2.狼狽する若者 3
しかし、塔長はその台詞を聞くや否や、嬉しそうに笑みを浮かべた。
「そうか! 行ってくれるか! 実はな、わしも太陽神殿の十年祭に参加するのは初めてなんじゃ。そなたが同行してくれるなら安心じゃな。ああ、儀式にももちろん参加してもらうぞ。そなたの得意な『水』ゆえ、それほど苦でもなかろう。そなたが了承してくれて本当によかった。他の水の魔術師たちは皆出払っておってな。わしでは務まらんのでのう」
「は?」
予想もしなかった長の言葉に、ユレイオンは一瞬耳を疑った。
塔長はいたずらっ子のような顔で彼を見上げた。
「精一杯努めてもらうぞ」
「あの」
ユレイオンはようやくそれだけ言葉を押し出した。だが、続く言葉が見つからない。
「そなた、塔を出る決心をしてここへ来たのじゃな」
ズキン、と胸が痛む。
「わしもいやというほど先輩から聞かされたものじゃよ、その台詞。……のう、ユレイオン。そなたはまだ若い。ここにいる時間もそう長くない。悲観するには早すぎやせんか?」
「長様」
「わしはな、噂どおり容赦ない男じゃ。だがの、可能性のある者の未来を摘もうとは思わん。道を外れた者には道を教え、壁を越えられるものには助言をし、目の前の道に気がつかぬ者には道を指し示す。それがわしの役目だと思うておるのでな」
長はまっすぐユレイオンの目を見つめていた。
「では、私は……」
塔からの放逐を言い渡されるわけではないのだ。
ようやく事態を飲み込めたユレイオンに、塔長はうなずいた。
「そなたの言葉、確かに受け取った。前言撤回は受け付けぬぞ。明朝出立ゆえ、準備はぬかりなくな。それと、儀式については祭祀長から説明を受けておくように。他の三人は儀式に慣れておるが、そなたは初めてじゃろう? 気負う必要はないが、与えられた役割はきちんと果たすこと。それがわしからの仮題じゃ。それと、祭りは七日間にわたって行われる。体調管理だけはしっかりとな」
「分かりました」
ゆっくりうなずく。
不安と絶望から解放された喜びと、新たな重圧の予感がユレイオンのしおれかけた心をひっぱたく。




