表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
青春エトセトラ  作者: 羽柴 歌穂
第1章
45/182

42.恋する幼馴染

「颯希くん!お誕生日おめでとう〜。」

「おめでとう!」

「はい!これプレゼント!」

「あ、私からもこれ。」

「え、何、向井今日誕生日なの?」

「マジかー、じゃあ俺からもこれやるよ。」

「あ、俺も俺もーほら。」

「あはは、皆ありがとー。」


 教室に入るどころか校内に入った瞬間、擦れ違う人から祝いの言葉やらプレゼントやらがどんどん颯希の元へ集まっていく。


 それに対して律儀にお礼を言う颯希の隣に並びながら腕から溢れそうになっているプレゼントを片っ端から紙袋へ突っ込んでいく。


「相変わらずお前の誕生日はすごいな。」


 そう言いながら小さくため息を吐けば眉を八の字に下げながらえへへ~なんて気の抜けた笑いでこっちを見てくるから小さく蹴飛ばしてやる。


 夏休み明けから3日経った9月3日。

 今日は颯希の誕生日である。


 普段は遠くからキャーキャー言われるか、同じクラスの女子から猫可愛がりされているだけなので忘れがちなのだがこう言ったイベントになるたびに現実を突きつけられるようにして思い出す、こいつの顔面偏差値は異様に高くてモテるのだということを。


 けれど俺にとって幸いな事は少女漫画などに多少の憧れは持っているものの颯希自身にはまだ恋人を作るつもりが無いという事と、そんな颯希に告白するような猛者がいないという事。


 実際キャーキャー騒がれている割に颯希がこれまで告白されたって話は片手の数で足りるくらいしか聞いたことが無い。


 何せこいつは律儀に告白される度に俺の所にやって来ては「そうちゃん、どうしたらいい?!」だなんて聞いてくるもんだから全て筒抜けなのだ。

 その度に「自分で考えろ。」と、口では言いながらも一々俺に相談してくるのが嬉しい気持ちと、何が悲しくて好きな奴が誰々に告白されたって話を本人から聞かなきゃいけねーんだよって切ない気持ちで複雑な感情が浮かんではぐるぐる回る事を繰り返してきた。


 話が若干逸れた。


 とにかく、男女平等なおモテになる俺の幼馴染み様の誕生日という事もあって今日の学校は1日謎の活気で溢れていた。


 それは生徒だけでなく先生も同様なようで誕生日だからと言う理由で問題をあてられたり、当番にされたり、それは果たして誕生日プレゼントになるのだろうか……?と言う事までやらされていたが祝ってもらえるのが嬉しいようで終始ニコニコしていた。


「さーつき!誕生日おめでとう~!!」

「おめでとう。」

「おめでとさん!!」

「わー、ありがとうございます~!」

「奏汰の時のプレゼントはうまい棒だったからな、今回はこれだ!」

「わぁ!雅也先輩、それって『翠の魔法』に出てくるマスコットキャラの《ヴェルデ》のぬいぐるみじゃないですか……!」

「ふふふ、ゲーセンで小銭を費やして獲得したぜ!」

「またUFOキャッチャー……」

「ありがとうございますぅぅぅ!うわぁ、モフモフだー。」

「俺からはね、俺のオススメの本なんだけど。」

「深月先輩オススメの小説……!すごく興味あります!!ありがとうございます。」

「気に入って貰えると嬉しいな。」

「んじゃ、俺からはこれ。」

「こ、これって……!?」

「俺の兄ちゃんの初出版作品、それのサイン入り本だぞ。」

「……っ!!?か、家宝にしますぅ。」

「ははは、そんだけ喜んでもらえたならよかったよかった。」

「ううぅぅ、先輩方ありがとうございますぅぅぅ。」


 そう言って泣きだしそうな颯希に大袈裟だなぁなんて笑いが起きた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ