2.狼狽する若者 6
振り向くと、敵意のこもった視線でユレイオンをにらみつけている少年がいた。本棚の一つに寄りかかって腕組みをしている。
「時間厳守でよいことじゃ。ユレイオン、彼が同行者じゃ。名前は知っておるかもしれんが、シャイレンドル・リュフィーユという」
シャイレンドルと呼ばれた細身の少年はまだ十五、六ぐらいだろうか。濃い蜂蜜色の髪は波打つ鬣のように彼の浅黒い顔を縁取っている。剣呑な光を宿す瞳は光を閉じ込めた宝石のようだ。
「誰やあんた。見ん顔やな」
少年はあからさまな敵意をぶつけてきた。ユレイオンは回れ右をしたい気分を抑えて名乗った。
「へぇ、聞いたことあれへん名前やな。監視役ってことか」
「監視役ではない、後見役のようなものじゃ。お前も老人の相手ばかりだとつまらんと言うておったであろう?」
塔長が口を挟んだ。
「まぁ、そりゃそうなんだけどさ」
シャイレンドルはそういうとユレイオンの周りを不躾な視線で観察しながらぐるりと回った。
「ま、ええか。あんた一人ぐらいやったら大して害にもならんやろ。よろしゅうな」
不意に少年はにかっと笑い、手を差し伸べてきた。その反応に戸惑いながらもユレイオンは手を握った。
「よろしく」
そう答えながら、夕べの予感は正しかったことを確信したユレイオンであった。




