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第4話 怒る王と馬鹿の現状把握

何だがどんどん最初考えてた流れから遠ざかっていっているこのお話。エスタール家のスペック高すぎて引きそう。今日もザイルは残念な男です。

「お前はッ…!!何てことをしてくれたんだ!!」



ザイルが城に着くと会議室へ通され、何故かすぐに国王陛下と会うことになった。常ならば国王は公務がびっしりと入っており、すぐには会えないのだが。しかし、そこで疑問に思わないのがザイルであった。


「これであいつらに思い知らせることができる。なんてタイミングの良い。」


自分に都合の良いようにしか考えていないザイルはニマニマと三流の小物が浮かべるような笑みを顔に載せてその時を待っていた。そこへ…



バンッ


「何者だ!!この俺がいるというのに無礼なっ!!」


突然の音に驚くと同時に怒鳴りながら音の原因であろう扉へ視線をやると…


入ってきたのは国王陛下その人であった。


そして冒頭の発言がザイルへなされる。



「なんのお話ですか父上。私にはなんのことかさっぱりです。」


「お前がエスタール侯爵令嬢に行った行為のことに決まっておろう!!あんな馬鹿げた行動を置いて何を話すというのだ!!」


「あれは私が王族として、あの女は私の婚約者には相応しくないと思った故に行ったものです。私は間違っていない!!」


「あれがか!?お前はあれが王族としての正しい行いだとでも言うのか?」


「当然です。何を言っているんです?父上」


国王は疲れきったように置かれている椅子に座り込んだ。国王と共に会議室へ入ってきていた宰相が気遣わしげに視線をやると国王は額に手を当て溜め息を1つ。そして次の瞬間、憐れみの視線をザイルへと寄越した



「馬鹿だ愚かだと思っていたがここまでだったとは思わなんだ。自分が仕出かした事の重大さも理解できぬとは我が子供ながら残念なことだ。」


明らかにザイルを出来損ないだと、出来損ないで憐れだと言った感情を溶かしこんだ言葉にザイルは顔を真っ赤にして怒る。


「なッ…!?父上!!いくら父上でもそのような嘲りは許しかねます!!」


「許さぬだと…?それは我の言葉だ!!お前はこの国を危険に曝しているのだぞ!!」


「…?」


「それが解らぬからお前は愚かなのだ。あの家のことをしっかりと理解していればこのような愚行など起こしはしない。」


「ど、ういうことですか…?」


「かの令嬢のエスタール侯爵家は様々な意味で手を出してはならない家だ。」


チラと国王が宰相に視線をやると宰相が代わりに話始める。


「エスタール侯爵家は時の王達より領地を与えると散々打診されていたにも関わらず、領地を持たずに各地を転々とし【彷徨える侯爵】と影で呼ばれてますが、あの家には領地など必要ないのです。」


「何を…」


「領地なくともあの家は力を持っているので。それに領地を治めて得る利よりも持たぬ利の方が大きいと現当主は言ってましたしね。」


「そんな妄言を誰が、」


「実際、領地を持たずともあの家の力は絶大ですよ?まあ、当然でしょうけども。現当主は切れ者でこの国の中枢を取り仕切り、意見の合わない貴族達の緩衝役となっています。彼が居なければ派閥争い等でたちまち内紛が起こること間違いなしですね。」


「なら当主をこちらに取り込めば…、」


「それは無理ですね。彼は身内を最優先しますから。それに彼だけが有能なわけではないのですよ?彼の妻は人心掌握術に長けているので情報を見事に操り、「社交界の薔薇」と呼ばれてますし、長男はあらゆる武に精通する猛者で、ギルドのSランカー「鬼神」と呼ばれグリフォン等も一人で狩ってみせるほどです。貴方が貶めたアザレア嬢は魔導の地位を持つだけでなくアレスト商会の会頭まで務める女傑。次男は技導であるだけあり技術で右に出るものはいない最高峰の技術者。末娘はまだ12歳で能力は未知数ですが既に並の魔術師を簡単に倒してみせると報告があがっています。そしてセスアルド・華陽を始めとするエスタール家に仕える者達も作法・武術・魔術全てをこなしエスタール家に絶対の忠誠を誓う者達です。彼ら一人一人が得難い有能な人物達で、竜帝からの勧誘が後を絶たないと言うのも納得できる話ですね。」


セイジアス王国の隣国は竜帝が治める実力主義の国で有名である。豊かで広大な土地と豊富な水。そしてなにより海に面していることから貿易も盛んだ。

そして、今代の竜帝は確か24歳程に見える。まあ、竜である以上はもっと年齢は上かもしれないが。



「そんな話、今まで聞いたことがない!!」


「いいえ。学んでいただいたはずでございます。我が国の貴族について知るのは王族として当然ですので。」


ザイルが怒鳴れば宰相は淡々と返してみせる。今の言葉を直訳するならば「お前がサボっていただけだろうが。こんな事も知らねぇとか、それでも王族かよ?あ"ぁ?」である。


「…、」


ザイルが黙ったことで宰相は追撃を開始する。


「エスタール家を高く評価している竜帝ですが、特にアザレア嬢のことはとても気に入っているようで是非とも竜妃として迎えたいとおっしゃっているようです。今までは婚約者が居たために冗談ですんでますがこんな形で婚約は破棄されていますので近いうちに行動が起こるでしょう。」


「だがあの女は俺のことを」


「それは有り得ぬ。」


今まで沈黙していた国王はザイルの言葉を即座に切って捨てた。


「アザレア嬢がお前を好いていることは絶対に有り得ぬ。」


「な、何故です!?あの女は家の力と金にものを言わせて俺の婚約者になったのでしょう?」


「どうすればそんな考えが浮かぶのだ?忘れたのか?お前の婚約者になったのは我と王妃が頼み込んだ故だ。アザレア嬢はもちろん、エスタール家の者みな拒否しておったのだぞ。」


「無礼なっ!!さすがは卑怯なイジメをする賤しい女だ。なぜそのような者を見逃したのです!!」


「はぁ。お前は本当に愚かだ。ここまで話してなお、その発言か。もうよい。」


国王は諦めるように溜め息を落とし、部屋を出ていこうとした。そんな国王を止めようとザイルが声を掛けるより前に国王は振り替える。


「言い忘れておった。もし、エスタール家が報復に乗り出したならばお前の身を渡すことになる。そして、エスタール家が他国に取り込まれた場合はお前の王籍は抹消の上、これ以上問題を起こさせないために幽閉となる。覚悟しておくんだな。」


最後の最後に爆弾を投げてよこした国王は呆然とするザイルを放置して今度こそ部屋を出ていった。

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