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第3話 ◯◯な家と家族と一家団欒

さて、ザイルが城へ向かっていたちょうどその時。

アザレアとアルフォードは実家であるエスタール侯爵家邸宅の門をくぐった頃であった。


邸宅へと伸びる道を庭を愛でながら進む。いつみてもスゴい庭である。


様々な色で咲き誇る植物。

人懐っこい瞳をした動物たち。

精を出して庭を手入れする使用人達。

字面だけを見るとありふれた庭の光景なのだが、実際に目にするとスゴいの後につけたくなる言葉がある。



それはもちろん…



恐ろしい!!である。



様々な色で咲き誇る花の中に何故か混じっている毒草や毒花。

アザレア達に人懐っこい瞳を向けるのはグリフォンやマンティコアといった間違っても人懐っこいと言われるようなものでは無いはずな生き物だ。

そして、その庭を手入れする使用人達は



ある者は死神が持っていそうな大鎌で草刈りをしているし、

ある者は身の丈もある剣で木の剪定をしている。

何と戦っているのか不思議なくらいの装備と無駄な戦力である。



そんなスゴいやら恐ろしいやらの庭を抜けるとやっと邸宅の中に入れる。


中では使用人達が待ち構えていて帰宅の挨拶を投げ掛ける。そしてアザレア達を褒めた。


エスタール侯爵家は使用人達ともある程度気安い関係が作られている。勿論、公の場ではきちんとした対応を取らせているが。


だからこそ、ザイル達が行ったアザレアへの仕打ちに使用人達は怒り狂い、報復に乗りだそうと言う者も多かった。故に、アザレアとアルフォードの暴言を褒めても叱る者は誰一人いない。


使用人達との挨拶を済ませ、アザレアとアルフォードが真っ先に向かうのは家族が話し合いなどに使う会議室だ。


コンコン


「入れ。」


「「失礼します」」


「アザレア、アルフォード。おかえり。よく帰ってきた。」


「はい。只今戻りました。」


「ただいま帰りました。お父様、お母様。今宵は宴ですわ!!」


「ああ。盛大な宴を催そうな。血祭りでもいいか?」


「あらあら、では獲物を用意しましょうね。」


「チッ。あのクソ王子マジで目腐ってんだな。」


「兄上に同意です。あの顔面偏差値のくせに身の程知らずとは。」


「あはは。兄様達怖いよ?だいじょおぶ。あのクソ野郎は後でシメルから」


中に居たのは男女4人だ。


最初に声を掛けてきたのはエスタール侯爵家当主 リヒト・エスタール

後ろに流した藍色の髪に切れ長な藍色の目。

細身ながら鍛えてると解る恵まれた体

纏う雰囲気は柔らかだが、目の奥は鋭く爛々としている。


次に獲物だ何だと物騒なことを言い出したのはリヒトの妻 セーラ・エスタール

腰まであるチョコレート色の髪は緩くカールし同色の目は垂れ目がち。

ほわほわとした可愛らしい女性。

しかし何故だろう。微笑みから冷たいナニカを感じる。


その次に話したのがエスタール侯爵家長男 ゼクシアート・エスタール

セーラ譲りのチョコレート色の髪に深紅の瞳。

肉食獣を思わせるどこか荒々しい男。

この中で外見と性格が一致しているのはこの男だけだろう。


最後に鈴を転がしたようにコロコロ笑いながら言ったのがエスタール侯爵家末娘のヴィアイン・エスタール

明るい茶髪を肩で切り揃え、エメラルドのぱっちりとした目を持つ活発そうな子。中身は大分違うようだが。


性格はともかくとして、それぞれジャンルの違う超絶美形だ。


そして、今更ながらアザレアとアルフォードももちろん言うこと無しの美形だ。


アルフォードは琥珀色の髪と瞳。

少し長めな髪を後ろで結っていてリヒトに似た切れ長な目は冷たい氷のようなことも相まってクールな印象を持つ。


そして、美形なエスタール侯爵家の中でも飛び抜けて美しいのがアザレアだ。


腰を越える緩く波打つの髪も二重の大きな目も白銀

色白な肌に映える赤珊瑚のように真っ赤な唇

スッと通った鼻梁

メリハリある体は背も高く、手足も長い。

これで美しくないと言ったら目がおかしいか趣味が違うかのどちらかである。


まあ、それはまた今度にして

物騒な発言は半分冗談であり、本当のちゃんとした宴の準備を使用人に指示し、一家は家族団欒を楽しむことにした。


「お姉様!!あたし新しい魔法を考えついたんだ!!見てほしい!!」


「まあ、そうなの?アインはいつも面白い発想をするから楽しみだわ。見せて?」


「うん!!

[氷よ。舞い踊れ。汝らの輝きにて愚かなる者を狂うほどに魅了せよ。ダイヤモンドダスト]」


ヴィアインが詩を紡ぐとどこからともなくキラキラと輝く霧が表れる。


もし、この魔法が人に向けられたなら魔法に精通したものでなければ自らの体でもってその脅威を証明するはめになる。ヴィアインが発動したこの魔法は人体の穴という穴から体内へ侵入し内側から破壊するというとてもとてもえげつない魔法なのだから。


アザレアはそうとは思わないようだが。


「あら、とっても綺麗な魔法ね?でもそのままだと疑ってくださいって言ってるようなものだから…こうしたらどうかしら?」


パチン


アザレアが1つ指を鳴らすと現れたのは氷の鳥と土の人形。

鳥が人形に向かって飛んでいくと人形は構えていた剣で鳥を迎え撃ち、叩き切ることに成功し、鳥は粉々になって砕ける。が、キラキラと輝く霧となって騎士を包み、切り刻んだ。


「わぁ~!!流石お姉様!!ありがとう!!」


「ふふ。アインも魔法上手くなったわね。そのうち無詠唱もできるようになりそうだわ。」


「お姉様のようになれるよう精進するね。」



危ない魔法を開発、改良してしまった姉妹を微笑ましそうに見つめるのはリヒトとセーラ。

木陰にあるテーブルでまったりと紅茶を楽しみつつ子供たちを見守る姿は正に優しい父と母。

しかし、会話はどう聞いても優しくはないのだが。


「ねぇ、あなた。あの脳内お花畑のクソ王子があんなに美しいザラに醜いとか言ったって本当かしら?」


「ああ。真だと報告が来ている。シアの言う通り目が腐っているとしか思えないだろ?」


「目が腐っているというよりも性格が腐っているんじゃない?いっそ自慢の顔も腐ればいいのに。」


「確かフルフルの花を使えばそう言う毒が作れるんじゃなかったか?」


「あら?そうだったの?なら、すぐにでもお庭で育てましょう」





そんな両親より離れた場所ではゼクシアートとアルフォードがグリフォン達を相手にアニマルセラピーを行っていた。


「ほら、ご飯だぞ。ポチ。タマ」


「シア兄上。いつも思いますが名前が安直すぎませんか?」


「覚えやすくていいじゃねえか。それにお前が使い魔にやった名前も安直といえば安直だろーが。吸血鬼だからキューラとかよぉ。」


「本人は喜んでいたので良いかと。

最初は太郎とつけようとしたんですが姉上に止められてしまったので、この世界にもありそうな名前をつけただけ僕は頑張ったと思います。」


「あー、お前ネーミングセンス無いもんなぁ。なのに悪意てんこ盛りのあだ名はすぐに思い付くのは何でかねぇ」


「そんなのどうでもいいじゃないですか。それよりあのクズ王子達が問題ですよ。ポチ。タマ。あのクズ王子の刺客が来たら遊んでから捨てなさい。お腹を壊すので食べては行けません。解りました?」


グルルル


「賢いなぁ。あ、捨てるならスライムの池にな?証拠も残んねぇし、スライムは喜ぶし。」




最初は普通のアニマルセラピーだったはず…、(グリフォン等をアニマルと言っていいかはとりあえず置いておいて)なのに何故完全犯罪の計画立案の時間に早変わりなのだろうか。



そして、まったりと過ごして夜は宴を楽しむエスタール侯爵家。

今はただただのんびりと時間が過ぎていく。



ちょうどその頃、城ではザイルとその父と母である国王と王妃が対面しているところだ。


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