2.狼狽する若者 2
案内されて入った塔長の部屋は、以前立ち入ったときとは印象が変わっていた。深い赤の絨毯が敷かれ、本棚がかなり増えている。手前にあったソファとテーブルは暖炉の近くに動かされ、以前はなかった透明の球体が部屋の中央に浮かんでいる。それが何を意味するものか、彼にはわからなかった。
奥に進むと、塔長は執務机に座っていた。ふさふさの白い髪と白い髭。直接姿を見るのは初めてだ。
「ユレイオン・フォーレルです。お呼びと伺い、参上いたしました」
「おお、忙しいときにすまんの。ちぃと待ってくれい」
塔長は顔を上げずにそう言い、数枚の書類に目を通して筆を走らせてから、ようやく顔を上げた。
「いえ、遅くなりまして申し訳ありませんでした。緊急の用事と伺っておりますが」
「うむ」
塔長はうなずき、眼鏡を外すと机に置いた。
「ユレイオン。そなた、カリスに行く気はないか?」
塔長の言葉に、息が止まった。心臓が激しく鼓動を打つのが分かった。半ば予想していたこととはいえ、頭から血の気が引いていくのがはっきり分かる。杭を打たれたように胸が痛い。
震えを右手で握りつぶし、乾いた唇を湿らせて、ようやく彼は言葉を搾り出した。
「……長様のよいようにお取り計らいくださいませ。精一杯務めさせていただきます」
深く頭を下げる。
魔術師としてこの塔に入った時分に先輩から聞かされた台詞。よもや自分が言うことになろうとは。屈辱だ。




