28.恋する幼馴染
「は~。もう、本っ当に感動した……。まさか焔と氷雨の有名な対峙シーンであるあの場所をこの目で見ることが出来るなんて……。他にも2人が初めて出会った場所や、探偵事務所のモデルになった建物まであるだなんて知らなかったからついついはしゃぎすぎちゃった。あ!そう言えばそうちゃんは知らないんだったよね?ごめん何か俺達ばっかり楽しんじゃって……。」
「いや、まぁよかった……な?」
「うん!!話を知らないそうちゃんの為に特別に俺が説明してあげるね!」
「え、いや別に、」
「あのね、焔ってのが主人公なんだけどこれは怪盗をやっている時の名前で本名は不知火朋也って言って昼間は探偵、夜は訳あって怪盗焔として活動しているんだ。それでね、そのライバルにあたるのが警察官である氷雨 優大ってキャラなんだけど、今日行った場所はどこもこの二人に関係のある場所でね……」
それから数時間、夕食を食べに行こうかと言う深月先輩の助け舟が出るまで颯希の『探偵ですが怪盗です☆』プレゼンは延々と続いた。
その傍らで部長とヒロ先輩は今日撮った写真を整理しながらやんや、やんやと盛り上がっていた。
「それにしても急に行き先変更とかよく出来ましたね。」
「あーまぁ元々泊まる所は裕のお兄さんの別荘だったからね、断りの電話1本で済んだしそれと同時に今回のこの宿もお兄さんが押さえてくれたんだ。」
「ヒロ先輩のお兄さんってやっぱすげぇ人なんすね……。」
「おう、裕の兄ちゃん様々だな~。」
「なになに?俺の兄ちゃんの話?」
「え、龍先生の話!?」
「いや~本当に裕の兄ちゃんには世話になって有難いな~って話しさ。」
「まぁ兄ちゃんは俺に甘いっすからね~。」
ふふん、だなんて言うヒロ先輩に仲良いんだな、なんて心の中で思っていれば同じ事を思ったのか颯希が
「仲が良いんですね。」
と言った言葉にヒロ先輩は「まぁね。」と少し照れくさそうに肯定した。
「俺、お兄ちゃんとかいないから羨ましいです。」
「颯希は一人っ子だっけ?」
「はい!深月先輩は?」
「俺も一人っ子だね。雅也はお姉さんがいるよね。」
「うげぇ……合宿中に嫌な事思い出させるなよ。あいつは姉じゃねぇ……悪魔だ…鬼だ…閻魔様だ……。」
「そんなに凄いんですか?雅也先輩のお姉さん。」
「あはは。まぁ、うん……。」
そう言っていつものように笑った後視線を逸らしながら若干の汗をかき肯定した深月先輩の姿は初めて見る姿で、まだ見ぬ部長のお姉さんに俺と颯希が少しだけ恐怖したのは仕方が無いことだと思う。
「裕先輩は龍先生以外にお兄さんいるんですか?」
「いんや、兄ちゃんだけだよー。そいや奏汰も一人っ子?だよな。」
「はい。」
「あ!でもそうちゃんにはお兄ちゃんいますよ!従兄弟ですけど。俺達が小学生の頃までは一緒に住んでて高校卒業してすぐに警察学校に行って今は警察官やってるかっこいいお兄ちゃんが!」
「へーそうなんだ。」
「警察官か~じゃあ相当強いんだろうな。」
「すっごく強いです!!そうちゃんが唯一勝てない相手だもんね!」
「あぁ……健兄には1度も勝てた事ねえからな。」
「そこらの大人よりよっぽど強い奏汰が勝てない相手か……会ってみたい気もするね。」
「もしかしたら街のどこかですれ違ったりしてて~。」
「ありえる。」
そうやって暫くわいわい話をしながら明日はどうするかなんて会話をしていれば注文した品が続々とやってきたのでそれを片付けにかかった。




