10.恋する幼馴染
「えー、と言うわけで!仮入部期間も終わり、無事新入部員を二人確保できた我が漫画研究部は見事!廃部の危機を乗り越えました~。はい、拍手!!」
その言葉でまばらに拍手が起きる。
そんな光景を人事のようにみつめていた俺に、その人物が近づいてくる。
「いやさ~、本当に一時はどうなるかと思ったけれどギリギリで松永くんが入ってくれることになって良かったよ~。あ、俺は部長の滝村雅也っての。よろしく~。」
「うっす…」
「そんでこっちが副部長の…」
「工藤深月先輩…っすよね。」
「あ、覚えてくれてたんだ。」
そう言って目の前の先輩が綺麗に微笑む。
「前も言いましたけど、流石に生徒会長の名前くらいきちんと覚えますよ…。」
「えー、なんだよー!深月と松永くんって知り合いなのかよ!」
「知り合いってわけでも…」
「ちぇー、じゃあ俺だけが松永くんと初対面なわけ!?うぉーまじかー!俺の事は気軽に雅也先輩!とか、雅也部長!とか雅也様!とか好きに呼んでくれていいぜ!!これからよろしくな!」
そう言って再びマシンガントークを繰り出す滝村先輩に圧倒されていれば、肩を軽く叩かれる。
「あ、あれの事は無視してくれていいからね。」
「はぁ…、この人いつもこんなにテンション高いんすか?」
「うん、いつもの事。」
そう会話に割り込んできたのは笹原先輩で思わずぴくっと体が反応してしまう。
「はは、やだな~。何もとって食おうなんて、してないんだからそんな警戒しないでよ。」
「急に後ろに立たれたから、びっくりしただけっす。」
「ちょっとちょっと、そんな敵意剥き出しの顔で威嚇されると流石に傷つくんだけど!」
「裕、松永くんに何かしたのか?」
「えー、何もしてないですよ~。」
そう言う、笹原先輩の事を軽く睨みつける。
そしてすぐに生徒会長の方へ向き直り疑問に思っていたことを口に出した。
「でも意外でした。生徒会長がこの部活に入っているの。」
「よく言われる。」
「漫画とか好きなんすか?」
「嫌いではないけれど、特別好きって理由ではないかな。」
「えっと、じゃあ何で?」
「君さ、向井君と幼馴染なんだってね。」
「え、あ、まぁ…。」
「僕と雅也もね、実は幼馴染なんだよねー。と言っても、小学生からの付き合いなんだけどさ!」
「あ、そうなんすか。」
「反応薄いな~。」
「何か、すみません…?」
「なんで、疑問形なのさ。」
そう言ってくすくす笑う生徒会長は気分を害しているようでもないのでもう一度だけ軽く謝っておく。
「まぁ簡単に言うと、特にやりたい事もなかったし、幼馴染である雅也に誘われたから入ったって感じかな!」
「めちゃくちゃ単純な理由ですね。」
「まぁ高校の部活動なんてそういうもんじゃない?」
「前、生徒会室に呼び出された時にも思ったんすけど、何か生徒会長ってもっとキッチリしてるって言うか、真面目ってか、堅物?なイメージがあったんで、その理由聞いて正直驚いたって感じです。」
「ふふ、君の中での僕のイメージってそんなだったんだ。」
「うっす。」
「深月先輩は案外茶目っ気たっぷりだぞ。」
「まぁ裕程ではないけどね。」
「はぁ…。」
「なーに、3人だけで盛り上がってんだよー!!俺の話も少しは聞けよー!!!」
「雅也は一人でも盛り上がってるだろ。」
「あはは確かに~。」
「深月に裕!お前ら俺部長だぞ!扱い酷すぎじゃね!?」
「はいはい。」
「返事が雑!!なー奏汰もそう思うだろー?」
「え、あ、うっす。」
「お前も反応薄いな!?」
急に名前を呼ばれたら誰だって反応が遅れるに決まってる…
と、内心ごちる。
そうして俺の慌ただしい部活動1日目が終わった。




