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青春エトセトラ  作者: 羽柴 歌穂
第1章
44/182

41.恋する幼馴染

 簡単な自己紹介を終え、知らず知らず強ばっていた身体から少しだけ力が抜ける。

 そんな俺達を見て小さく笑いを零しながらその視線は机の上に置いてある写真の方へ移った。


「うわ、懐かしい写真広げてんねー。」

「さっきまで文化祭の話してたんで去年の写真引っ張り出して見せてたんですよー。」

「そーそー、それでこの写真の女の子達は誰だって話になって。」


 そう言いながら部長はニヤニヤ、裕先輩は少し笑を零しながらしながら先程、颯希と二人して眺めていた一枚の写真を遊馬先輩に見せつける。


 そんな遊馬先輩の隣から写真を覗き込んだ藤堂先輩がとんでもない爆弾発言を落とした。


「あぁ、それ僕と深月と裕だよ。」

「え」


 一瞬の沈黙

 そして


「「えぇぇぇぇぇ!!」」


 颯希と俺の驚きの声が部室いっぱいに響き渡った。


「え、だって、え??どっからどう見ても女の子じゃ、え。」

「そ、そーですよ!髪色も違うし、え、あれ、でも言われてみれば……えぇ??」


 二人して顔を見合わせながら混乱しているとそんな俺達の様子が予想通りだったのか深月先輩と藤堂先輩以外がゲラゲラ笑い出す。


「奏汰も颯希も言いたいこと分かるけどそれ、本当なんだよね……」


 マジでか


 そう言うやいなや力なく笑う深月先輩を見て俺達は悟った。


 これマジのやつだ


 と、


 どうりで深月先輩が言い淀む訳だ……


「いやー折角の祭りだし、1日目は普通の格好して2日目の一般開放日は折角なら女装しようよって話になって、元々雅也のお姉さんがさレイヤーさんで色々道具あるみたいだしどうせやるなら本格的にやろうぜって盛り上がった結果ホールメンバーだった僕と深月と裕が女装したってわけ、まぁ他のメンバーも女装したにはしたんだけども、ぐふっ、あ、あまりにもお粗末なでき、だったから、ね、あはは。」


 そう説明してくれる藤堂先輩も最後の方は笑いを抑えきれなかったのか最終的に声を上げて笑い出す。


 折角ってなんだよ?!

 なんでそこで女装なんだよ?!


 とか、色々突っ込みたい所満載ではあったのだがその中で聞き慣れない単語が出てきて、そっちの方に気が取られた。


「レイヤー?」

「そうちゃんそのへん全然詳しくないもんねー。えっと、あのね、アニメとか漫画のコスプレをする人をコスプレイヤーって言うんだよ。」

「へぇー……。」


 そう、颯希が説明する。


「雅也の所はお姉さんもアニメ大好きだもんね。」

「うっす!」

「女装したいって言ったら喜んで協力してくれたよね。」

「目が生き生きとしてたな。」

「ははは……。」


 当時を思い出したのか榎並先輩と藤堂先輩が遠い目をしながらそう呟き、深月先輩は力なく笑った。


「えっ、とじゃあまさか今年も……」

「ん?勿論2日目は女装するぞ!」

「「いや、無理です!!」」


 そうグッと親指を立てた部長の言葉に俺と颯希の否定の言葉が綺麗にハモった。

 そして助けを求めるように去年、大変な目にあったであろう深月先輩、裕先輩の方を振り向く。


「裕先輩!みっちゃん先輩良いんですか?!」

「んー?俺は去年結構楽しんだし別に良いかなーそれに今年は可愛い後輩達がいる事だし厨房要員にまわるからさ!」

「え、なにそれずるい。」

「あははー、まぁ去年もやってるからね、吹っ切れたって言うかどうせなら颯希や奏汰の女装姿も見てみたいなって思って。」

「深月先輩も何、笑顔でえげつない事言ってんすか?!颯希ならまだしも俺は絶対ぇ無理ですって!!」

「あ!そうちゃん何言ってんの!!俺ならまだしもって何さ!!女装くらい完璧にこなしてみせるよ!!」

「いや、怒るところそこかよ……」

「大丈夫、大丈夫、奏汰もちょっと筋肉質な女の子って感じになるって、身長も低いし。」

「喧嘩売ってますか?ヒロ先輩。」

「んー?奏汰がそう受取ったならそうかもしれないね。」

「まぁまぁこれもアニメ漫画研究部員の宿命だと思ってさ。」

「え、て言うか、5人で喫茶店って回りますか?給仕に、レジに、調理にって考えたら絶対無理でしょ……。」

「あーそこは大丈夫!1日目は学生しかいないからそんな混雑しないだろうし給仕とレジを一緒にして、3:2で分かれれば何とか回るのは去年で立証済みだし、2日目は裏方としてなら卒業生の助っ人OKだからさ!」

「あー、だから今日匠海先輩達呼んだんですね。」

「そゆこと。」

「流石裕、理解が早い!」


 そうやってポンポン話が進んでいく。


「てな訳でよろしくな〜。」


 何もよろしくしたくねぇよ!!


 そんな俺の心の叫びも虚しく、あれよあれよという間に話は終わり、文化祭2日目、俺と颯希の女装は決定したのであった。


 それを部長がお姉さんに嬉嬉として連絡するのを颯希と2人、ただ笑う事しか出来なかった。


「んじゃま、色々細かいことはまたメールくれやー。」

「どうせやるならトコトン、だよね。」

「まぁあまりハメを外しすぎないように。」


 そう、口々に言葉を残しOBの先輩方は帰っていった。


 初めての高校の文化祭で女装とかキツいだろ……


 そうは思うものの決定事項を覆す権限なんぞ俺にあるはずもなく、来たるべく文化祭2日目を思い浮かべて胃がキュッと締め付けられた感覚がした。


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