第四話 さくせん いのちをだいじに!
二歳になりました!
魔力の移動もだいぶスムーズに出来るようになって、最近では魔力を体の末端にに移動させて自分の身体の大きさを確認出来るまでになっている。子供成長って早いね!
加えて魔力も順調に増えている。母さんが言っていたように魔力を隅々まで巡らせると、魔孔が開く感じがする!!地道に量を増やしていこう。
それ以外の変化としては、完全二足歩行に移行したこととー、キールの仕事が忙しくなって増員した事くらいか。なんでもこの街には近くに魔物が住む森があるらしく、そこからたびたび魔物が出てくるようになってしまったらしい。幸い、領主様が先んじて冒険者に森の魔物の間引きを依頼していたので大事には至らなかったらしいが。予言者かなにかなのかな。
と、近況を報告したところで今日はついにリツから魔法を教えてもらう日なのだ!うひょー!ついに魔法!どんな魔法かな!やっぱ最初はファイアーボールみたいなやつかな!いや、もしかしたら闇魔法かもしれない!姿を消す魔法を希望いたします!
そんないかにも男の子らしい希望を抱きながら、俺は朝の家事を済ませた母さんの元に駆け寄る。
「お母さん!今日は、魔法を教えて貰える約束だったよね!」
「ああテラ、そうね、まだ早いと思うけどそんなに言うなら教えましょうか」
エプロンで手を拭いている母さんの上着の裾を握りながらおねだりすると、はぐらかされる事なく聞き入れられた。
「じゃあさっそく最初の魔法を教えるわね!」
くりくりとした目でウィンクしながら台所でそう言った。
「ここで?えっ魔法でしょ?ここは食器もあるし危なくない?」
「ん?魔法よ?・・・あぁ、もしかして攻撃系の魔法を覚えるつもりでいたの?だめよ、まだ二歳なのに攻撃系の魔法なんて教えません。今日は聖魔法の回復系を教えます。それにどこに行ったって回復魔法は扱うのよ?」
まさかの回復魔法だった・・しかし、言われてみれば当たり前か。一般的には分別もついていないような子供に攻撃系なんて覚えさせたら何があるか分からないし、回復魔法自体も覚えているだけでプラスになる。よし頑張ろう!
「うーん、わかった!回復魔法教えて!」
「素直でよろしい!んー、じゃあ最初は”リカバオート”を覚えましょう。これはテラが転んだ時とかに早く怪我が治る魔法よ!手を出して、”いたいのいたいのとんでいけーリカバオート”」
指先に魔力を溜めて掌に円を描き魔法名を唱えると、うっすら青い光が吸い込まれていく。
うおー!回復魔法!怪我をしていないからいまいちわからないけど!それにしても呪文!子供の頃はいいかもしれないけど、仮にも精神年齢30歳の俺には恥ずかしい・・・後々呪文変えていこう・・・
「今のを真似してごらん、すぐは出来ないかもしれないけど何回もチャレンジしたら出来るわ!さて、今日もお仕事いくわよ~」
「うん!お店で練習する!早く行こう!」
「じゃあ行きましょうか」
新しい魔法を試したくてうずうずしながらリツの手をを引っ張りながら雑貨屋へと向かうのだった。
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雑貨屋のカウンター裏に、ちょっとした倉庫があり、体力ポーションや魔力ポーションの材料やら、麻縄や転写をするための筆記用具などが整頓されて置いてある。俺は毎日カウンターか、ここで魔法操作の練習や”まほうにゅうもんしょ”を読んで勉強をしている。今日は魔法の行使だ!
「えーと、いたいのいたいのとんでけ!リカバオート!」
若干気恥ずかしいが、今は2歳児だと思い込んで呪文を唱える。指先に青い光が見えたが込める魔力が多すぎたのかすぐ掻き消えてしまう。
むむ、この魔法、魔力の上限が少ない。
「いたいのいたいのとんでけ!リカバオート!」
二回目の発動は青い光も出なかった。恐らく下限を下回ったのだろう、中間くらいが難しい!
回数をこなしてくると、魔法は発動するのだが範囲を決める為に指先で円を書くが、その時の魔力を安定させるのが非常に難しかった。やっと一回成功させた時にはもう夕方であった。
「やったー!!出来た!出来たよお母さん!!」
「あら!もう発動出来るようになったのね!さすが私達の息子だわ!まだ魔力はありそう?お母さんにかけてみて」
「いいよ!いくよ~、いたいのいたいのとんでけ!リカバオート!」
リツの掌に青い光で範囲を指定し、魔法を発動させる。光は掌に吸い込まれて完成だ!これなら問題ないはず!そう言ってリツの顔を見ると
「本当に発動出来たのね!魔力も足りてるし、範囲の指定まで出来るとは思ってなかったわ。」
「へへーん!ねぇねぇ!明日もまた魔法教えて!」
「魔法もいいけどお外でも遊ばないとだめよ?」
うっ、確かにこの二年間はほとんど外で遊んでない。リツが砂場に連れ出して遊ばせようとするのだが、流石に二歳児と遊ぶのは・・・と思いずっとリツの膝の上で魔力移動の練習をしていたのだ。
親からしてみても、子供らしい遊びに全く興味がない我が子と言うのは不安にもなるのだろう。仕方ない、明日は砂場で遊ぶ事にしよう。
「わかった、明日は砂場で遊んでくるよ!でも次の日は魔法教えてね!」
「はいはい、お友達も出来るといいわねぇ」
ふっ回復魔法覚えたし、同世代の子にはモテモテ確実やな!砂場デビューは華々しい事になるはず!
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次ぐの日
「ほら、砂場に同じくらいの子いるわよ~いってらっしゃい」
リツは他の母親と話しをしながら砂場近くにあるベンチに腰掛けた。
俺はというと、まともに子供として子供と話しをするのが始めてだったので砂場についてから不安で仕方なかった。
(くっそ!モテモテ確実の前にどう喋りだせばいいかわからん!子供の頃は何て言ってまじったけな・・・)
そう思いながら砂場に近付くと、黒髪で短髪の男の子が声をかけてきた
「みたことない子だね!おれレイク!よろしくな!」
なんてイケメンな子なんだ!!初めてでも入りやすいように声かけてくれるとか、人間が出来ている!
「ぼっぼくテラって言います、二歳ですよろしくお願いします」
「そうなんだ!こっちこいよ、今みんなでお城作ってるんだ!」
「うっうん!」
「レイクはやくー固めないとくずれちゃうよ~」
「あっ!レナちょっと手で押さえてて!すぐ行く!」
茶髪の女の子、レナに催促されてレイクは砂場に出来た城(仮)に駆け寄って目を閉じた
「かたまれ!”サンドロック”」
魔法!!なんてこった子供で俺以外にも魔法を使えるとは・・・魔法をかけた砂の城はレナの指の間からこぼれ落ちてた砂がぴたりと止まる。土を固める魔法なのか。
「ふぅ・・・あっこの子はテラ!」
「テラです!二歳です!」
「「よろしくね~」」
三人の男の子、二人の女の子が返事をしてお城作りを再開し始める。
「あの、レイクくんは魔法が使えるの?」
「レイクでいいよ、土をかためる魔法なんだぜー!みんなも練習してる!」
「そっそうなの?ぼくも練習しとこうかな」
「みんなで固められたら大きな城作れるからがんばろうぜ!」
魔法も覚えられたし砂場もいいな!
満足しながら砂場のお城建設計画にすんなりと混じり、気づけば夢中で砂を掘っていた。精神は肉体に引っ張られるってこの事か!!!夕方、リツに声を掛けられるまで遊んでいた俺はそう思った。
「じゃあまたね!」
「またな~今度は団子作ろう!」
「「またね~」」
遊び疲れて泥だらけになった俺はリツと一緒に家路についた。