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第26話



「アザレア様。シュナイデルでございます。」



アザレアの自室を訪れたシュナイデルはそっと声を掛ける。あまり無いことだが、アザレアが疲労のあまり仮眠を取っている場合があるからだ。特に黄昏時は。


だから返事がなければ出直すつもりだった。しかしそんなシュナイデルの声に部屋の主はゆったりとした返事を返す。どうやら今回は起きているようだ。


「失礼致します。」


繊細な彫刻が美しい重厚な扉はアザレアの施した術によりその見た目に反して軽く開き、シュナイデルを招き入れる。




「おかえりなさい、シュナ。」


執務机に座っているアザレアは優しく微笑みながらシュナイデルの帰還を歓迎する。壁際にはユナとティルナリアも控えており、最近はあまり揃うことの無かったアザレアに絶対の忠誠を誓う華陽一族の異端児3人が揃った。常にアザレアに付き従う彼らはファナカード学園に戻るアザレアに付いていく。その準備に追われる主の邪魔をさせないためにシュナイデルはザイルを排除し、ティルナリアも貴族の牽制に動き回っていた。


「ただいま戻りました。アザレア様。」


「ふふ。あなたが王城に行きたいだなんて言うから何事かと思ったけれど、特に何も問題は無かったのかしら?」


「はい。私の杞憂でございました。私の考えすぎでお側を離れましたこと大変申し訳なく。」


もちろんシュナイデルやティルナリアがそれをアザレアに伝える事はない。そんな事に気を割く必要はないと思っているからだ。そしてアザレアも何となくは知っているが己の為にやってくれている彼らの気持ちを知っている為に強く止められずにいる。


苦笑いをしたアザレアだが、それについては触れずに言葉を続ける。



「ではもうすぐ学園に戻るので準備をしなくてはならないわね。皆、準備は出来ているのかしら?」


「「「はい。」」」


「ならあとは私の事だけね。といっても大事なものは終わっているから細々としたものだけなのだけど。」


そういって貴族令嬢らしく美しく整えられた白い手をそっと口許に添えるアザレアだが、準備と言っても引っ越しの準備ではない。そんなものはとっくにユナが終わらせている。


アザレアは貴族令嬢にして、国有数の商会を率いる女傑だ。その為、ある程度は優秀な部下達に任せているとはいえ、アザレアの判断を仰ぐための書類やアザレアでしか対処できない事案は多少なりとも存在する。

その処理を行いつつ、貧弱な貴族に配慮したゆったりとしたカリキュラムのツァーナル学園に在籍していた時とは比べ物にならぬ程多忙になるだろうファナカード学園に行った後に備えているのだ。



天才・鬼才・奇才…様々な才能を持つ者達が集うファナカード学園で魔導の地位に居るアザレアは本来、とても多忙なのだ。2つの学園を行き来するなど到底できない程に。


だが、王子の婚約者であったアザレアはツァーナル学園に通わなければならなかった。それは王命故に。しかし、貴族社会の中で幼少の頃より他の追随を許さぬその才能は時に孤独と嫉妬を運び、幼く柔らかい心に傷を付けていた。アザレアを優しい腕で包み守る家族の守護無き学園でそれはより顕著になるのは火を見るより明らかだった。


幼いアザレアの心の傷を抉る者は居ても、手当てしてくれる者は居なかったのだから。


そんな中、たまたま知り合ったエルフ(学園長)に誘われ、体験入学としてファナカード学園に通ったアザレアが好んだのがファナカード学園だったのは必然だったのだ。そこにはアザレアの才を疎むでも妬むでも無く、純粋に受け入れ、慕ってくれる者達が居た。それはアザレアに初めて出来た友となった。揺れるアザレアに才ある者を愛するファナカード学園の長はこう提案した。


「君にとってツァーナル学園で学ぶことは最早児戯でしかないだろう?ならば授業はここ(ファナカード学園)で受けなさい。試験のみ受けていればあそこは大丈夫だろうからね。だが二つの学園に通う君の負担は大きいだろう。だから、そうだね。魔導としての仕事は代理を立ててその者にやってもらおう。ちょうど君に心酔している子の中に任せられる子がいるし彼なら適任だろう。」と。


その提案を代理をこなす者からの了承を取れたアザレアは喜んで受ける事にした。


そうしてこれまではこなさなければならない執務を絞って来たが、ツァーナル学園を追放されたアザレアは二重学園生活を止め、ファナカード学園に本格復帰となるからには今まで代理の者に代わって貰っていた仕事をアザレアがしなければならない。最初は引き継ぎなどもあって余計に忙しい事が予想されるので備えておけと件の学園長から連絡があったのだ。


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