4.恋する幼馴染
「松永奏汰君、ちょっと来てくれるかな?」
昨日、運動部の先輩方からの猛勧誘を自慢の足で何とか逃げ切り家に帰った俺を「わーそうちゃんが生きて帰ってきたー!」と迎えた颯希にうるせぇと小さく言い明日も同じような事が起こったらどうすっかな…と考え登校した次の日今度は生徒会長直々に呼び出しを受けた。
「うす。」
「え、そうちゃん?」
心配そうに俺の顔を見る颯希の額に軽くデコピンをして「大丈夫だから、先に帰ってろ」と言うと「ううん、俺教室で待ってる!」と颯希が答えるもんだからわしゃわしゃと頭を撫で回し俺は生徒会長の後ろをついていく。
「急に呼び出してごめんね。」
「いえ、」
颯希には大丈夫と言ったものの内心では俺なにかしたか?やっぱり昨日の騒動が何か悪かったのか?と考えるのを止められない。
そんな気持ちが顔に出ていたのだろう。
急に生徒会長が笑いだし言った。
「ふっ、そんな心配そうな顔をしなくても大丈夫だよ。」
「あ、はい!」
「ほら、リラックスリラックス。」
そう言って深呼吸をして見せる生徒会長に倣って俺も深呼吸を一つ。
「落ち着いたかい?」
「え、ま、まぁ。」
「あぁ挨拶がまだだったね、僕は生徒会長の工藤深月。と言っても入学式の時も全校生徒の前で挨拶させてもらったから覚えてくれてたら嬉しいんだけど…」
「大丈夫です、覚えてます。」
「ふふ、それならよかった。」
そうやって笑う生徒会長に椅子に座るよう促されて座る。
「それでね、入学2日目にして君を呼び出したのはまぁ大体検討はついているだろうけども昨日の君と運動部の騒動についてなんだよね。」
「やっぱり…」
「あ、でも安心して!別に君を叱るために呼び出したわけじゃないんだ。報告、と言うか提案がしたくてね。」
「提案?」
俺の疑問に頷き生徒会長は1枚の紙を取り出した。
「昨日運動部の部長を集めて会議をしてね、どの部活も君をぜひ我が部に迎え入れたいってうるさ、あぁいや、主張が激しくてさ、乱闘にまで発展しそうだったからこれじゃあちょっと騒ぎがどんどん大きくなってしまうなって思って最終的に生徒会の一存でどの運動部にも所属しないって条件で落としどころをつけたんだ。あ、運動部はダメってだけで文化部なら全然所属してくれて構わないからね!どうかな?君の同意さえ得られれば彼らはそれでいいと言っているんだけど。」
そう言う生徒会長の言葉に俺は何の躊躇いもなく頷いた。