34.恋する幼馴染
《今夜20時、咲楽公園にて、花火大会が開催されるので、19時に学校集合な!》
そんなメールが部長から送られてきたのが朝の8時、その数分後に
《因みに折角だから浴衣で来なよね。By深月》
なんてメールが部長の携帯から送られてきた。
いやいやいや、何で深月先輩自分でメール送らないんすか、と言うかこんな朝早くから一緒にいるんすね……。
よく周りから颯希との仲を普通の幼馴染の距離感じゃないと言われることが多いけれど、それはむしろ部長や深月先輩にも当てはまるんじゃないか……だなんて思ってしまった。
「あ、奏汰―、颯希―!」
「みっちゃんせんぱーい!雅也せんぱーい!裕先輩―!こんばんはー。」
「やっほー。いやぁ、にしても人が凄いね、こんなに多いとは思ってなかったよ。」
「ですねー。合流出来て良かったです!」
そう言う颯希に「本当にね。」と返す深月先輩の隣でニヤニヤしながらこちらを見てくるヒロ先輩の視線が突き刺さる。
言いたい事あんなら言えよ!
いや、もう何を言われるか分かってっけどさぁ……!!
そんな俺の心の葛藤を知ってか、知らずか部長が俺と颯希を見て「お!」だなんて声を上げて口を開いた。
「二人とも浴衣似合ってるな!しかもお揃いか?流石幼馴染だな〜。」
「流石ってなんすか……」
「ねー、似合ってますよね~お揃い。」
そんな部長の言葉に突っ込みを入れる俺の言葉に被せるようにヒロ先輩がお揃いの部分を強調してこちらに近づいてくる。
そんなヒロ先輩から距離を取ろうと後ろに下がろうとした瞬間、グイッと腕を引かれ耳元で
「浴衣でペアルックとかやるじゃん奏汰~。」
なんて囁かれた。
「っ〜!親が買ってきたやつなんで、そんなんじゃないっす。」
咄嗟に距離を置き、そう言い放ったものの、ヒロ先輩のニヤニヤ顔は収まらない。
「なるほど、親公認ってわけね。」
「だっ、から違ぇって……!」
「何が違うの?」
そうやって押し問答をしていれば不思議そうな顔をしながら聞いてきた颯希の声でハッと我に返る。
「いやー、浴衣がお揃いだなんて、奏汰と颯希は仲良しだねーって話。」
「昔っから浴衣とか水着とかレジャー品買う時は一緒に行くんで親がお揃い買うんですよー。ねー、そうちゃん。」
「おう。」
「へ〜そうなんだ〜、家族ぐるみの付き合いなんだね〜。」
颯希のその言葉にニヤニヤを通り越してニマニマするヒロ先輩の顔に居た堪れなくなって思わず顔を背ける。
けれど視線は痛いほど突き刺さっていて……
あぁ〜くっそ!!
あのにやけ顔腹立つ〜〜〜!!!
「ほらほら、3人ともーボーッとしてると置いてくよ~。」
「あ、はーい!」
そんな風に考えていれば、いつの間に歩きだしていたのか屋台の方へ向かう深月先輩の呼びかけに俺たち3人は慌ててその後を追った。




