺たちに小さく笑い、村上昴と名乗った目の前の人物の頭を乱暴に撫でながら健兄が口を開く。


「こいつさ、来年この高校通うことなるからま、お前らの後輩だな。仲良くしてやってくれ。」

「えっと、健兄との関係は……?」


 俺が素直に思った疑問を口にした瞬間隣ではっと息を吸った颯希が


「もしかして……健くんの子供!?」


 なんて言うからぽかんと軽く頭を叩く。


「ばっかか!こんな大きい子供が健兄にいてたまるかよ。」

「ったぁ~。何さ、ちょっとした冗談じゃんか。何も叩かなくてもいいんじゃない、そうちゃんの腕力ゴリラ!」

「もう一発殴って欲しいみたいだな。」

「わーごめんなさい、ごめんなさい~。」


 そう言って謝る颯希にもう一発お見舞いしてやろうかと拳を軽く握りしめた瞬間、名前を呼ばれた。


「颯希?奏汰?何駄弁ってんだー??って、げっ。」

「んぁ?お前……ひろ、か?」

「何であんたがここに居るわけ。」

「おいおい随分な言い方だなー。従兄弟の学校の文化祭に来ちゃ行けないわけ?」

「は!?従兄弟、誰の……」

「えっと、俺の従兄弟なんですけど。」

「奏汰の従兄弟ぉ?……あー、言われてみれば確かに似てる。」


 そう言って俺と健兄を交互に見比べるヒロ先輩の眉間にはしわが寄っていて、こんな表情をする先輩は初めて見たな……なんて思ってしまう。


 いつもはどこか余裕のあるヒロ先輩の余裕ない姿レアだよな……


 って、そんな事より!


「え、ヒロ先輩と健兄って知り合いなんすか!?」

「あー、昔ちょっと……」

「んだぁ、お前こいつらに何も言ってねえのか。」

「あんたは黙ってろ!」

「相変わらずだな~。て言うか随分変わったな。いや、戻った、のか?最初全然分からなかったわ。」

「あーもううるさい、うるさいうるさーい!とにかく!!余計な事言う前にさっさと出てけ!!!」

「はぁ?こっちは客だぞ客!」

「ぐっ……く、くれぐれも変な事吹き込むなよ!奏汰と颯希も余計なことは聞かないように、いいね。」


 そう笑うヒロ先輩の表情は笑顔なのに目が笑っておらず、背後にはブリザードが吹き荒れている幻覚まで見えて俺と颯希は勢いよく頷いたのであった。


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