30.恋する幼馴染
「あれそうちゃん、よく眠れなかったの?眠そうだね。」
「あー、いや、何でもねーよ。」
あの後、「まーまー遠慮すんなって~。」「遠慮してません、本気でその気遣いいりません。」だなんてヒロ先輩と言い合っていれば、なかなか帰ってこない俺達を探しに来た深月先輩に見つかり廊下で騒ぐなとお叱りを受け、そのまま部屋へ強制送還された。
その後深月先輩の前で話を蒸し返す訳にもいかず、それぞれ挨拶を済まし、布団に潜ったものの俺の頭の中は以前大混乱で中々寝付けず、いつの間にか朝になってしまっていたというわけだ。
そんな事颯希に正直に話せるかよ……!
「おー、ほんとだな。奏汰、お前って枕変わると寝れないタイプなのか?そんなタイプには見えねぇけど。」
そう飄々と言ってくるヒロ先輩に対して
あんったのせいだよ!!!
なんて言えるはずもなく、キッと睨みながら「別に」とだけ返した俺とヒロ先輩のやり取りを颯希は頭にハテナを浮かべながら見ていた。
「よし!チェックアウトも済んだしそろそろ行くよー。」
「ほら、お前ら俺について来い!」
そう言って手を振る深月先輩と部長の方へ俺達は慌てて駆け寄った。
そうして昨日に続き『探偵ですが怪盗です☆』の聖地と呼ばれている縁ある場所を回りながら土産物屋などにも入り各々何かしら買い物をした。
昨日と違うのは聖地に着くなり颯希や、部長、ヒロ先輩が熱く俺と深月先輩にそのシーンの話を語ったり、実際に再現したりした事で「三人の作品への愛がすごいね。」って笑う深月先輩に「っすね。」と苦笑しながら返した事くらいで、好きな物に熱中するのはどんな事でも傍から見たらパワフルに見えるんだな……なんて思った。
こうして俺と颯希の初めての合宿は幕を閉じたのであった。




