4.祭りの始まりは危険が一杯 9
次に目がさめたのは太陽が中点を過ぎ、一日のうち最も暑くなる時間だった。
暑さに耐え切れずに目覚めたようで、寝汗がひどい。
どうやら膝枕をしてもらったまま眠ってしまったらしい。起き上がるとあの女――アイランが小さな寝息を立てて眠っている。ベッドに座った体勢のままベッドに寝そべった状態だ。
彼女を起こさないように静かにベッドを降り、そっと足を持ち上げるとベッドの上に乗せる。小さく口を動かすと、ころんと反対側に寝返りを打った。そのまま起きる様子がないのを確認して、シャイレンドルは立ち上がった。
汗で湿った服を着替えると階下に降りる。
祭りの間と言えども昼間は休みのようで、入り口は錠が降りたままだ。他に出口はないかと探すと、チャリチャリと金属音がする。
「誰かいないか?」
そっと声をかける。慌てて小金を片付けるような金属音がして、黒髪の無愛想な女が細く扉を開けて顔を出した。確かキリと言ったか。
「何の用? 食事? 酒?」
上客と言いながら無愛想なのは変わらない。
「ああ、いや。ちょいと外ぶらついて来たいんやけど」
「……アイランは?」
「よう寝とるからそのままにして来た。夕方には戻るけど」
「そう。昼の間は表の扉は開けられないの。夕刻には開けるけど、それまで待ってもらえる?」
「待てへん。どっか出られるところ、ないか?」
「……これ次第ね」
そう言ってキリは手を出してきた。仕方なく懐から硬貨を引っ張りだす。金貨だ。
キリは手から金貨をひったくった。
「いつでも使える裏道教えたげる。……でも、必ず帰ってきてよね。アイランが悲しむの、もう見たくないんだ」
キリは眉を寄せ、少し悲しげな顔をする。シャイレンドルはうなずいた。
「廊下の突き当り、厠の右側の扉を横に引いてみな。裏通りに出られる。表の扉が開いてるときは表から帰ってきてもいいけど、開いてなかったら同じ所からこっそり入って。絶対人に見られないようにね」
「分かった」




