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11.祭りのあと 2

 長老たちの控室に塔長が足を踏み入れると、三人は思い思いの場所に腰掛けていた。


「どうじゃな、彼の様子は」


 エスター師が声をかけると、塔長は頷きながら「大丈夫じゃ」と返して空いた席に腰を下ろした。


「もう精霊たちも落ち着いたようじゃ。ユレイオンに任せてきた」

「そうか。それにしても、ずいぶんな荒療治でしたな」


 スーラ師は苦笑しながら言う。


「まあ、記憶と力が連動しておっては仕方があるまいて。十年も封じていたのじゃ。余程怖い思いもしたじゃろうとは思うておったよ」


 塔長はテーブルの上に揺らめくキャンドルの炎を見つめながら言った。シャイレンドルの思い出した記憶が何なのか、あの力の暴走の中で彼が何を見たのかは誰にも分からない。

 ただ、力の暴走が止まり、ゆっくり目覚めた彼は明らかに力を纏い、精霊たちが彼を取り巻いていた。力の開放がなされたのは間違いなかった。彼を待ち望んでいた精霊たちの歓喜が伝わってきたからだ。


「皆には無理をさせてしもうたな。まさかあれほどの力の持ち主だとは思っておらなんだわ」

「五人がかりでギリギリだとはのう。これからどれだけ伸びるのか楽しみじゃ」


 塔長の言葉にエスター師は朗らかに笑う。帰ったらすぐ力の判定の手続きを取らなければ。

 地下の閉鎖空間で幽閉などということはさせないし、もういらない。そもそも彼をこの祭りに連れて行くことにした時から決めていたことだ。

 ランクが決まれば相応の階層に部屋を用意させよう。


「あれなら銀は硬いじゃろうな」

「だが、全く魔法を覚えておらん、力がある分始末に負えん存在になる可能性もある」


 ラマカ師は唸るように言った。


「そうじゃのう。当面は個人授業をするしかないの」

「風の精霊との相性は良さそうであったな。となると、シュワラジー殿自ら教えるほうが良いかもしれんのう」


 スーラ師に言われて塔長は髭をひねった。


「そうじゃの。じゃが、わしは長いこと隠遁しておったしのう。風の精霊についてはわしが教えられようが、他のことはラマカ師に、座学はスーラ師とエスター師にお願いしたいところじゃが、かまわぬかの?」


 スーラ師とエスター師は塔長を見、微笑んだ。ラマカ師は難しい顔をしながらうなずいた。


「構わぬよ。あの坊主がどう変わるのか、楽しみでもあるしな」

「ラマカ師は手強い弟子のほうが鍛え甲斐があって良いのじゃったな」

「ふん……気の弱い者はすぐ音を上げるからな」

「厳しいことじゃ」


 笑いながら塔長はうなずいた。


「では、そのように頼む。ところでわしらの役目は終わったが、そなたらはどうする?」

「街の結界はもうよいのか?」

「ああ、宿屋の組合から連絡があっての。もともと七日の予定だった祭りが三日延長されたおかげで食料も酒も底をつきそうだと。それで大神官殿と相談して、結界を解くことにしたんじゃ。祭りを楽しみたければ祭りの終わりまで滞在しても構わんが」

「そうじゃな。……祭りの間は忙しくて見て回ったことはなかったからのう。一日ぐらいぶらついてみるとするか。お二方はどうなさる?」

「わしも見て回るとするかの。ラマカ師は?」


 エスター師に問いかけられてラマカは眉根を寄せた。


「わしは遠慮しておく。人の多いところは苦手じゃ」

「そうか。ではまた夜に」


 三人はそう言うと控室から出ていく。塔長はその背を見送ると肩をすくめた。

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