32.恋する幼馴染
「それにしてもお前は身長全然伸びねーなー。俺が高1の頃なんか2、3ヶ月で数センチは伸びてたぜ。」
「人が気にしてることを……。」
はっはっは、なんて笑いながら俺の頭をぽんぽん叩く健兄の手を振り払えば「拗ねんなって~。」と言ってきたので「拗ねてない!」とだけ返す。
「まぁでもきっとまだ成長期はあるだろうから気にすんな!叔父さんそんなに身長高くないけど。」
「健兄は本当に余計な一言が多いよな。」
「はは、よく言われる。」
そう悪びれもせず言う健兄にため息を吐きながら冷蔵庫から牛乳を取り出しコップに注ぐ。
ついでに母さんが用意してくれていた朝食を電子レンジにつっこむ。
「来年からこっち勤務になるって本当?」
「おー、ほんとほんと。また部屋探しするわ~引越しの時は手伝いよろしくな!」
「手伝うのは別にいいけど。こっち戻ってくるならここに住めばいいじゃん。健兄の部屋そのまんまにしてるし母さんも父さんも喜ぶよ。」
「いや、流石に自立した大人だし、叔父さん達に迷惑かけられねえからなぁ。」
「別に迷惑なんかじゃないのに……。て言うか異動ってそんな早くから言われるものなの?来年って結構遠くない?」
「あー、いや、本当はこの冬からって言われてたんだけどちょっとな、色々あって来年にずらして貰ったんだよ。」
「色々?」
「色々は色々だよ。あーそいや颯希は元気か?」
珍しく言葉を濁す健兄につい追求するような言葉を投げかければ明らかに話を逸らされた。
けれどそれ以上追求する気も起きなかったので、そのまま会話を続ける。
「元気だよ。多分今日もそろそろ家に来る頃だと思うから会ってけば。」
「お前らまだつるんでんだな~。仲の良い事で。本当にお前らは昔っからお互い大好きだよな~。」
「ゲホッ」
「ん?どした、奏、大丈夫か?」
「だ、大丈夫、ちょっと変な所に牛乳が入っただけだから。」
健兄が何気なく言った大好きだという言葉に思わず動揺してしまう。
分かってる、健兄は変な意味で言ったわけじゃないってことくらい分かってる、分かっているのに変に意識してしまうのは……
それもこれもヒロ先輩のせいだ!!
あの合宿でヒロ先輩に言われた言葉に俺はもうずっと振り回されている。
本当に余計な事言ってくれやがって……
大体手助けってなんだ、あの人にとって得なことなんて何もねーのに、何か裏があるんじゃねぇかとか色々勘ぐっちまう……
あぁぁぁぁぁ、クソ!!
そんな俺の葛藤をよそに玄関に「お邪魔しまーす。」だなんて間延びした声が響き廊下からひょっこり颯希が顔を覗かせた。
「やっほー、そうちゃん、アイス持ってきたから冷蔵庫入れていい?」
「お、う。」
そう言ってアイスの袋片手にやってきた颯希の格好はタンクトップで、思わず視線を逸らしてしまった。
そんな俺の事など気にする様子もなくリビングでいつもいないはずの人間を見つけた瞬間颯希の目がキラキラ輝いた。
「あー!!健くんがいる!」
「おー颯希、相変わらずイケメンに育ってんな~てかお前また身長伸びたんじゃね?その身長、奏にも分けてやれよ~。」
「健兄!!!」
余計なお世話だっつうの!!




