13.恋する幼馴染
side 颯希
いやいやいや、なんで裕先輩がこんな所にいるの!?
知り合いに遭遇しないようちょっと遠めの本屋まで来たのに!
今日の俺ついてないにも程があるよ、絶対星座占い最下位だ…
なんてぐるぐる頭の中で考え込んでいれば裕先輩が再び口を開く
「颯希ってもしかして…」
裕先輩が紡ぐ次の言葉が怖くて俺は咄嗟に目を瞑る。
けれど続いた裕先輩の言葉は俺の想像していなかったものだった。
「俺の兄ちゃんのファン?」
「へ?」
ドユコト
「その手に持ってる本って笹原龍…じゃなかった。佐原紅龍の新刊でしょ?」
「あ、はい。」
「いやーそれ書いてんの俺の兄ちゃんなんだ。あれ、言ってなかったけ?」
そうあっけらかんと言う裕先輩に「聞いてないですよォォォォォォ」と叫び出したい気持ちをぐっと堪えて肩を感情のまま思いっきり掴む。
「え、ちょ、いたいいたい。爪食い込んでるから!めちゃくちゃ痛いから!!」
「その話、詳しく聞かせてください。」
頭の中は冷静なのに身体の底からぐわっと湧き上がってくる気持ちを抑えきれず更に力を込めてしまう。
そんな俺の気迫にやや押されて裕先輩はこくんと頷いた。




