第18話
今回は短めです。
話の区切りを付けたくて分けたら短くなっちゃいました。
ごめんなさい。
ワルドバーン過去回3
それからの毎日は白き者にとって幸せな日々だった。黒き者は最初不思議なモノを見るような目で白き者を見ていたが徐々に慣れたのか、毎日やってくる白き者を受け入れてくれた。それが嬉しくて楽しくて幸せで、白き者は自分が綺麗だと思った物を黒き者に贈り、また綺麗だと思った場所には黒き者を誘って連れていった。
行ける場所を増やす為に人化の術を黒き者に教え、ますます行ける場所が増えると今度は一緒に遊ぼうとおねだりした。
「ねぇねぇ、一緒に川で遊ぼうよーっ」
「川で遊んで何が楽しいんだ?」
「水が気持ち良いんだよー!!あっちにとっても水が綺麗な川があるの!!行こうよっ!!」
「水なら出せるぞ。ほら。」
呆れた顔をした黒き者が白き者の上に水を降らせる。
「ふあっ、わわっ!!冷たいっ!!気持ちいっ!!」
それに白き者は瞳を輝かせて黒き者を見上げた。
「そうか。良かったな。」
そんな白き者が眩しいのか黒き者はその美しい目をふっと細めて笑う。それを見て白き者もまた嬉しそうに笑った。
またある時には白き者が取ってきた木の実を二人で食べたこともあった。
「ねぇねぇ、木の実取ってきたの!!一緒に食べましょうっ」
目の前にどさっと置かれた木の実を見て黒き者は驚いた顔をする。
「お前、木の実なんて取れたのか。」
「むっ、その言い方は失礼!!木の実位取れるわよっ」
拗ねたように口を尖らせた白き者の頭に手を置き、ぽんぽんと撫でると適当に木の実を口に投げ込んだ黒き者はその瞬間顔を歪めた。
「えっ!!どうしたの!?」
「これ凄く酸っぱいぞ?本当に食べられる木の実なのか?」
「うーん、わかんない!!とりあえず取ってきたの。」
「お前は~っ!!ちゃんと食べられる物か確認してから取ってこい!!」
「あははっ!!ごめんね!!でもさっきの顔は面白かったわ!!」
怒った黒き者を指差してきゃらきゃらと笑う白き者にはぁーと深い溜め息をついた黒き者は、今だ笑い続ける白き者を見つめて、仕方ないなぁと笑った。
そうして穏やかで幸福な日々を過ごす内に白き者にとって黒き者は何より大切な者へと変わった。黒き者の隣は楽しくて嬉しくて温かい。そしてそれは黒き者にとっても同じだろうとわかっていた。なぜなら黒き者が白き者を見る瞳は白き者が恋い焦がれた愛情に溢れていたから。ふっと細める目も、呆れたような笑い方も、未だぎこちない撫で方も、白き者に対する愛情でいっぱいだった。それが親愛か、友愛か、はたまた別の物か…。愛情を知ったばかりの二人にはまだわからなかった。だがお互いが特別であることだけは確かで。
だからこそ…白き者は黒き者による名付けを望んだ。
「ねぇ、私に名前をつけてくれない?」
「…俺が付けて良いのか?名は生涯のものだといつだかお前が言っていただろう?」
「ふふ。だから貴方につけてほしいんじゃない。」
だからこそ…黒き者は白き者の望みを叶えた。
「なら…レアル。レアルはどうだ?」
「れある…れある。うん、良いわね!!私はレアル!!」
そして、白き者はレアルとなった。名は一生の絆。白き者が望み、黒き者が繋いだ絆となった。
この嬉しさを黒き者にも知って欲しかったレアルは黒き者にも名付けをしようとするが黒き者は断固としてそれを許さなかった。そんなに嫌なのか、そう問おうとしたが、その瞳はレアルを心配する色で染まっていて。何故だかわからないが自分を心配してくれていて、断っていると知り、なら許してくれるまで待とうとレアルは思った。
「凄い良い名前を考えておかなきゃ!!」
いつか、優しくて温かいあの人に世界で一番の名前をつけてあげる為に。
「考える時間はたっぷりあるから、きっと良い名前を思い付くよね。」
しかし、その時間はあまり残されてはいなかった。
穏やかで温かで幸せの砂時計はさらさらさらさらと落ちて行き、反転した砂時計は残酷で悲しい悲劇の時間を刻み始める。